たとえ、原作者のマンガ家と同人誌の作者が、「友達同士の売買ならいいけど、古本屋へ転売はダメ」とか「タダの譲渡しかダメ」というライセンスが付しても、その内容については無効であると解釈されます。たとえライセンスであっても、穴の開けることのできないケース(強行規定)もあるのです。

 それに、自由に売買もできないようなマンガや同人誌を、誰が欲しいと思うでしょうか。「私が買ったものを私がどうしようが、私の勝手だろうが」と考えるのは自然です。

 仮に、そのようなライセンスが有効と判断されれば、BOOKOFF(ブックオフ)などに代表される古本販売業界は全滅でしょう。

 さらに、そんなマンガや同人誌は、結局売れなくなってしまい、結局、誰も幸せにならないと考えるからです(消尽論)【注5】。

 つまり、赤松先生が目指す「二次創作同人誌の作者による、コミケ当日だけの販売を許す」ことを、既存の「許諾ライセンス」で実現することは難しいのです。

 そこで、赤松先生は、「自分の作品のキャラクターの無制限の使用を許諾しない。だが、コミケでの販売に関しては『見て見ないふり』をする」という新しい概念――「黙認」を案出されたのです。

 「黙認」すなわち、「見て見ないふり」というのは、こういうことです。

 ・私(赤松先生)は、コミケにおいて、私の著作物に関する著作権違反が存在していることを「知っている」。

 ・しかし、コミケ開催中の同人誌の販売については、「私(赤松先生)は、騒ぎ立てるつもりはない」。

 つまりですね、CVライセンスというのは、「ライセンス」といいながら、実は、何の許諾もしていないのです。ただ、コミケ開催期間だけは、著作権侵害を「見なかったことにする」という、マンガ家からの宣言なのです。

 CVライセンスマークの使い方は、以下のようになります。

著作権侵害の同人誌でも、コミケ会場なら許される?マンガ家の太鼓判「黙認ライセンス」の画像4

 マンガ家が、自分の意思で、自分の作品(マンガ)に、この「CVライセンスマーク」を付与することになります。そして、このマークが付与されたマンガのキャラクターについては、ある一定条件を満たせば、二次創作同人誌に利用することができるようになるのです。

 さて、今回はここまでとさせていただきたいと思います。

 次回最終回では、この「CVライセンスマーク」の効力発生要件と、先生がこのマークを提唱された理由、および、構想するグローバルコンテンツビジネス、そして、壮大な世界平和戦略についてお話しいたします。

※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナー(今回は、こちら)へお寄せください。

【注1】 赤松健  著書に『ラブひな』『魔法先生ネギま!』等多数
【注2】 文化庁主催 第8回コンテンツ流通促進シンポジウム「著作物の公開利用ルールの未来」
【注3】 “違法な”同人誌はなぜ放置されている? 600億円市場に突然警察介入の可能性も…
【注4】 著作権法やTPPと闘うための最終兵器「ライセンス」は、なぜこんなに”面倒くさい”?
【注5】 例えば、平成14年04月25日最高裁判所第一小法廷判決(平成13(受)952)/平成13年03月29日大阪高等裁判所(平成11(ネ)3484)の判決文など

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