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参院選の最中、前日弁連会長・宇都宮健児氏に聞く。(後編)

“不自由な”選挙〜一般人を立候補から排除する高額供託金、禁止事項だらけの選挙活動

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“不自由な”選挙〜一般人を立候補から排除する高額供託金、禁止事項だらけの選挙活動の画像1宇都宮健児氏
 脱原発、TPP、消費税、集会・結社・表現の自由を制限する自民改憲草案、貧困の拡大……と日本に立ちはだかる難題は山積しているが、それを少しでも明るい方向に転換させるために普通の人が選挙に立候補しようとしても、公職選挙法という壁に阻まれる。こうした状況を改善すべきだというのが、昨年東京都知事選に出馬した前日本弁護士連合会(日弁連)会長の宇都宮健児氏である。自身の選挙運動の体験を踏まえて、選挙の仕組みの何をどう改革すればいいのか語ってもらった。

 前編はこちら

●有権者の3%未満にしか配布できないビラ

 これまで私は弁護士として、サラ金や闇金などの多重債務者を救済する活動に従事してきました。また、これらの問題の背景にある貧困をなくす運動も続けています。その中で大切なのは立法活動ですが、サラ金規制法などを制定することによって多くの人々が救われました。ですから、国会議員に対して働きかけるロビー活動も不可欠です。

 しかしそれ以上に効果的なのは、さまざまな問題で活動している市民が議員に直接立候補することではないでしょうか。そのような思いもあり、私は都知事選に立候補したのです。

 ところが実際に選挙運動をしてみて、自由な活動ができないことに驚きました。公職選挙法は禁止事項ばかりだからです。まず告示後は、私の氏名・顔写真入りで、詳しい政策を書いたチラシは30万枚しか印刷・配布できない。

 東京都の有権者は1060万人もいるのに、その3%にも満たない人々にしか政策を詳しく書いたチラシを配布できないのです。これは、国政選挙でも同じで、配布枚数が制限されています。

 しかも、選挙管理委員会から交付された証紙を、手作業ですべてのチラシに貼らなければなりません。さらには、選挙事務所、演説会場、選挙カーの周辺、新聞の折り込みでしか配布できないのです。

 一方、私の名前・顔写真の入っていないチラシなら2種類に限り枚数制限がなく、自由に配布できるので配布しました。すると「宇都宮さんの名前が印刷されてない。ミスプリントじゃないか」という支持者からのクレームが事務所に殺到してしまったのです。その自由に配れるチラシには何が書いてあるかというと、「都知事には前日弁連会長を」。これだと私を知っている人ならともかく、一般の有権者には通じないでしょう。

●自由な選挙活動が禁止されている

 自由にビラを配れないだけではなく、有権者に直接に訴える戸別訪問も禁止なので、立候補者は政策を訴える機会を厳しく制限されています。それでも、メディアが選挙の争点や各候補者の政策を伝えればまだしも、その責任を全うしているとは思えません。たとえば昨年暮れの都知事選のときは、衆院選挙と重なったこともあって、都知事選の報道は極端に少なかった。

 候補者によるテレビ討論会も、過去の都知事選では十数回もあったのに、今回は2回だけでした。このように政策を訴えるチラシも制限され、戸別訪問が禁止され、テレビ討論会も少ないとなると、新人候補や新しい政治勢力が有権者に十分に政策を訴えることができず、現職や有名人、既成政党が圧倒的に有利になります。その結果、宣伝カーで候補者の名前を連呼するだけになってしまいます。

●選挙区300万円、比例区1人当たり600万円の供託金

 また、立候補するときに出さなければならない供託金の問題があります。選挙制度に関しては、1人しか当選できない小選挙区制の弊害や一票の格差についてはだいぶ報道され、関心を持つ人が増えてきました。

 先の衆院選挙に関して、2つの高裁で違憲無効判決が出されたこともあり、一票の格差問題について、ようやく議論されるようなったと思います。しかし選挙に立候補しようとしても、法外な供託金を支払わなければならず、普通の市民の立候補を最初から排除していることには、あまり触れられません。

 識者といわれる人たちが、「お任せ民主主義はいけない」とメディアで言います。たしかにその通りですが、それならば、市民自らが立候補するのを阻んでいる高額な供託金の撤廃ないし減額を議論すべきではないでしょうか。

 国政選挙の場合だと、選挙区で300万円、比例区では600万円もの供託金が必要です。国会に5人以上議員のいる既成政党には、比例区の候補者の人数に制約がありませんが、例えば緑の党のような新しい政党が比例区に候補を立てようとすると、選挙区の候補と合わせて10人以上立候補させなければなりません。

BusinessJournal編集部

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