こうした過酷勤務や危険なフライトを嫌い、「再上場後も自己都合退職するベテラン・中堅社員が後を絶たない」(JAL関係者)という。

 別のJAL関係者からは、「アメーバ経営の良さを信じて収支改善運動に取り組む動きが盛り上がっているのは確かだが、それも稲盛さんや森田さんから受けた呪縛力がある間だけ」とうそぶく声も聞かれる。

●一部業績に懸念材料も

 こうした、意識改革に対する経営陣と社員の齟齬に加え、意識改革を引っ張る肝心の業績も不安要素を抱えている。

 アメーバ経営で改善したはずの売上高営業利益率は、12年3月期の17.0%から13年3月期は15.8%に低下、14年3月期は11.0%(予想)と、さらに悪化の兆しを見せている。LCC(格安航空会社)との競争激化、円安による燃料費増加と国際線の収益悪化など、経営環境も厳しさを増している。

 こうした状況に対して、植木社長は9月18日の定例記者会見で、「いたずらに事業領域を広げることなく、航空運送事業にフォーカスし、日本と世界、世界と世界のヒト・モノをつないでゆく」との「成長戦略の方向性」を打ち出している。

 これを受けJAL関係者は、「アメーバ経営に半信半疑で取り組んでいる社員を鼓舞するためにも、守勢的でもいいから、もっと具体的な成長戦略を示してほしかった。このままでは、せっかく芽生えたコスト意識も、稲盛・森田の呪縛が解けたら元の黙阿弥。そうなれば、また『泥沼の社内抗争』が息を吹き返す」と顔を曇らせている。

 稲盛氏が心血を注いだアメーバ経営注入を、いかにして「自己統制力」に昇華してゆくかが植木社長に課せられた最大のミッションともいえるが、その遂行に与えられた時間は限られているのかもしれない。
(文=福井晋/フリーライター)

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