さて次に、図2に現時点の生涯未婚率の変移を示すグラフを重ねて示します。先ほど申し上げたように男性の8割、女性の9割が結婚を選択していることを示しています。つまり、現在の女性の結婚率9割は、なんのことはない「85年時点で7割にまで持ち上げた(当時の)若い女性」の努力が反映されているだけです。
女性の結婚が30歳を過ぎると激減する(2割しか増えていない)のは当然です。30歳以下で結婚している女性が多かったから(7割)です。
さて、問題はここからです。
まず検討に際して、かなり乱暴なカテゴライズをしました。全体像を把握するためです(図3)。


図4は、このカテゴライズに従って、将来の結婚がどのように推移するかを考える上でつくった図です。先ほどのカテゴリに、結婚率の「上昇」「横ばい」「下降」の3つの状態をかけ合わせたマトリックスで、私はこの9つのすべてについて、それぞれ検討してみました。
当初、私は「30歳までに結婚」と「30~50歳までに結婚」の状態は、20年の時間を平行移動しながら推移するだろう、と思っていたのです。ところが、そうならないことがわかってきたのです。簡単にいうと、「30歳までに結婚」は安定しているのに対して、「30~50歳までに結婚」が減ってきているのです (なお、参考までに私の同僚の「願望」や「所感」が、どの位置にあるのかも示しておきます)。

図5は、この検討過程でつくった机上シミュレーション結果の概要です。30歳までの結婚率は、現在、男性30%、女性40%で安定傾向にあるようです(各種の補間関数を使って極値計算した結果)。
ところが、50歳を越える生涯未婚率は年々増加しています。男性のほうはキレイな線形の増加を示していますが、女性のほうは指数関数的な増加傾向が見られます。しかし、今回の計算では、男性と同じ線形増加と仮定しました。指数関数にすると、女性が一人も結婚を選択しないのに、男性だけが結婚を選択しているという奇妙な状態が発生してしまうからです。
なぜ、私がこのような生涯未婚率の線形増加を仮説として置いたかというと、1970年頃からこの現象の萌芽が見られ、そして1985年から現在に至るまで(28年間)、「一貫したマクロな傾向」として安定しているからです。そして、この「一貫したマクロな傾向」というのが問題なのです。
例えば、人口ピラミッドにおいては、突出して人口の多い世代が表れています。団塊世代と団塊ジュニア世代です。団塊世代は、戦後の高度成長期すなわち日本が絶好調の景気状況にあった時代に誕生しました。団塊ジュニアは、(言い方は悪いですが)その二次的創作物です。
ところが、生涯未婚率に関しては、景気との関連が当てはまらないのです。この28年間には、バブル期とバブル崩壊期という、まったく相反した経済現象が表れたにもかかわらず、「一貫したマクロな傾向」が変わっていないのです。つまり、現時点において、私の生涯未婚率の線形増加の仮説を否定する材料を全然見つけられなかったのです。また、主観的にも、私の周りの独身者の数も似たような傾向にあると感じたことにもよります。