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NHK経営陣、安倍首相カラー強まる〜本格化する次期会長人事、中立報道に懸念の声も

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NHK経営陣、安倍首相カラー強まる〜本格化する次期会長人事、中立報道に懸念の声もの画像1NHK放送センター本部
「Wikipedia」より/Rs1421)

 安倍晋三内閣は10月25日、衆参両院の議院運営委員会理事会で、NHK経営委員に日本たばこ産業(JT)顧問の本田勝彦氏など5人を起用する国会同意人事案を提示し、11月8日、衆参両院で自民・公明両与党などの賛成多数で同意された。今回の5人は安倍首相に極めて近い顔触れであり、これで経営委員12人のうち10人が安倍政権下で任命されたメンバーに入れ替わる。

 今回の人事は、2014年1月24日に任期満了を迎える松本正之・NHK会長(元JR東海副会長)の交代を見据えたものといえる。松本氏を交代させ、「もっと自民党政権の言うことを聞く、イエスマン」(永田町筋)を後任の会長に据えるための布石とみられており、後任会長はNHKの内部昇格ではなく、外部から起用される方向だ。

 本田氏は東京大学の学生の時に、安倍首相の家庭教師を務めた過去もあり、今年6月、経営委員の任期満了を迎えた浜田健一郎・現委員長(ANA総合研究所会長、再任)の後任に、与党は当初本田氏を充てる方針だった。経営委員会は12人の外部委員で構成するNHKの最高意思決定機関。経営委員の任命には、衆参両院の同意が必要となる。本田氏はあまりに安倍首相に近いため、「参院選を控え、野党の同意を得るのは困難と判断。NHK経営委員長への起用を、与党はいったんはあきらめた」(同)。だが、衆参とも与党が絶対多数となり、今回、環境が整ったと判断した。

 安倍首相は過去にも、身近な人物をNHK経営委員長に起用した過去がある。第1次安倍内閣の時には、安倍首相を囲む会「四季の会」メンバーの富士フイルムホールディングス(HD)・古森重隆社長(当時)を委員長に起用した。本田氏は“ポスト浜田”の最短距離にあり、安倍政権が続けばNHK経営委員長に就任することになるとみられている。

 本田氏も「四季の会」メンバーで、同会を主宰するのは首相のブレーンである葛西敬之・JR東海会長だ。小説家の百田尚樹氏は昨秋の自民党総裁選前に「安倍総理大臣を求める民間人有志による緊急声明」の発起人であり、「自虐史観」を一貫して批判している。安倍晋三首相は百田氏の小説『永遠の0(ゼロ)』や出光興産の創業者の出光佐三をモデルにした『海賊とよばれた男』を愛読しており、今年8月には月刊誌の企画で百田氏と対談して意気投合した。

 菅義偉官房長官は10月25日の記者会見で「(安倍首相)自らが信頼し、評価している方にお願いするのは、ある意味で当然だ」と語り、NHK経営委員の人事案が首相主導で練られたことを隠そうともしなかった。JR九州会長の石原進氏は再任だが、再任されるということは安倍首相の考えに近いということだ。

 経営委員会は会長の任命権を持つ。会長の決定には、委員12人のうち9人以上の賛成が必要。逆にいえば、4人が反対すれば、その候補は選ばれない。

●大詰め迎えたNHK次期会長人事

 NHKの後任会長選びは、大詰めを迎えている。経営委員によると、「会長指名部会」を発足させ、次期会長の選考作業を進めている。経営委員が複数の会長候補を推薦した上で、1人に絞り込み、年内にも会長人事を議決する段取りになっている。

「NHKの会長は、JR東海の人事の一環だ」

 JR東海会長の葛西敬之氏が、こう公言したと、会員制経済雑誌で報じられた。現在のNHK会長である松本正之氏は葛西氏の下でJR東海の社長を務めた。11年1月の会長交代時に、人選が進まない当時の民主党政権に葛西氏が“助け舟”を出して送り込んだのが松本氏だった。ところが、葛西氏は元部下の松本氏をNHK会長の椅子から引きずり降ろすことに躍起になっている、と伝わってくる。「原発報道など、NHKは偏向している」といった批判の急先鋒が葛西氏だ。

 安倍首相もNHKの報道ぶりに不満を持つ。首相とNHKの間では、朝日新聞が05年1月、従軍慰安婦に関するNHKの特集番組の内容に当時官房副長官だった安倍氏ら政治家が介入したと報じたのをきっかけに、あつれきが生じた経緯がある。

 首相動静を見ると、安倍首相は頻繁に葛西氏と会っている。放送界が注目しているのは、8月22日の会談。午後8時31分から9時22分まで東京・虎ノ門のホテルオークラで会い、杉田和博・官房副長官が同席した。杉田氏は警察庁の警備局長経験者で、退官後、JR東海の顧問に天下った。葛西氏の意中の人物は、元NHK理事の諸星衛氏だといわれている。諸星氏は政治部長、理事、NHKインターナショナル理事長などを歴任。海老沢勝二元会長の側近として知られている。相次ぐ不祥事で海老沢体制が一新された際に、NHK理事を退任した。

 もしも諸星氏がNHK会長に就任すれば、「時計の針を戻すのか」と反発を呼びそうだ。諸星就任説が出たことから、内部から同じNHK出身で国際・経済畑が長く、ニュースキャスターの経験のある今井義典氏を対抗馬に推す動きが出たりした。しかし、事前に名前が出た人物は外されるのがNHK人事の鉄則ともいわれ、事実、次期NHK会長は民間から経済人を起用する方向で調整が進められている。

 9月2日、東京・南麻布の日本料理店「有栖川清水」で午後6時58分から8時58分まで、安倍首相は葛西氏、古森氏、芦田昭充・商船三井会長、飯島彰己・三井物産社長と会食した。そこでどのような会話がなされたのかは定かではないが、「もし、安倍=葛西人事が強行されれば、NHKは“国営放送”の道をまっしぐらとなるだろう。報道機関として最悪の事態を迎える」(NHK関係者)と懸念する声も聞こえてくる。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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