●女性に頼りきっている、この社会の懦弱さ
結局のところ、私たちの社会の未来をつくっているのは「女性だけ」である、ということです。
昔から、人命に関わる災害発生時の救助の順番は「女性、子どもが先」が絶対不変のルールですが、これは「弱者優先」が理由ではありません。人間を生み出す能力を持っていない男性を「女性、子ども」より優先して救出する必要はないからです。
今回、私はパソコンのディスプレイを睨みながら、人口ピラミッドの変化をずっと追ってきました。そして、我が国の未来を決定するのは女性であり、しかも、そのごく一部のみに依存しているという事実に、改めて愕然としています。
死を運命づけられた我々人間にとって、未来が最後の希望であることは論をまたないでしょう。ならば、「人間は平等」を前提としても、その中でも特別に、重点的に、徹底的に優遇する必要があるのは女性です。しかし、今の日本は、女性を優遇するどころか、結婚の機会を踏みにじり、出産を妨害するように機能しているとしか思えません(次回、詳細に論じます)。
●そもそも、それ以前の問題として、「何か変ではないか?」
今回のシミュレーションの計算を通じて、私が一貫して感じてきた違和感は「なぜ、特定の世代の女性だけが2人以上の出産を、まるで業務命令のように強いられる構造になっているのか」ということです。自分たちの存在を未来につなぎたいのであれば、性差に関係なく、誰もが自力で、子どもをつくり出すべきなのではないか? という、根本的な疑問にまで遡ってしまいました。
男性が出産することは当面無理だとしても、それ以外の手段があるのではないか?
原理的に可能な状態に至っている技術があるのではないか?
なぜ、それが政府の少子化対策の前面に出てこないのか?
そもそも、結婚という手順を踏まなければ出産できないという法律があるわけでもなく、先進国の中にあっても、合計特殊出生率2.0を達成している国だってあるのです。
何か変ではないでしょうか。
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前回と今回のコラムでは、少子化問題の行き着く果ての姿を数値で示してみました。
次回は、まず政府の対応の現状をきちんと調べた上で、その有効性を数値やその他の手段を使って検証します。その上で、私の考える、現実的かつ実現可能な、エンジニア視点の「少子化対策」を提案してみたいと考えています。
(文=江端智一)
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