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楽天、揺れるブランド~薬ネット通販解禁では改革者、球団日本一、不当割引表示疑惑…

楽天、揺れるブランド~薬ネット通販解禁では改革者、球団日本一、不当割引表示疑惑…の画像1楽天本社(「Wikipedia」より)
 11月3日、プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスが、球団創設9年目で初の日本一に輝いた。その興奮冷めやらぬ中、親会社の楽天がふたつのニュースで注目を集めている。

 まずひとつめが、「インターネットでの医薬品販売」に関してだ。11月6日、政府は今国会に提出する薬事法改正案に、一般用医薬品(市販薬)の99.8%のネット販売を解禁する一方で、安全性に懸念がある28品目を禁止・規制する新ルールを盛り込む方針を決定。市販薬1万1000品目のうち、ネット販売を禁止するのはエフゲン(殺菌消毒薬)など「劇薬」の5品目。また、医療用から切り替えられて間もないリアップX5などの23品目は「要指導医薬品」と名付けられ、販売開始から3年以内に安全性の評価を終えた後、解禁されることになる。政府は今国会での改正案成立を目指しており、来年春にはネット販売の新たなルールが導入される予定だ。

 以前からネットでの医薬品販売の全面解禁を求めてきた楽天の三木谷浩史社長は、この決定を不服として、政府の産業競争力会議の議員を辞める考えを表明した。7日付日本経済新聞によると、三木谷社長は6日に開いた記者会見で、政府が決めた新ルールを「改革と真逆の方向に進んでいる」「政府は医師が処方した薬も対面販売に限ろうとしている。IT(情報技術)を活用して医療費を抑制すべきなのに時代錯誤も甚だしい」と厳しく批判。また、楽天傘下の医薬品ネット通販会社・ケンコーコムは行政訴訟を起こす構えで、三木谷社長も「立法化されたら国を訴える側を支援する。国の民間議員と両立できない」と国と徹底的に争う姿勢を見せている。

 7日付朝日新聞記事によると、三木谷社長が規制緩和策や成長戦略を協議する産業競争力会議の議員に起用されたのは、“安倍晋三首相のご指名”だったという。政権は当初、医薬品のネット販売解禁に狙いを定めた三木谷社長に歩調を合わせた。ところが、10月に厚生労働省の専門家会議による報告書が出されると、政府は安全性に配慮してネット販売を制限する方向に傾き、三木谷社長と対立するかたちとなったのだ。

 ニッセイ基礎研究所専務理事の櫨浩一氏は6日付ロイター記事で、「規制緩和をのろのろとやっていては会社経営がうまくいくはずないとの思いが強かったのだろう」と三木谷社長に一定の理解を示しながらも、「反面、政治の視点から見れば、国民生活への配慮もある。規制緩和への反対にも一理あり、何十年もかけて築いてきたリスクへの配慮を一気に崩すには問題も多い」と、その性急さを指摘している。

 ただ、7日付日本経済新聞社説は、「ネット販売は危険性が高く、薬剤師などによる買い手との対面販売は安全性が高い」とする厚生労働省の説明を「根拠は希薄である」と指摘。「対面、ネットともに売り手は薬局・薬店の薬剤師だ。ネットを認めないのなら対面も違法とし、処方薬に戻すのが筋ではないか」と疑問視している。

 また、経済学者の池田信夫氏は6日、自身のブログで、市販薬の販売が全面解禁に至らなかった理由を「議員に対して薬剤師連盟が3年間で14億円の政治献金をしているというわかりやすい構造がある」と説明している。市販薬だけにとどまらず、医師の処方箋が必要な「医療用医薬品」のネット販売も狙う三木谷社長にとって、越えるべきハードルはまだ多くありそうだ。

●景品表示法違反の可能性も

 そして楽天が世間を騒がせているもうひとつが、同社が運営するインターネット仮想商店街・楽天市場での不当表示問題だ。楽天市場では、楽天イーグルスの日本一を記念したセールを3日夜から7日午前2時まで実施。セールでは、星野仙一監督の背番号にちなんだ「77%割引」が目玉商品だったが、その一部で通常価格を引き上げて表示することで大幅に割引しているように見せかけていたという。

 7日付朝日新聞デジタル記事によると、不当表示があったのは、一部の店が販売していたシュークリームやするめいかなど。他の通販サイトでは10枚9800円で販売されていたするめいかが、楽天市場では通常価格が1万7310円と表示されていたケースも確認されている。

 消費者庁によると、その価格で販売した実績がないのに「定価」「通常販売価格」などと表示した場合、景品表示法が禁じる「有利誤認」にあたる恐れがあるという。この問題について、楽天は「利用者の指摘や社内の調査で複数の店舗で価格の表示に不適切なものがあったことがわかった。詳細については各店に聞き取りをしており、調査中」としている。

 ネットユーザーからは「優勝してブランドイメージを損なうのは史上初めて」「77%オフとか言っているけど、通常価格を高くしているだけの二重価格が横行。こういうとこが楽天が信用されないゆえんだ」など、楽天を批判する声が多く見られる。ネットでの医薬品販売解禁については改革者として評価されている側面もある楽天、そして三木谷社長だが、楽天イーグルスの日本一という快挙とのギャップも手伝い、ブランドイメージを損ないかねない綱渡りの状態がしばらく続きそうだ。
(文=blueprint)

BusinessJournal編集部

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