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ビジネスと契約書の、ちょうどいい関係(1)

口約束でも契約は成立?契約書を交わす“本当”の目的と、明確化すべきポイント

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口約束でも契約は成立?契約書を交わす“本当”の目的と、明確化すべきポイントの画像1「Thinkstock」より
 とっつきにくい「契約書」に関する問題を、1月に上梓した『契約書の読み方・作り方』も「わかりやすい」と評判の行政書士・竹永大氏が、専門家としてやさしく解説します。

 契約書は、ビジネス文書の中でも特にわかりにくく、読むのがおっくうという方も多いのではないでしょうか? とはいえ、きちんと読まないと「不利な点があるかも知れない」などと不安にもなります。契約書は、必ず用意しなければいけないのでしょうか? 日本の法律では、ほとんどの契約は「諾成(だくせい)契約」といって、お互いの意思が合致してさえいれば、有効に成立するとされています。つまり、契約書などつくらずに口約束だけであっても、原則として有効な契約なのです。

 ところが、口約束が全部契約なのかというと、そうとはいえません。“口約束も契約になり得る”というだけです。例えば「3時に駅前で待ち合わせよう」といった程度のことを、「契約だ」などと考える人はいないでしょう。なぜなら、この程度の「約束」が仮に破られたところで、法的な対応までは必要もないと、私たちが常識的に了解しているからです。法律にしても、すべての口約束を平等に契約と扱っているわけではないのです。

 問題は、それらの単なる「約束」とビジネスでいう「契約」との境界線が、意外と曖昧になりやすいことなのです。つまりビジネスでは、その過程でさまざまな顧客や取引先と「約束」を重ねていくわけですが、いったいどこからが明確な「契約」なのか、そのすべての判断をお互いの常識に委ねてしまうと、非常に危険です。

 例えば商品の売買で、価格とか納期といったことは、互いに強く意識しているでしょうから、そこで認識が食い違うことは少ないでしょう。シンプルなビジネスならそれで済みますが、期待できる性能やサービスのレベル、返品や交換は可能か、保証はあるかなどの、信頼性やサービスの範囲の問題が含まれる場合などは、どこまでが「売り文句」で、どこまでが「確約」された条件なのかについて、売主側の期待と買主側の意図にすれ違いが起きることがあり、それがクレームや代金未払いといったトラブルにつながる恐れもあります。

●契約書をつくるメリット

 このような事態を避けるためにも、あらかじめ契約書を用意して、取引の全体をカバーするような共通認識を築いておきたいものです。このわずかな手間をかけることが、ふたつの意味で重要なメリットをもたらします。

 まず、売主として予想外の責任を負わないよう、自社のサービスの範疇では「ない」ものを明確に除外しておくことができること。例えば「ホームページの制作はするが、集客効果の保証まではしません」とか「システム設計についての変更には応じるが、一定の別料金がかかります」など、要は「やれる範囲・提供できるサービス」を明確にするということです。

 そしてもうひとつのメリットは、相手から自社に提供してもらう義務について、それを書面で明確化しておくことで、相手に確約をさせることができることです。代金の支払条件などはもちろんですが、加えて、万一支払いが遅れた場合のペナルティを決めておくことも、契約書があれば簡単にできるのです。こうした条件を設けることは、相手により確実に約束を守らせる効果があると考えられます。

 このように、契約書はうまく規定をつくることで、互いにリスクを低減させることができるツールであって、国際的にも長く活用されてきたビジネス習慣といえます。
(文=竹永大/行政書士)

■プロフィール
1973年東京生まれ。行政書士。経済産業省後援ドリームゲートアドバイザー。契約書の基本セミナー講師。平成15年、竹永行政書士事務所を設立。契約書専門の行政書士として、下町の工務店から大手企業まで幅広いクライアントを持ち、あらゆる業界の契約実務をアドバイスし続ける。ホームページで失敗しない契約書のテクニックや書式を無料公開中。著書に「わかる!使える!契約書の基本」(PHPビジネス新書)、「契約書の読み方・作り方」(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

BusinessJournal編集部

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