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JR、ずさんなサービス品質の実態〜安全対応軽視、黙り込む駅員、顧客無視のシステム

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 ところが、長い列車が停車する新幹線駅構内には、ホームに上るエスカレーターは1カ所しかなく、とにかく「歩け、歩け」が前提になっている。働き盛りのビジネスマンを主要顧客にしていた、高度経済成長期の感覚のままで対応していると見られても仕方あるまい。JR東海の対応は、「高齢者は乗るな」というメッセージを出しているのと同然である。これでは、社会貢献に熱心な企業とはいえない。経営理念に書かれている「健全な経営による世の中への貢献」は絵に描いた餅といえよう。

●「顧客ニーズ軽視」のネット予約システム

 普及著しいインターネット予約については、需要側(顧客)のニーズを軽視したとも受け取れる供給側(JR東海)の論理が垣間見られる。接触型ICカードで乗車できる「EX-ICサービス」は、その典型だ。そもそも、このサービスのネーミングも一ひねりしてほしかった。誰に耳を傾け、誰がこのような、具体的なサービスを直観的にイメージできない名称をつけたのだろうか。「これで、わかるだろう」という思い込みに基づく、「事実上独占企業」JR東海ならではの、プロダクト・アウト、上から目線の体質が表れている。

 1987年、国鉄の分割民営化に伴い、JR東日本が「国電」に代わる名称を公募した。その結果、「E電」なる新名称を使い始めた。結局、まったく定着せず、いつのまにか消えてしまった。広く一般人から公募したというプロセスが言い訳になっているかもしれないが、最後に採用を決めたのはJR東日本である。

 メーカーであれば、商品名は命である。雑誌、書籍の編集などに携わった者であれば、誰しもわかるが、タイトルは社運を左右するといっても過言ではない。そのような感覚が、JRグループにあるのだろうか。供給側の論理で考えられたネーミングは、いずれもJRの人にとってはわかりやすいかもしれないが、老人などにはチンプンカンプンである。つまり、ネーミングに留まらず、サイトの使い勝手も含めてコンシューマー・オリエンテッド(顧客志向)ではない。ネットで「殿様商売」と揶揄されているゆえんである。

「EX-ICサービス」にある「e特急券」も然りである。同サイトを開いても、どのようなチケットなのか、使い方、特典など、わかりにくい点が多い。少なくとも、一目瞭然とはいかない。生命保険の定款かと思えるほど、細かな文字で、かつ、日本語として完成度が低いわかりにくい文章でだらだらと書いてある。文章を改良するのはいうまでもないが、ネットの表現技術が発達した今、図や写真、動画などを駆使して、わかりやすく表現しようとする発想はないのだろうか。

 使い勝手が悪いのは、バーチャルなサイト操作だけではない。リアルなやり取りでも今どき考えられない仕組みが存在する。「EX-ICサービス」では、サイトで事前予約し接触型ICカードを改札機にタッチして新幹線に乗車する方法だけでなく、あらかじめ切符を券売機で購入してから乗らざるを得ない予約条件が設定されている。

 同サービスをよく知らない東京在住の人が、この一文を読めば、例えば、山手線の池袋駅の券売機で切符を買えると思っているのではないだろうか。通常の新幹線の切符はJR東日本が運営する各駅の「みどりの窓口」で購入できるのだから、そう考えても不思議ではない。

 しかし、「EX-ICサービス」の場合、新幹線の駅がある東京駅と品川駅でしか切符を入手できないのである。利用者からすれば、JR東日本もJR東海も同じJRである。なぜ、池袋駅では買えないのか理解できないのではないか。ましてや、航空機のチケットがどこのコンビニでも買える時代にだ。

 ところが、JR東海の供給側の論理からすれば、同社管轄の駅である東京駅と品川駅だけで売っていて何がおかしい、と考えているのだろう。そんな考えはないと、といいたいかもしれないが、実態がすべてを物語っているのだから、言い訳の余地はない。

 このような使い勝手の悪いサイトゆえ、操作している中で疑問点がたびたび生じる。そのたびに、電話で問い合わせる。やっとオペレーターが出てきたかなと思うと、「少々お待ちください」といわれ「長い間」待たされる。なんのためのインターネット予約なのだろうか。それでも、駅でチケットを購入するよりも安く買えるから、インターネット予約を利用する人は少なくない。その結果、インターネット予約を顧客に利用させることにより、JR東海は人件費をはじめとするコストを削減できているはずである。不完全なシステムを利用させているのだから、顧客の犠牲のもとに、自社のコスト削減をはかっている、つまり、利用者の便宜よりも、自社の利益を優先している企業と見られてもおかしくあるまい。

「EX-ICサービス」をしょっちゅう使っている人たち数人に意見を聞いてみたが、同じような感想だった。日本人ですらこうである。外国からの観光客どころか、日本に住んでいる外国人も、このようなサービスではお手上げだ。

 2020年開催の東京オリンピックに向けて日本を訪れる外国人観光客は急増するだろう。成田や羽田の国際空港、関西、中部国際空港などが日本の玄関口だとすれば、JR東海は動く応接間である。そのサービスがこれほど不備でグローバル対応していないようでは、「おもてなし」も期待外れとなる。ハードを完璧にするのは運輸事業者として当たり前のこと。それと同様、グローバル対応型サービス産業としての自覚をJR東海に求めたい。

 以前、JRのホワイトカラー組(ミドル)数人と長時間話をしていたときのことを思い出した。冗談交じりだったが、いずれのJRマンからも、決まり文句のように出てきた言葉がある。「こんなタイプは出世できないんですよ」。実に伝統企業ならではの古典的なフレーズだが、これこそ、JRで上を目指している人たちの潜在心理かと勘繰った。皮肉だが、このような繊細な心理は、大いにサービス向上に使っていただきたいものだ。JR東海の経営理念の中には、「近代的で愛され親しまれ信頼されるサービスの提供」という一節があるのだが、ブラック・ユーモアなのだろうか。
(文=長田貴仁/経営学者、ジャーナリスト)

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