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『不格好経営 チームDeNAの挑戦』著者・南場智子氏インタビュー

DeNA、急成長の秘訣は“不格好経営”?優秀な人材を育てる非常識経営〜創業者に聞く

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南場 経験が豊富だと、逆に常識にとらわれて柔軟な発想ができず、いいものをつくれないという場合も多いです。私たちは、常識に沿ったサービス、今までにあるようなサービスをつくりたいとは思っていません。つまり、今までにないようなサービスをつくろうとしており、そういう私たちにとって、常識は大敵です。

 また、そのように成果を上げた社員は、当社では配属先の希望が優先的にかなえられるような仕組みになっています。『怪盗ロワイヤル』を成功させたその社員も、英語がまったくできなかったにもかかわらず米国勤務を希望したので、英語学校の研修を定期的に受けさせ、今は希望通り米国で活躍しています。

–貴社は「人が育つ」と人材業界内でも評価が高いことで知られていますが、その理由はなんでしょうか?

南場 それは、裁量権を与えて任せるからです。入社1年目でも「こういうことまで任されるのか?」と思うほど任せます。人は人によって育てられるのではなく、仕事で育つのです。そして、成功体験でジャンプするのです。しかも、簡単な成功ではなく、失敗を重ね、のたうち回って七転八倒した挙げ句の成功なら大きなジャンプとなります。

 採用に対しても、すごく時間とエネルギーを使っています。いい人材を採るためなら労を惜しまないという素晴らしいチームで採用をしています。もちろん私自身も率先して採用には関わっています。それは創業時代から変わっていません。優秀な人材が多い集団にすると、社外からも優秀な人が来たがりますから。

 創業時も私が心の底から惚れ込んだメンバーだけで始めましたし、10人になってもそうです。その10人が、自分よりもすごいと思う人を連れてくれば、さらに優秀な集団になりますね。内定を出しても入社してくれない場合には、3年くらい追いかけ、口説くこともあります。とにかく、プラスになることはなんでもします。

●突然の社長退任

–11年5月、病気療養中のご主人の看病に時間を割くため、「6月の定時株主総会で非常勤の取締役に退く」という発表をされましたが、それまで会社を引っ張ってきた創業者の突然の退任発表に、社員の方々は動揺したのではないですか?

南場 みんなビックリしたと思いますね。でも、主人のことがなくても、ちょうど50歳になる12年を区切りにしたいとは考えていたので、私の心の中では周到な準備ができていました。

 私は、会社というものは、私の寿命や能力を超えて持続的な発展を遂げていかなければいけないと考えています。そのためには、その時点でのベストな人物がトップを担うべきです。だから、私自身に課せられた重要な仕事として、退任の仕方を見せるということを意識して準備してきました。そこで、今後当社の経営の舵取りを担ってほしいと思う社員には、次から次へと難しい仕事をいくつも任せました。その結果も出て、あとは会社自体に問題がいくつか残っていたので、その問題解決の基盤をつくってから退任しようと考えていました。

 しかし、その前に事態が急転してしまい、予定よりも1年早い退任となりました。

–本書の中で、「社長の一番大事な仕事は意思決定」と書かれています。意思決定をされる際に、どのようなことに気をつけていますか?

南場 私の場合は、性格的にロジカルなので、感情を入れず論理的に判断します。つまり、トコトン議論をして、聞くことを聞いて、その上で決めますが、最終的な意思決定をする場合には迷うこともあります。そこで普通であれば「もう一週間かけて慎重に検討しよう」と「継続討議」にしたくなるわけですが、私は「継続討議」にせず、「決定的な重要情報」が欠落していない場合は、決断します。そして、それに向かって迷いなく進むほうが、いい結果になる場合が多いようです。

 トップが決定を先送りしていると、組織全体を迷いに陥れてしまうことがあります。例えば、今日の経営会議で決まるはずのものが決まらないと、決まると思って準備していたパートナーさんに待ってもらわなければなりません。そして、「この次は決まるはずですから」と言っても、「もしかしたら次も決まらないかも」と思われ、現場にすごく迷惑をかけることになります。特に動きの速い我々の業界では、それが致命的になることもあります。

–最後に、今後貴社が力を入れていく新事業や取り組みなどについて教えてください。

南場 当社は現在、ソーシャルゲームのほか、eコマース、インターネット広告、トラベルなど多岐にわたる事業を展開しています。そうした中、新規事業として昨年12月にはコミュニケーションアプリ「comm」を、今年3月にはスマートフォン向け音楽プレイヤー「Groovy」をスタートさせ、現在もいくつかの新規事業立ち上げを検討中であり、今後さらに総合インタネットサービス企業としての展開を加速させていきます。

 インターネットアクセスのグローバル市場シェアの推移を見ればわかるように、わずか3年で様相が一変しています。他の業界では何十年がかりの変化かと思うようなシェアの塗り替えが、ネット業界ではたった数年で起きているわけです。

 実は、当社は実力勝負のこの業界で、その頂点を目指して挑戦しようと考えています。これまで世界の頂点に立った「日本発」のネット企業はありません。当社はとても負けず嫌いなチームなので、どうしてもやり遂げたい。そして、世界中のユーザーにアップルやグーグルよりも大きな驚きと喜びを届けられるような企業になりたい。

 この挑戦には世界中の人材が必要です。チームが真からグローバルにならないと、世界市場では戦えません。まずは、世界から多様な仲間を迎え入れ、心と力を合わせて真のグローバルチームをつくることから、世界ナンバーワンを目指した挑戦を始めたいと思っています。
(構成=編集部)

BusinessJournal編集部

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