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社外取締役は機能するのか?多数企業を掛け持ち、一部人材に一極集中、人選に疑問も

社外取締役は機能するのか?多数企業を掛け持ち、一部人材に一極集中、人選に疑問もの画像1「Thinkstock」より
 社外取締役の仕事は経営者の経営活動を監視することだが、どんな人が社外取締役に選任されているのか?

 例えばトヨタ自動車の社外取締役には、宇野郁夫・日本生命保険相談役(78)、加藤治彦・元国税庁長官(61)といった重鎮が名を連ねる。住友商事では、原田明夫・元検事総長(73)、松永和夫・元経済産業省事務次官(61)、大林組では大竹伸一・NTT西日本相談役(65)、京セラでは小野寺正・KDDI会長(65)という人たちが社外取締役に選任されている。

 京セラはKDDIの第2位の大株主だ。小野寺氏は京セラの稲盛和夫オーナー(81)が立ち上げた旧第二電電(現KDDI)の創業メンバー。いわば稲盛氏の“弟子”であり、社外取締役として十分に機能を果すことができるのだろうか、との声もある。

 社外取締役は直接利害関係のない独立役員である。これが選任の要件になっている。

 静岡銀行の社外取締役で、シンクタンク・ソフィアバンク副代表の藤沢久美氏(46)は各方面から引っ張りだこの人気者だ。東日本大震災事業者再生支援機構取締役、日本証券業協会公益理事、シンメトリー・ジャパン取締役、一般社団法人投資信託協会理事、社会起業家フォーラム副代表、法政大学大学院客員教授と八面六臂の活躍だ。外資系投資顧問会社数社の勤務を経て、日本で最初の投資信託を評価する会社を設立した。

 人気者といえば早稲田大学大学院教授の川本裕子氏(55)も注目されている。日本取引所グループに続いて三菱UFJフィナンシャル・グループの社外取締役にも就任し、東京海上ホールディングスの監査役でもある。米経営コンサルタント会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーに在職中に政府関係委員を歴任。小泉純一郎首相と竹中平蔵金融相(ともに当時)が推進した金融改革のエンジン役を果たした「金融問題タスクフォース」のメンバーだった。

 日本のヘッドハンティング企業、G&Sグローバル・アドバイザーズ社長の橘・フクシマ・咲江氏(63)は、三菱商事、味の素、ブリヂストン、J・フロントリテイリング4社の社外取締役だ。08年にビジネスウィーク誌に「世界で最も影響力のあるヘッドハンター50人」に唯一の日本人として選ばれた。

 語学教育のベルリッツコーポレーション名誉会長の内永ゆか子氏(67)は、イオン、ソニー、HOYA3社の社外取締役。日本IBMで専務執行役員、ベルリッツコーポレーションの会長兼CEO、ベネッセホールディングスの副社長を務めた。企業の女性幹部育成を目的としたNPO法人「J-Win」の理事長でもある。

●政府関係者や官僚出身者も

 元経済財政相の大田弘子・政策研究大学院大学教授(59)は、パナソニックの社外取締役に就いた。同社の取締役に女性が就くのは初めて。大田氏は2000年以降、同社のアドバイザーを務めた経緯がある。JXホールディングスの社外取締役を兼務している。

 02年に大学を離れ、行政官に転身した。小泉純一郎内閣では女性初の内閣府政策統括官(経済財政分析担当)、第1次安倍晋三内閣、福田康夫内閣では、民間人閣僚として経済財政政策担当相を務めた。その後、大学に戻ったが、第2次安倍内閣で内閣府規制改革会議議長代理に就いた。安倍政権と太いパイプを持つ。

 女性通産官僚の草分けである坂本春生氏(75)は三菱自動車と横浜銀行の社外取締役である。女性のキャリアとして初めて通産省に入省。初の女性課長や札幌通産局長などを歴任した。退官後は、西友副社長、西武百貨店副社長、セゾン総研理事長などを務めた。現在は、公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会会長である。

 一橋大学大学院教授の大園恵美氏(48)は、りそなホールディングス、ローソンの社外取締役。日本総合研究所理事の翁百合氏(53)は、セブン銀行、日本郵船の社外取締役。総合研究開発機構理事、早稲田大学客員教授である。

 日本航空の社外取締役を務めるのは岩田喜美枝氏(66)だ。厚生労働省雇用均等・児童家庭局長を経て資生堂に入社。資生堂の副社長を務めた後、昨年7月、日本航空の社外取締役になった。キリンホールディングスの社外監査役でもある。

 7月1日付でANAホールディングスの社外取締役に就任したのは小林いずみ氏(54)。メリルリンチ日本証券の代表取締役社長だった人だ。かつて大阪証券取引所(現日本取引所グループ)の社外取締役だったことがある。NECの社外取締役の佐々木かをり氏(54)はイー・ウーマン代表取締役社長である。今年、旭化成の社外取締役になった白石真澄氏(54)は関西大学政策創造学部教授。

●ひとりで6社を兼務する例も

 社外取締役を最も多く兼務しているのは、一橋大学大学院教授の安田隆二氏(67)。大和証券グループ本社、ふくおかフィナンシャルグループ、ソニー、ヤクルト本社に続き、今年からオリックスの社外取締役に就いた。朝日新聞社の社外監査役でもあり、これを入れると6社に関わっていることになる。マッキンゼー出身の金融機関経営論の専門家。マッキンゼー在職中に川本裕子氏と共著で『日本金融 再生への提言』(東洋経済新報社)を出した。地域再生ファンド、ジェイ・ウィル・パートナーズの会長でもある。

 三菱商事会長の小島順彦氏(71)も兼務が多い。ソニー、三菱重工業、武田薬品工業に続き、今年、商工組合中央金庫の社外取締役に就いた。出身母体の三菱商事と合わせて5社の取締役を兼務し、経団連の副会長である。

 社外取締役の中には、同時に何社も兼任している人が少なくない。それもグローバルな競争を強いられている大企業に多い。招く側は「大所高所からのご意見を」、招かれる側は「それなら」と気軽に引き受けての兼任だとしたら、社外取締役の役割を履き違えている。1社でも大変な仕事なのに、複数会社の社外取締役として監視の目を光らせることが果たしてできるのか?

BusinessJournal編集部

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