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「就職のミスマッチ増」のウソ~自社をブラック批判する社員の勘違いとは?

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「就職のミスマッチ増」のウソ~自社をブラック批判する社員の勘違いとは?の画像1(「写真素材 足成」より)
 就職活動をしたことがあれば、誰もが感じる矛盾が新卒採用には存在します。

 学生側が「どの会社を見ても同じようなことしかPRをしていないため、違いがわからない」という一方で、企業の採用担当者も「各就職支援サイトに並ぶコンテンツは似たようなものばかりで、差別化などできない」と感じているのではないでしょうか。

 さて、皆さんは“就職のミスマッチ”という言葉を聞いたことがありますか?

 ミスマッチとは、採用する企業側と就活学生との間に、仕事内容や勤務条件・能力などに関する誤解があり、入社後に会社が新入社員に期待したことと、新入社員の実際の能力や仕事に対する希望に大きな差が生じることをいい、その結果、早期に離職してしまうという結果になります。多くのルポや書籍には、頻繁にミスマッチの問題が取り挙げられています。

 2008年のリーマン・ショック以前は、企業の採用意欲が高く、人員が不足していたことや、ジョブローテーション(社員にさまざまな職務を経験させ能力を高め、企業に必要な人材を育成するための部署異動)も活発で、長期雇用が前提となっていたため、採用時にミスマッチがあったとしても表面化することはありませんでした。

 ところが昨今は、雇用環境の悪化から求人と求職者とミスマッチが増えているという意見が多く見られ、そのような報道もされています。

●ミスマッチが発生する理由

 ミスマッチが生まれる理由は、2つあるといわれています。

(1)厳選採用への移行の失敗

 昨今の採用活動は、学生を厳選して採用しようという方向にあり、優秀な人材を採用しようとする意識が強くなっていますが、採用基準に適合しない学生でも採用しないと採用予定人員を充足できないため、そのような人材が入社後にミスマッチを引き起こしているというものです。

(2)大学進学率の高まりと学生の質の低下

 大学進学率はこの20年間で倍増し、大学・大学院卒の就職希望者数も約2倍に増加しています。一方で、少子化による18歳人口の減少が続いているため、学生数を確保したい大学側は、推薦入学やAO入試に注力した結果、学生の質が低下し、就職が困難になっているという指摘があります。企業が求める能力を有していない学生にとっては、就職の選択肢が狭くなり、求める職に就くことができないため、ミスマッチが起こりやすくなっているというものです。

●26年前と現在のデータで比較

 厚生労働省の「新規学卒者の離職状況に関する資料」を見ると、若年層における26年前から現在までの事業所の規模別・産業別の離職率データを確認することができます。

 これによると、規模・職種にかかわらず、26 年前の数値も現在の数値とさほど変わりはありません。大学卒で見ても、30%台前半でほとんど推移し、業界別で比べると、減少傾向の分野もあります。

 ミスマッチというのは、26年前から続いている市場の摂理であり、法則だということがわかります。就活におけるミスマッチがクローズアップされること、そのものが極めてナンセンスであるといえるのです。

●求められるのは、アイディアを生かすことができる人材

 昨今、景気が上向きつつあり、採用市場も活発化しています。

 劣悪な労働環境の企業もあるでしょうが、中には自分の辞めた企業を誹謗中傷し、ブラック企業呼ばわりする人もいます。私はこのような話を聞くたびに残念な気持ちになります。

 まず、個人のキャリアを形成するのは企業名ではありません。もし入社した企業に対して、それを期待しているとしたら、それは大きな間違いです。特に有名企業や大企業に入社した人にありがちなのが、根拠のない自信と優越感です。有名企業や大企業に入社するためには、相応の努力と運が必要とされます。とはいえ、このような企業に入社できたことで、人生の勝利者のごとく勘違いをしている社員がいます。

 このような勘違い社員は、企業に依存してぶら下がっている社員です。思い通りに行かなかったり、不都合があれば、「自分は企業のドロをかぶった」と考えてしまいます。自分の能力不足が原因だったとしても他責の発言をします。そして、自分がその企業に就職したことはミスマッチだったと考えたり、ブラック企業呼ばわりしたりします。

 マネジメントの発明者である経営学者P・F・ドラッカーは「企業は何よりもアイディアであり、アイディアを生むことができるのは個々の人間だけである」と述べています。これは、社会とは一人ひとりの人間によって構成されており、個々のアイディアを最大限に生かせる組織が、その市場を制することを物語っています。

 そして今日では、アイディアを生かせる人材、社会の変容に対応できる人材を、いかにして確保できるか、という点に企業の関心が集まっています。

 学生、企業の双方が立場を省みて、役割を果たしていけば「就活」と「採用」の世界観は大きく変わっていくことでしょう。
(文=尾藤克之)

●尾藤克之(びとう・かつゆき)
東京都出身。経営コンサルタント。代議士秘書、大手コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。人間の内面にフォーカスしたEQ メソッド導入に定評。リスクマネジメント協会「正会員認定資格HCRM」監修、ツヴァイ「結婚EQ診断」監修等の実績あり。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ新書)など多数。

BusinessJournal編集部

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