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階級社会化するネット〜膨大な弱者が少数の勝者に搾取されるネットの現実

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── ネットでパーソナルブランディングに邁進しても、その努力は報われないと。

中川 その可能性が極めて高い、と言わざるを得ないでしょう。ネットで注目され、チヤホヤされている人に、ある種の憧れを抱いてしまうのもわかります。でも、彼らと自分は違う人間です。彼らと同じように振る舞ったからといって、彼らになれるわけではない。それって、一般的な常識をわきまえた大人として日常生活を営んでいれば、普通に気づきますよね。

 ところがネットが絡むと、そういう当たり前の節度や常識みたいなものが見えなくなってしまう人も少なくない。そして、そういう人をカモにするような商売で小賢しく儲けようとする連中が、ネットにはウジャウジャいる。

 ネットは現実社会と同じなんです。そこには収入の格差、生まれの格差、知性の格差などなど、さまざまな格差が存在しています。むしろネットのほうが現実よりもえげつないかもしれません。だからこそ現実と同じように、いい意味で身の丈を意識して、期待値を下げてネットと付き合っていけばいい。ネットはあくまでもツールです。

 ネットが便利なことは、間違いありません。でも、安直に膨大な稼ぎを生み出してくれる打ち出の小づちでもないし、平凡な素人がいきなり有名になれる魔法の装置でもない。むしろ、99.9%はクリックするだけの奴隷として、搾取されてしまう。

 結局のところ、仕事にしろ何にしろ、すべては人間関係ですからね。リアルの人間関係をいかに大事にできるか、信頼を裏切らずに人付き合いしていけるかがカギ。誠実に、愚直に、信頼と実績を積み重ねていくしかないんですよ。

── パーソナルブランディングに踊らされている場合ではないですね。

中川 そうですね。もっと実生活に目を向けろと言いたいです。さらに付け加えるなら、パーソナルブランディングなんて滅んでしまえ、とすら思います。

 いやまあ、ネットでのパーソナルブランディングを全否定するわけではないけど、日々の暮らしで愚直に実績を積み重ねて信頼を得ることこそ、究極のパーソナルブランディングだと思うんですよ。それをないがしろにして、何も持たない自分を盛ったりするような、手練手管としてのパーソナルブランディングに励むなんて、まったくの本末転倒です。

 先にも申し上げたように、ネットユートピア論のお花畑で夢ばかり見ているよりは、まだ現実社会のほうがよほど自由で平等かもしれません。だからこそ、軸足は常に現実社会に置くべきだし、そこで努力をするほうが、はるかに報われる可能性が高い。

── そうした言説に対して、意識高い系の若者やネットで一発逆転を狙いたい人あたりは「ロートルうるさい」「結局はオッサンの精神論かよ」などと反発するかもしれません。

中川 「それじゃ、お前はいったい何を持っている? 何かオレに勝てるものがあるのか? あるならそれを見せてみろ」と、逆に問い詰めてやりますよ。「それで納得できれば、オレはお前を評価してやる。でも、納得させられないなら、黙って実生活にコミットして、愚直に目の前の仕事をしろ、経験を積め」と言うでしょうね。

 世の中、キレイごとだけで回っているわけじゃありません。理不尽に思えても従うしかないような社会の論理、組織の論理は必要悪として存在しています。それをわきまえたほうがいい。そして、どんなにネットで自分を盛って“イケてる私”をアピールしても、実力が伴わなければ、上司や有力者など、上の人間が認めてくれるわけがない。

 パーソナルブランディングのつもりで屁理屈をこねくり回してアピールするより、上の人に気に入られて、かわいがってもらえるようになるほうが、社会的に認められるには早道だと考えます。

 とにもかくにも「ネットでアナタの人生は変わらない」ということだけは、ここであらためて主張しておきたいです。まず意識すべきは、現実に軸足を置いて、きっちりと足元を見ること。そして、家族や友人、同僚といった周囲の人々との人間関係とか、目の前の仕事などに誠実に対応しながら、粛々と日常を積み重ねていくことが何より大切ではないでしょうか。
(構成=漆原直行)

●中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
編集者・PRプランナー。一橋大学商学部卒業。博報堂CC局を経て01年に退社し、雑誌のライターになり、その後「テレビブロス」編集者になる。06年からインターネット上のニュースサイトの編集者になり、現在は編集・執筆業務のほか、ネットでの情報発信に関するプランニング業務も行っている。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)など。

BusinessJournal編集部

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