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家でも生ビール?ビールの「泡メーカー」ヒットのカラクリ~手軽にエンタメとしても

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家でも生ビール?ビールの「泡メーカー」ヒットのカラクリ~手軽にエンタメとしてもの画像1泡マスター(日本炭酸瓦斯)
 今年の夏は、とにかく暑かった。猛暑の勢いは、10月になっても連日最高気温が25度を超える等、収まる気配がないようだ。記録的な猛暑の今夏、家飲みの主役である缶ビールを、まるでビアホールで飲む生ビールのように楽しむことができる、泡に注目した製品が相次いで発売された。注ぐとキメ細かな泡が立つグラスやジョッキ、缶ビールに取り付けるタイプの簡易サーバーなど。しかし、その中でも特に目覚ましい売れ行きなのが「泡メーカー」だ。「泡マスター」「ソニックアワー」「コク泡」…などが、その代表格だ。そのヒットの秘密を探ってみた。

●炭酸注入方式vs.振動泡立て方式

 「泡メーカー」には、大きく分けて2つの方式がある。

 1つは、炭酸ガスを注入して泡をつくりだすタイプだ。代表的な製品は、日本炭酸瓦斯が製造している「泡マスター」(定価・税込3129円)。炭酸ガスをビールに一瞬吹き付けることによって、きめ細かいシルキーな泡を作るスグレものだ。これさえあれば、家で飲むビールを、お店の味に変身させることができる。使い方も簡単だ。泡付けノズルの先端を1cmほどグラスに注いだビールに差し込み、プッシュボタンを1回だけ押すだけでいい。炭酸ガスはカートリッジ式で電源も不要。カートリッジ1本で、300回ほどの噴射が可能だ。

 日本炭酸瓦斯の広報によると、「泡マスター」は3年前から製造、累計で5万2000台、うち13年は1~9月までに1万1000台を出荷し、前年同月比で150%以上となったそうだ。

 もう1つは、ビール自体に振動を与えて泡を発生させるタイプだ。その代表的な製品が、タカラトミーアーツが販売する「ソニックアワー」(定価・税込み3990円)。本体上部のトレイに水を張り、その上にビールを注いだグラスを置き、スイッチをタッチするだけの手軽さがウリだ。グラス底面に超音波振動が与えられ、クリーミーで滑らかな泡が出来上がる。電源が乾電池であるために、どこにでも持ち運べる気軽さもあり、そしてライトスイッチでLEDライトによる光の演出も楽しむことができる。父の日などのギフトにも最適だ。

 タカラトミーアーツの広報に聞くと、13年4月25日発売以来、8月末までで8万個を出荷し、当初の販売計画を越えるペースだという。特に店頭での実演販売で、泡がグラスの中で発生する様子が好評だったそうで、出荷も好調に推移したという。

 両社とも、13年の売れ行きが非常に好調であったことから、来年度に向けた新製品の開発についても前向きに検討しているそうだ。

●ビール好きには、たまらない「泡」

 もともと、ビールには泡がつきものだ。居酒屋やビアホール等、飲食店ではビアサーバーを使って必ず泡を立てたビールを提供する。これは、なぜであろうか?

 泡は、ビールが空気と触れないためのふたの役割を果たしているそうだ。ビールは空気に触れてしまうと、酸化して臭みが出てくる。皆さんも、瓶の底に飲み残したビールを飲んだ経験があるだろう。決して美味しくはなかったはずだ。それは泡が立っていない状態で、ある程度時間がたったビールは、生ぬるくなっているせいもあるが、酸化して臭みが出てしまっているからなのだ。

 さらにビールの苦味は、泡に集まる性質があるという。ビールの泡は、ビールに含まれているホップの苦味成分、イソフムロンと麦のタンパク質が結びついたものだ。したがって泡を立てれば、苦味がほどよく抜けた、喉ごし爽やかなビールが楽しめるのに対し、泡を立てないと、苦味が残った重い味のビールになる。ビールの注ぎ足しがいけない理由も、この「泡が立たない」ということにあるといわれている。

 このような背景もあるからであろう。ビール好きの人たちは、やはり泡にこだわる。その結果、夏になるとビアホールがオープンし、泡立った生ビールがよく飲まれることになる。しかし、家で飲む缶ビールでは、このような泡を立てるのは難しい。そこで注目されてきたのが、ビールの泡を作る「泡メーカー」だ。

●ビールメーカーも注目していた「泡」

 ビールを美味しくする泡の力には、ビールメーカー各社も注目していたようだ。ビールメーカー各社では、生ビールのサーバーと同様に泡を立てることができる缶ビール用ビアサーバーを景品としたキャンペーンを、ここ数年展開してきた。各社のビアサーバーは、一定の本数のビールを購入すれば必ずもらえる景品としてアピールされたが、350ml缶ビールで120本(1ケース24本で5箱)ほど買わなければならないヘビーユーザー向けの景品であったことから、話題にはなったものの、実際に消費者がどの程度、このサーバーを手にしたのかはわからない。

 しかし、このビールメーカー各社のビアサーバーキャンペーンは、家飲みの缶ビールであっても、泡が立ったビールを飲むことができると立証した。ビール好きは家飲みであっても、ビアホールで飲む生ビールと同じような、きめ細かい泡が立ち、苦味がほどよく抜けた、喉ごし爽やかなビールを楽しみたいのだ。

 そのための方法として缶ビール用のビアサーバーというような器具が欲しいという、新たなニーズを生み出した。さらに夏には、バーベキュー等アウトドアでビールを飲む機会も増える。すると、アウトドアで「ビールでカンパイ!」といったシチュエーションの時に、ちょっとしたサプライズができる便利グッズとして、ビールの泡を気軽に楽しみたいという欲求も出てくるのは自然だろう。

 そこで、さまざまな企業が「泡メーカー」を製品化し発売するようになった。それが、この夏の猛暑の中でのヒット商品となったのだ。

●「泡メーカー」 が教えてくれるヒットの秘訣は、手軽で便利

 この夏ヒットした「泡メーカー」だが、2つの方式の製品とも共通しているのは、本格的な極上のビールの泡が、手軽にしかもコンセントなどを気にしないでつくれるという便利さだ。遊び心にあふれていて、泡が出てくる様子自体をエンターテインメントとして楽しむことができるという、本来の機能に付加されたベネフィットまで与えている点が消費者に受けた理由だろう。来年の各社の「泡メーカー」が、どのように進化しているのか、今から非常に楽しみだ。
(文=大坪和博)

BusinessJournal編集部

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