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日産、なぜ一人負け?ゴーン一極集中経営の迷走、EV不振、商品競争力に市場から懸念も

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日産、なぜ一人負け?ゴーン一極集中経営の迷走、EV不振、商品競争力に市場から懸念もの画像1日産自動車グローバル本社(「Wikipedia」より/Wiiii)
 電撃的なナンバー2の解任劇だった。日産自動車は11月1日、志賀俊之COO(最高執行責任者)(60)が代表権を持った副会長に退く人事を発表した。COOの職務は西川(さいかわ)廣人副社長(59)、アンディ・パーマー副社長(50)、トレバー・マン副社長(52)の3人が分担して引き継ぐ。会長とCEO(最高経営責任者)を兼ねるカルロス・ゴーン社長(59)は留任する。

 日産は当初、11月5日に志賀氏が記者会見で2013年9月中間決算を発表する予定だった。ところが発表を11月1日に前倒した上に、ゴーン社長が予定していた韓国訪問を急遽キャンセルして横浜市の本社で記者会見した。14年3月期通期の業績が下振れする見通しとなったのを受けて、ゴーン社長自身は「懲罰ではなく、若返りだ」と述べたが、事実上の志賀氏解任と業界内では見られている。

 副会長になる志賀氏は11月1日付、北米日産の会長兼社長のコリン・ドッジ副社長(58)は14年1月1日付で、CEO・COO及び8人の副社長で構成される最高意思決定機関、エグゼクティブ・コミッティ(EC)のメンバーから外れる。2人とも経営の決定権者でなくなるわけだ。代わって中国法人である東風汽車有限公司総裁の中村公泰氏と米州地域上級副社長のホセ・ムニョス氏が日産の副社長となり、ECメンバーに新たに加わる。

 新体制では西川副社長がゴーン社長に次ぐナンバー2となり、業務を執行する経営会議(オペレーションコミッティ)の議長を務める。購買や生産、研究開発の統括を継続するほか中国地域にも責任を持つ。パーマー副社長はグローバル販売、電気自動車(EV)事業を、マン副社長は新興国専用車のダットサン事業などを受け持つ。

 ゴーン社長は記者会見で、次期社長の本命とされてきた志賀氏が外れたのは「若返りのため」と強調したが、新たにナンバー2となった西川氏は志賀氏と同じ1953年生まれで、若返ったわけではない。50歳のパーマー氏、52歳のマン氏が次期社長争いの本命となったとの見方が同社関係者の間では強い。ECのメンバーに昇格した中村公泰氏やホセ・ムニョス氏が対抗馬になる見通しだが、ゴーン社長は来春の第2弾の大型人事も示唆している。

●ゴーン一極集中体制へ

 ゴーン社長はCEOを兼任している仏ルノーでも今年8月、ナンバー2だったカルロス・タバレスCOOを解任した。ゴーン社長は予定されていた米カリフォルニア州での自動運転車の発表会への出席を急遽キャンセルしてフランスに戻り、臨時取締役会でタバレス氏の解任を決めた。

 テストドライバーとして入社し、COOまで上り詰めたタバレス氏はゴーン氏への不満を募らせていたという。日産CEOを兼務するゴーン氏はルノー本社を留守にすることが多く、タバレス氏は自身の権限拡大を要求していたがゴーン氏がこれを拒否。2人の対立が決定的となり、解任につながったとフランスのメディアは報じていた。

 ルノーでは11年に虚偽の産業スパイ事件の責任を取って当時COOだったパトリック・ペラタ氏が辞任し、後任にタバレス氏が就いた。両者とも“ポストゴーン”の有力候補とされていたが、ゴーン氏はトップの座を譲る気はなく、ナンバー2のポストであるCOO職を廃止。新たに最高競争力責任者と最高業績責任者を設け、この2人の責任者をゴーン氏直属の部下とした。

 日産でもナンバー2である志賀COOを解任しCOO職を廃止した。そこから見えてくるのはゴーンCEOのワントップ体制の強化である。今回の日産の新体制はCOOの職務が3人の分業体制となり、権限はゴーン社長に集中する。ナンバー2を必要としないゴーン社長自身への一極集中である。権力はゴーン氏に集中するが、経営責任の取り方は今ひとつはっきりしない。

●自動車業界で一人負けの様相

 ゴーン流経営の神髄はコミットメント(必達目標)経営にある。数値目標を掲げ目標の達成を最も重視してきた。目標を達成できない場合、責任を取ることを求める。執行役員クラスでは懲罰人事が頻繁に行われ、今年4月1日付で国内営業担当の常務執行役員とEV担当の執行役員が子会社に異動となった。12年に日産の国内市場のシェアは2位から5位へ転落し、EVも販売不振が続いたためで、今回の志賀COO解任もコミットメントを達成できなかったからにほかならないと見られる。

 日産は11月1日、13年9月中間決算(4~9月)を発表した。本業の儲けを示す営業利益は2.6%減の2219億円だった。欧州が165億8700万円の営業赤字(前年同期は140億円の黒字)、中南米や南アフリカなどその他の地域は合計で186億7200万円の営業赤字(同46億円の黒字)。中国などアジアは3割の営業減益。北米は販売が好調で売上は36%増だったが、リコール(回収・無償修理)費用がかさみ7%の営業減益だった。国内は営業利益が2倍になったが、他地域の赤字&減益をカバーできず、9月中間期の営業減益は3年連続となった。

 その結果、14年3月期連結決算(日本基準)業績予想の下方修正を余儀なくされた。売上高は従来予想(5月時点)より1800億円少ない10兆1900億円(前年同期比16.6%増)。営業利益は1200億円少ない4900億円(同11.7%増)、最終利益は650億円少ない3550億円(同4.1%増)にそれぞれ引き下げた。自動車業界で一人負けの様相を呈してきた。

 欧州での販売低迷や、インドやロシア、ブラジルなど成長市場と位置付けている新興国の景気が減速し、販売が思うように伸びなかった。世界販売台数の予想も従来より10万台少ない520万台とした。決算発表後の最初の取引となった11月5日の東京株式市場で、日産の株価は前週末比12%安の850円と急落した。7カ月ぶりの安値である。ドル箱の北米で7%の営業減益になったことへの失望の表れだ。ドイツ証券をはじめ多くの証券会社が投資判断を引き下げた。

●コミットメント経営の弊害

 ゴーン社長は「リコールやメキシコ工場の立ち上げ費用などが営業減益の理由」と述べたが、この日の株価急落は「(日産の)クルマに競争力がないという本質的な問題への(投資家の)懸念」(自動車担当アナリスト)である。

BusinessJournal編集部

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