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階級社会化するネット〜膨大な弱者が少数の勝者に搾取されるネットの現実

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 実は先日、今回の本の出版記念ということで、徳力基彦さん(アジャイルメディア・ネットワーク代表取締役)とトークイベントをやらせていただいたんです。ここ10年くらいのネットのトレンド、注目されたトピック、おバカなネットニュースなどを振り返るような内容だったのですが、その席で徳力さんが「中川さんはズルイ」とおっしゃったんですよね。

 「結局、中川さんが『ウェブはバカと~』で語っていたことは正しかった。僕も含め、ネットの理想を信じていた、いわゆるウェブ2.0陣営はぶっちゃけ敗北したんです。中川さんはあの本で早々に、ネットなんて所詮はこんなモン、と言い放ってしまった。おかげで中川さんはそれ以降、歯に衣着せずに、なんでも言えるポジションに立っている。だから、中川さんはズルイ。ちょっと羨ましい」と、徳力さんは苦笑していました。

 とはいえ09年当時、一部のウェブ2.0信奉者たちは「お前に何がわかる」みたいな勢いでオレをいろいろdisって(編註:けなして)きました。「中川は元テレビブロス編集者で紙媒体の人間。ネットのことをぜんぜん知らない」「ウェブについては素人同然の“ポッと出”風情が、下品で無責任なことをホザくな」とかね。「なにを言ってやがる! オレは06年からネットニュースの編集長を務めてきて、ねたみやそねみ、そしり、中傷といったドロドロとした感情が渦巻くネットのド現場で仕事をしてきたんだぞ」と言ってやりたい。日々、読者からの妙なクレームに追われながら、ネットユーザーの下世話さや身もふたもない行動様式などを肌感覚として記憶していきました。そんな実務を通じて得た経験や知見を、事実として淡々と語ったのが『ウェブはバカと~』だったんです。お前らみたいなコタツマーケター(笑)やITジャーナリスト(笑)よりも、よっぽどネットユーザーと向き合ってきたんだよ、この野郎。

── そうしたエヴァンジェリストたちと、きっちり議論を戦わせるような機会はなかったのですか?

中川 はい、まったくありません。オレは「いつでも相手になる」「文句があるなら、しかるべき場所で公開討論会でも、どこかの媒体で対談でもしようぜ」と彼らをさんざん煽りました。でも結局、それに応えてくれるエヴァンジェリストは、今に至るまで、ひとりもいません。梅田望夫氏、湯川鶴章氏をはじめ、「革命」とか「変える」みたいな単語をタイトルにちりばめたネット関連本を出版したエヴァンジェリストたちは、オレから明確に距離を置きましたからね。中にはオレのことを「あいつはキライだ」と言うヤツもいるらしい。お前と会ったこともないのに、よくそんなこと言うわ、アホめ。まあ、オレと関わりたくないのもわかりますよ。ネットの現実、という切り口で議論したら、オレが勝ちますから。彼らだってバカじゃないので、論破されて醜態を晒すのは嫌でしょう。

 彼らがどんな理想論を語ろうが、それを一瞬で吹き飛ばしてしまうような、圧倒的なまでのバカ事例、アホなケーススタディーを、オレは膨大にストックしていますからね。それも、ご丁寧に画像や画面キャプチャ付きで。そういう、しょうもないエビデンスに、理想論が勝てるわけもない。毎年800件からのネットバカ炎上事件をストックしているオレからすれば、エヴァンジェリストを黙らせる事例なんていくらでも用意できる。そりゃ、細かく探せば「ネットって素晴らしい」「ネットで人生が変わった」「ネットで成功できた」なんてケースも、ごく一部には存在するでしょう。でも、そうしたお花畑事例が秒速で霞むような、膨大な数のバカなネット事件が存在しているわけで。

── 中川さんが、そこまでネット界隈のエヴァンジェリストを目のカタキにする理由は?

中川 オレはとにかく、嘘つきが嫌いなんです。ツイッターで革命が起きましたか? ソーシャルメディアで世界が変わりましたか? ネットで人生がバラ色になりましたか? バカが炎上する事例は掃いて捨てるほど発生するけど、ユートピア的な、ネット万能論的な事例はどこにあるんですかね。

 例えば、彼らは中東・アフリカで起こったデモや革命を「アラブの春」と称し、ネットの力をもてはやしました。いわく「フェイスブックのつながりで市民が声を上げ、行動し、政権を打倒した」と。ですが、あれで何人死んだんですか? いま、シリアやエジプトで何が起こってるんですか? 日本という安全地帯からネットの力をたたえ、現地で血を流した人のことや、その後に発生した「負」の要素については目をつぶっている。いい加減にしろ、このネット原理主義者め。お前らの頭の中こそ「ネットの春」で浮かれすぎだろ……。

 ネットなんて、所詮は道具でしかない。結局、使うのは人であって、その人の能力や個性、境遇に左右されるもの。そんなの、当たり前の話じゃないですか。手段ありきでネットを礼賛する愚かさには、本当に辟易しているんです。そういう言説に触れると、ネットのあられもない現実をどれだけ知っているんだよと、いつもウンザリします。

 率直にいうと、オレ個人の感情としては、ネットに絶望しているところがあるかも。どうしてこんなにバカばっかりなんだろうと、毎日感じていますから。ネットはもはや、バカが自由に発言できるツールに成り下がってしまった。

BusinessJournal編集部

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