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鈴木貴博「経済を読む“目玉”」第11回

日本企業が世界で復活する“たった一つ”の方法〜欧州企業が米中の競合に負けないワケ

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 日本は以前、「一億総中流」と呼ばれた大規模単一市場だった。だからアメリカ企業や中国企業に攻略されてしまったともいえるのだが、ひるがえって考えてみれば、この20年で格差も広がり、顧客ニーズも極めて多様化してしまっている。ということは、ヨーロッパのようなニッチで強いという戦いを仕掛けるには都合のよい市場に、いつの間にか日本社会も変質しているのかもしれない。

 だとすれば、アメリカや中国が強い土俵で戦い続けるよりも、一度、自社が本当に強い土俵とはどこだったのかという原点に立ち戻って、自社に都合のよい戦法での戦いを仕掛けるというのは、意味のある考察になるのではないだろうか。

●自分の強い土俵に相手を引きずり込む

 さてここで、冒頭の歴史的エピソードの話に戻ろう。ローマ軍はカルタゴ海軍をどう破ったのか?

 ローマ軍は、海の戦いを陸地での戦いに変えたのだ。コルウス(カラス)と呼ばれるイノベーションが、それを可能にした。コルウスとは船のへさきにとりつけた架橋装置である。ローマ軍は海戦で、突入してくるカルタゴ軍の船に対して、すれ違うように操船する戦法を編み出した。船同士がナナメにぶつかった瞬間に、ローマの船からカルタゴの船へとハシゴのようなコルウスが降ろされる。コルウスの先端には鋭い鉤がついていて、これがカルタゴ船の甲板にがっしりと食い込んで、ふたつの船が陸続きになる。

 そこで世界最強のローマ陸軍が、一気にカルタゴ船へと乗り移って、剣による白兵戦に持ち込むのである。海戦だからこそカルタゴ軍に勝てなかったローマは、こうして海の上での陸戦に戦いの土俵を持ち込むことで、カルタゴ海軍を打ち破ることになったのだ。

 この話を披露した際に、ある大企業の経営者の方が語ってくれた言葉が印象的だった。

「そうだよなあ。大企業にとって、新しい戦力を育てるのは時間が間に合わない時代だからな。数年間で競争前提が変わる現代においては、自分が本当に強い土俵に相手をひきずり込むのが唯一の戦い方なんだと思うよ」

 けだし名言である。
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)

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●鈴木貴博(すずき・たかひろ)
事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に、企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年にわたり活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、03年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。主な著書に『NARUTOはなぜ中忍になれないのか』『「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱』(ともに朝日新聞出版)、『戦略思考トレーニング』(日本経済新聞出版社)、『カーライル 世界最大級プライベート・エクイティ投資会社の日本戦略』(ダイヤモンド社)などがある。

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