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マック社長交代の舞台裏と新体制への懸念〜原田マジックの誤算、売上減に歯止めかかるか?

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マック社長交代の舞台裏と新体制への懸念〜原田マジックの誤算、売上減に歯止めかかるか?の画像1東京都内のマクドナルドの店舗(「Wikipedia」より/Paul Vlaar)
 日本マクドナルドホールディングス(HD)傘下の事業会社、日本マクドナルドの社長兼CEO(最高経営責任者)にマクドナルド・カナダの女性幹部、サラ・カサノバ氏(48)が就任した。原田泳幸会長兼社長(64)は日本マクドナルドHDの会長兼社長を続投。事業会社の会長にもとどまるが、営業のリーダーシップはカサノバ氏に移る。日本マクドナルドHDとしては、事業会社の外国人社長は初めてだ。

 8月27日、東京都内で記者会見した原田氏は、社長交代の理由を「売り上げ回復のためにも、一刻も早く新たな経営のタレント(才能のある人)を追加したかった」と説明した。カサノバ新社長は「日本の市場をよく知り、グローバルな経験を持っている」と述べ、適任だと強調した。原田氏は「私が(カサノバ氏を)指名した」と記者会見で述べたが、業績悪化に危機感を持つ米本社の意向が強く働いた結果だとみられている。

 サラ・カサノバ氏はカナダ出身。カナダのマックマスター大学大学院の経営修士課程を終了。91年にマクドナルド・カナダに入社。6カ国のマクドナルドでマーケティングを担当し実績を重ねてきた。2004年から5年間、日本マクドナルドの執行役員マーケティング本部長と事業推進本部長を務めた。「えびフィレオ」「メガマック」などヒット商品を投入し、営業成績を押し上げ、日本への出向は5年に及んだ。社長に就任する直前はマレーシア・シンガポール地域の責任者を務めていた。カナダ法人に22年間在籍するなど“マック一筋”のキャリアの持ち主だ。

 これまで、マクドナルドの米本社・海外法人出身者が日本法人の会長やCEOに就いても、国内の営業を担う事業会社の社長になることはなかった。マクドナルドは米本社主導で日本の立て直しを急ぐことになる。

●原田氏退任の背景に業績悪化

 社長交代の理由は業績悪化だ。日本マクドナルドHDは8月9日、13年12月期連結決算の業績予想を下方修正した。上半期の販売不振に加え、円安で原材料の調達コスト増が負担になったためだ。期初計画(2月発表)に対して、売上高は45億円減の2650億円、営業利益は52億円減の200億円、純利益は24億円減の117億円に引き下げた。当初、増収増益を予想していたが、前期比で売上高は10%減、営業利益は19%減、純利益は9%減ということになる。

 12年12月期も減収減益だった。2期連続の減収減益は原田氏が04年にマクドナルドのトップに就任して以来、初めてのことだ。これが原田氏退任の決め手となった。

 大幅減益の理由は既存店の不振に尽きる。13年1~6月期の既存店売上高は前年同期比で6.3%減。原田氏が“決め球”とする商品・価格戦略が不発に終わり、カサノバ氏は海外の商品・価格戦略などのマーケティング手法を積極導入して、立て直しを図る。

 原田氏は複数の外資系企業でマーケティングの腕を磨いてきた経歴を持ち、米アップルでは米本社副社長として全世界市場のマーケティングを担当した。そのマーケティングの手腕を買われて米マクドナルドにヘッドハンティングされ、赤字経営に陥った日本マクドナルドの再建に送り込まれた。

 04年5月に持ち株会社と事業会社の社長に就任した原田氏は100円マックの低価格メニューで集客して、リピーターとなった顧客にクォーターパウンダーなど高価格商品を売り込むことにより、8年連続で既存店売り上げを伸ばしてきた。06年12月期から6期連続で営業増益を続け、この手法は“原田マジック”と呼ばれた。

●商品戦略の失敗

 しかし、東日本大震災後の消費者の消費動向を見誤った。12年は既存店売上高がマイナスに転じたため、同年11月に従来の価格戦略を見直した。低価格の季節限定メニューをやめ、採算のとれやすいビッグマックなどの販促に舵を切り、ビッグマックの値引きもやめた。だが、この見直しは失敗に終わり、既存店売上高は今年1月に17%減、2月に12%減と大きく落ち込んだ。あの強気でならす原田氏が「あまりに大きく、(季節限定メニューの削減に)舵を切りすぎたと反省している」と失敗を認めた。

 そして、「季節限定メニューへの顧客の期待値が予想以上に高かった」として、4月から季節限定メニューを再び投入するなど、再び方針を変更した。5月には5年ぶりとなる大幅な価格改定を実施。定番メニューのハンバーガーを100円から120円に値上げする一方、ドリンクなどの100円メニューを拡充した。これで既存店売上は持ち直すはずだったが、7月の既存店売上高は前年同月比2.7%減と3カ月ぶりに前年割れした。

 7月の客数は9.5%減と大幅に落ち込み、3カ月連続マイナスとなり、原田氏は「100円マックが消えたと、値上げだけが大きく取り上げられ、お得感が低下した」と説明した。

 今回発表された新体制により、日本マクドナルドは9年間続いた原田体制と決別する。経験豊富なカサノバ氏はグローバル企業の強みを生かす経営に転換する。カサノバ氏は「ドライブスルーは米国で生まれ、デリバリー(宅配)はエジプトで考案された。世界のマクドナルドの連係を密にし、日本で事業展開していきたい」と語る。カサノバ氏は“海外との連係”という言葉を繰り返し使ったが、海外モデルが世界有数の外食市場激戦地・日本市場で通用するとは限らないことはすでに証明済みだ。実際に12年、日本マクドナルドは多額の販売促進費を投入して「世界のマック」シリーズを売り込んだが、売れなかった。

 今回の新体制発表に対し、株式市場の反応は鈍く、歓迎ムードは見られない。新体制の下、日本マクドナルドは再び業績の“上昇トレンド”を取り戻すことができるのか? 今後の動向に注目が集まっている。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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