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中国、世界の“模倣品”工場化の実態〜悪質・巧妙化で広がる被害…危険なエアバックも

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中国、世界の“模倣品”工場化の実態〜悪質・巧妙化で広がる被害…危険なエアバックもの画像1「Thinkstock」より
 商品・コンテンツにおける知的財産権(特許権・商標権・著作権・意匠権・実用新案権など)は、さまざまな条約・法律により、その権利が守られている。

 しかし、それでもこれらの権利を侵して模倣品・海賊版がつくられ、堂々と売られている。これらの多くは東南アジアを中心とした国々でつくられ、世界中で売られている。

 中でも悪質なのは、日本を抜いて世界2位の経済大国に成長した中国だ。中国当局も模倣品・海賊版に対する規制を強化し、摘発を行っているものの、その動きは遅く、法律面での不備も多い。そして、中国でつくられる模倣品・海賊版の手口は、ますます巧妙になり、悪質化している。

 経済産業省の「模倣品・海賊版対策の総合窓口に関する年次報告(2013年度版)」を参考に、中国での模倣品・海賊版の悪辣な実態を見てみたい。

●突出する中国の模倣品・海賊版

 模倣品・海賊版による日本企業の被害を国・地域別に見ると、中国による被害額が突出して大きい。政府の総合窓口に寄せられた相談案件も、中国に関する相談が最も多く、全体の6割にのぼる。

 こうした中国による日本企業の被害は、模倣品・海賊版の、(1)製造国、(2)消費国、(3)輸出国の3つの側面で捉えることができる。

 10年度の中国による日本企業の模倣被害を知的財産権別にみると、商標権侵害が2万709件(62.4%)と最も多く、次いで、著作権侵害が8758件(26.4%)、意匠専利権(意匠権)侵害が3450件(10.4%)、製品品質法違反が105件(0.3%)となっている。

 中国は模倣品に関しても“世界の一大製造拠点”となっており、日本企業のあらゆる製品・商品の模倣品が生産されている。中国における模倣品の製造地域は、広東省、浙江省、江蘇省、福建省などの沿岸部を中心に広がっているが、さらには、内陸部へと拡大しているという指摘もある。

 一方、模倣品の販売提供地域は、北京や上海などの大都市や広東省、浙江省といった沿岸部の地域だけでなく、すでに遼寧省、山東省など中国東北部や、四川省などの内陸部にも拡大している。

 また中国による知的財産権侵害は、模倣品の製造に加え、海賊版の流通も深刻な問題となっている。中国の海賊版市場では、日本のコンテンツも、アニメ・映画・テレビ放送番組など、映像にかかわる海賊版DVDをはじめ、音楽やゲームソフト等でも幅広く被害が発生している。

 OECD(経済開発協力機構)は、日本国内に流通する被害とインターネット上の被害を除く模倣品・海賊版の貿易被害額が、年間約2500億ドル(約24兆円)に上ると試算している。その大部分が“中国発の模倣品・海賊版被害”であると指摘されおり、中国で製造された模倣品は中国国内だけでなく、近隣の日本・台湾・韓国をはじめ、東南アジア諸国、UAEやサウジアラビアなどの中東地域や中南米地域、さらにはアフリカなどに輸出されている。

 12年の日本税関による知的財産侵害物品の輸入差止件数は2万6607件だったが、実にその94.0%が中国(香港を除く)から輸入されたものだった。

 中国における模倣品の輸出拠点は、香港・広東や上海といった国際港湾都市が中心。近年は、海路のほか、水際での取り締まりを避けて、陸路を利用して模倣品がロシアや中央アジア、東南アジアに流出するルートが存在し、こうした地域では、中国製の模倣品による被害が増加傾向にあると指摘されている。

●巧妙化・悪質化する手口

 最近では、模倣品の手口が巧妙化している。他社と同一の商標を付けているといった従来の単純なものとは異なり、複雑な模倣品問題が生じている。

 例えば液晶テレビでは、外形的には何も商標を付けておらず、一見、権利侵害がないような商品が、電源を入れると画面上に有名商標が表示されるものが販売されている。さらに悪質なものとして、どの商標を表示するかを選択できるものまである。

 また、自動車用の偽造エアバッグでは、安全基準を満たしておらず、衝突時に膨張する力が弱かったり、ひどい物では膨張する際に部品が飛び散り、かえって人を傷つけたりするものもあり、身の安全を守るためのエアバッグが、深刻な危険をもたらすことすらある。

 これらの模倣品は、商標が付いていれば商標法で対応が可能だが、商標が付いていない、あるいは販売の直前まで商標を付けないものもあり、この場合には商標権侵害として取り締まりを行うことは難しい。

 さらに、現在の中国の商標法では、日本と異なり、侵害を構成する使用態様として「輸出」が明記されていない。従って、問題となる商品に中国国内で登録されている商標と同一、または類似の表示が付されていても、「すべて輸出する予定であるから、中国で誤認混同を生じず、中国の商標権を侵害していない」という抗弁がなされる場合がある。

 中国から模倣品が世界各国に輸出されているという実態がある中で、この抗弁が認められれば、権利者は中国という問題の根元の場所ではなく、輸出先である世界各国で対応することを強いられる可能性がある。

 近年、中国当局の取り締まりが厳しくなるにつれ、それを回避するため、模倣品製造業者の手口は一層巧妙化、悪質化している。

 11年に、日本企業が中国で直面した知的財産権侵害の手口で、最も多かったのは「見た目そっくりにつくり、商標を貼付せずに販売する手口」(34.0%)だった。こうした侵害手口(商標はずし)は、商標が貼付されていないため、商標権侵害とはならないが、日本であれば、デザイン模倣として意匠権侵害、または不正競争防止法の形態模倣品の提供行為等で救済を求めることもできる。しかし、現行の中国の法体系では、摘発が難しい。

 次に多かったのが、「デッドコピーの模倣品に正規品と同程度の価格を設定し販売」(20.4%)となっている。中国の法規上、知名商品特有のデザインが模倣された場合(かつ他人の知名商品との混同が生じるとき)であれば、不正競争行為として行政処分の対象となることもあるが、知名商品とまでいえない場合は、現行法では法的対応が難しく、模倣品製造業者は、それを熟知した上で、デッドコピーを行っている。

BusinessJournal編集部

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