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アベノミクスはバブルor経済回復? 企業の財務分析から考える〜資産、利益、負債…

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アベノミクスはバブルor経済回復? 企業の財務分析から考える〜資産、利益、負債…の画像1アベノミクスについて特集を組む雑誌
 今回は企業の決算からアベノミクスを分析していきたいと思います。

 アベノミクスといえば株高や円安ばかりに目が行きますが、そもそもは「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」を3本の矢として提唱している経済政策全般を指します。

 その下にデフレの解消が目的である「インフレターゲット」や市場の資金流動性を確保するための「買いオペレーション(国債買い入れ)」、異常に高騰している円通貨の「円高是正」などなど、細々とした多数の政策があります。

 要はこれらの政策を通して日本の財政および経済を健全な状態に回復させよう、というのがアベノミクスの目的です。

●「アベバブル」なのか「経済回復」なのか?

 金融経済でいう「バブル」というのは泡のごとく実体を伴わないまま膨れ上がり、ある一定ラインを超えるとパチンとはじける、というのを表しています。

 さて2013年8月現在。株価は順調に上がっています。7月の参議院議員通常選挙による衆院のねじれ解消で逆に株価が落ちましたが、徐々に戻しつつあります。そこで争点になっているのが、「株価が上がっているのは本当に日本が回復しているからなのか? それとも、アベノミクスが作り出した虚構の回復(バブル)なのか?」という点です。

 単純な話として、株価というのは短期的には需要と供給で決まります。経済が回復していなくても「回復するかも?」と考え、株を購入する投資家が増えるだけで株価というのは上がります。

 さらにヘッジファンドなど、巨額の資金を動かす機関投資家も市場に参入しているため、自然と売買が多くなります。そのため8月は株価が激しく乱高下する局面が見られました。確かにこれでは、バブルといわれても仕方がありません。

 その一方で、「円高是正によって、見せかけの利益だけでなく実際に経済回復も着実に進んでいる」という見方もあります。最近では少なくなりましたが、以前は「円安によって競争力が付くことにより、海外に流出した製造業が日本に戻ってくる」という主張も見られました。人件費や物価や税金が高い日本に、海外流出した企業が帰ってくるなんてことは99%ありえないので論外としても、競争力が付くことにより企業業績が回復するのでは? という見方はできるかと思われます。

●企業は回復しているのか?

 以上から、現在の株価回復が「アベバブル」によるものなのか、「経済回復」によるものなのか、どちらの意見にもある程度の整合性があり、意見が真正面からぶつかっていることがわかります。ここで、どっちが正しい/間違ってるという水掛け論をしても意味がないので、ここはフェアに日経平均組入銘柄225社の財務分析を行い、どちらの話が正しいのかを客観的に見てみましょう(ちなみに、ここから先は筆者の主観が入りますので、
あくまで参考意見として割り切ってください)。

 まずは資産の増加。これはおおむね好調ですが、株価が上がっている現状では、証券を大量に保有する企業なら当然資産総額は増加します。つまり資産が増加しているからといって好調な経営を行っているという証しにはなりません。

 次に利益ですが、円高がある程度是正され、1ドル80円台から100円台になったことにより利益が増加している企業が多数見受けられます。大きく話題になった例でいいますと、トヨタが為替の影響で1兆円の利益を手にしたとかいう話がありましたよね(もちろん利益が減っている企業もあります)。

 そして有利子負債。これが少し難しく、「利子がある負債」つまりは銀行等からの借り入れ資金ですが、これが大きく増えている企業というのがあまり見当たりません。つまり、「設備投資を大きく行ってまでビジネスを拡大していこう」と考えている企業がまだまだ少ないということを示しています。不況でビジネスにならないから設備投資を行わないのか、設備投資を行わないから不況になったのか、という状況に陥っているわけですが、このあたりの是正にはまだまだ時間がかかりそうです。

 最後にフリーキャッシュフロー、運転資金等用に自由に使えるお金は増えています。見せかけであろうとなんであろうと売上と利益は増えていますし、有価証券の額面価格も株式においては換金すれば自由に使えるので、いわゆる「懐が少し暖かい状態」ではあります。

 とはいえ、これをどのように使うのか? というのは経済政策には関係なく個々の企業判断によりますので、経営者のリスクマネジメントがかなり固い状態において、今後利益に直結していくことは考えにくいです。

●結論

 以上より、「経済回復の足場固めはできつつあるが、回復しているとは言いがたい」というのが筆者の結論です。つまり、「今はバブルであり、今後の動向によってははじける可能性もある」というところではないでしょうか。ただし、バブルとはいえ、ここから先で企業が地に足着いた経営を行えば、日本経済が多少良い方向に行く可能性もあります。よって、「アベバブルだ」と騒ぎ立てる必要は“まだ”ないと感じます。
(文=土居亮規/Business Library Butterfly)

BusinessJournal編集部

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