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ビッグデータ活用、農業や交通でも莫大な経済効果〜普及のさまたげは日本人の気質?

文=エースラッシュ
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ビッグデータ活用、農業や交通でも莫大な経済効果〜普及のさまたげは日本人の気質?の画像1「Thinkstock」より
 総務省は毎年「情報通信白書」というものを公開している。テーマはその年ごとに違っているが、情報通信に関するさまざまな統計をまとめたもので、『「スマートICT」の戦略的活用でいかに日本に元気と成長をもたらすか』をテーマにした平成25年度版は7月16日に公開された。

 ここでいわれる「スマートICT」というのは、モバイル、クラウド、ビッグデータ、ソーシャル、4K/8Kなど、最新のICT(Information and Communication Technology)のことだ。この中で、特にビッグデータに関する統計を総務省が公表するのは初めてのこと。最近のIT関連ニュースではよく聞くキーワードである「ビッグデータ」が、どれくらいの経済効果を生み出すかなどが試算された。

そもそもビッグデータとはなんなのか?

「ビッグデータ」というキーワードが具体的に何を示しているのかというと、実は完全に定義の定まった言葉ではないようだ。しかし「オンラインサービスから猛スピードで生成される大量のデータ」を指すことが多い。具体的にはTwitterやFacebookといったSNSサービスに投稿されたデータや、SuicaなどのICカード利用で集まるデータ、スマートフォンやフィーチャーフォンから発信される位置情報等をはじめとしたデータなどのことを指すことが多い。実際は各種センサーからのデータや店舗のPOSレジのデータ、電子カルテなど幅広いデータを含んでいる。

・ビッグデータ国内流通量の推移

 これらから生成されるデータは、膨大だ。利用者が急増したこともあり、データの増え方が過去に比べて非常に速いというのも特徴だろう。そして、これらのデータは企業が一般的に使っているデータベース(リレーショナルデータベース)に収まるタイプの情報とは違っている。つまり、従来企業が利用してきたデータと少々毛色が違うもので、大量発生しているもののことを「ビッグデータ」と呼び分けていると考えるとよいだろう。

 画像やテキストなど、自由な形で存在する「ビッグデータ」は、従来型のデータ管理手法では管理しきれない。しかしそこには、さまざまな情報が含まれている。それを分析することでビジネスに生かせるのではないか、という考えが出てきた。それを実現できるツールも増えてきている。そうした流れで注目されてきた「ビッグデータ」が、実際にどんな経済効果をもたらすのかが見えてきたのが、今回の白書なのだ。

農業やインフラ分野にも大きな経済効果

 増えているといわれているビッグデータの流通量がどのくらい増えているのかというと、2005年から12年の7年間で5.5倍になっているのだという。サービス業、情報通信業、運輸業、不動産業、金融・保険業、商業、電気・ガス・水道業、建設業、製造業という9産業の合計が、12年時点で2.2エクサバイトだと推計されている。この中で一番多いのが、POSデータだ。もちろん、流通量が増える中で蓄積量も増えている。

 POSデータを分析して、店舗の立地条件に合わせて売れる商品を仕入れる、というような取り組みはずいぶん前から行われてきた。一方、農業のような第一次産業では、そうしたデータを活用して何かをするという取り組みは遅れ気味だった。しかし、ビッグデータの活用は徐々に広がりを見せているという。

 農業での活用とはどのようなものかといえば、田畑に設置した気温や湿度、日照状態などを調べるセンサーと、出来上がった農作物の品質データを関連づけることで、効率化や生産性向上を実現するという具合だ。白書の中ではデータを利用することでレタス栽培工場のコストが4億円削減できると試算している。12.5%のコスト削減によって、路地栽培とほぼ同等のコストとなり、利益換算で7.5%向上するというのだ。また、稲作に利用した場合の品質向上による販売単価向上は、3968.2億円の効果をもたらすとしている。

 同じように道路・交通のインフラでデータを予防保守に使うことで、延命できる効果が2700億円、渋滞削減による燃費向上効果は1.16兆円だと試算している。うまく活用すれば莫大な経済効果が見込めるようだ。

日本人気質が活用の課題?

 しかし、そんなに経済効果があるならばどんどんやればよい、という運びにはならないのが難しい。白書の中では諸外国と比較した、日本人の気持ちにも触れている。

 パーソナルデータのソーシャルメディア利用時の取り扱いについて、ソーシャルメディアで第三者に実名が公開されることをどう考えるかという質問がある。これに対して「どんな場合でも許容できない」と回答した人は日本で57.3%にも上っている。フランスで19.5%なのを除いても、アメリカ、イギリス、韓国、シンガポールはすべて20%台に収まっているのに対して、日本人の拒否感の強さがうかがえた。

パーソナルデータの取扱い(ソーシャルメディア利用時)

 またビッグデータ関連サービスでのパーソナルデータの取り扱いについては、安全・安心のためならば「条件によっては許容できる」という人が大幅に増えることで「どんな場合でも許容できない」とする人の割合は諸外国並み、または諸外国以下になることがわかった。一方で「許容できる」と条件づけをしないで許容する人は相変わらず少ない。

パーソナルデータの取扱い(ビッグデータ関連サービス)

 先日話題になったSuicaのデータ販売に関しても強烈な拒否感があったことを考えると、基本的に日本人は自分のデータを何かに使われることは好まないことがうかがえる。安全・安心に関することならば仕方ないから我慢してやろう、というような具合だろうか。企業の利益のために使う、というような活用法がスムーズに納得されるには、まだ時間がかかりそうだ。
(文=エースラッシュ)

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