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連合、問われる存在意義〜賃上げで歩調合わせる政府と経済界、蚊帳の外の連合

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連合、問われる存在意義〜賃上げで歩調合わせる政府と経済界、蚊帳の外の連合の画像19月20日の政労使会議であいさつする安倍晋三首相(「首相官邸HP」より)
 労働組合の中央組織である連合は、10月に開いた定期大会で古賀伸明会長の3選を決めた。連合会長の3選は過去に初代の山岸章氏だけだ。民主党最大の支持母体のトップでもある古賀氏は今夏、腰を痛めて3カ月ほど入院。参院選の指揮を執れなかったが、対抗馬なしの無投票再任である。

 古賀氏は大会で傘下の産別労組に、「働く者の消費マインドを改善させ、デフレ経済の悪循環を打ち切らなければならない」と述べた。来年の春闘では一時金だけでなく賃金を底上げするベア(ベースアップ)要求を積極的に検討してほしいと提案した。

 連合は2010年の春闘以来、統一ベア要求を見送ってきた。2008年秋のリーマン・ショックがもたらした企業業績の悪化で、産別労組に慎重な意見が目立ったためだ。企業収益は改善傾向にある。連合は5年ぶりに統一ベア要求を掲げて春闘を戦う絶好のチャンスだ。

 だが、反転攻勢は難しい。労組が行うべき賃上げ要求権を首相に奪われてしまったからだ。今、連合は存在意義を問われる事態を迎えている。

 政府、経営者、労働組合の3者が雇用や賃金について議論する「政労使会議」が9月20日、首相官邸で開かれた。初回会合には政府から安倍晋三首相と経済閣僚、経済界から経団連の米倉弘昌会長、日本商工会議所の岡村正会頭、労働界からは連合の古賀会長らが出席した。安倍首相は冒頭のあいさつで「経済はデフレ脱却に向かっている。企業収益、賃金、雇用の拡大を伴う好循環につなげられるかどうかが勝負どころだ。産業、労働界も大胆に取り組んでほしい」と述べ、賃上げを要請した。

 3者協議は安倍政権下では初めてだ。首相は国民生活に負担を強いる来年4月の消費税増税実施を控え、政府による賃上げ要請は不可欠と判断した。給料アップを促すことで、経済対策が企業優先との批判をかわしたいとの政府の狙いが透けて見えてくる。だが、賃上げはあくまで企業の判断で行う事柄であり、政府が介入すべきものではないとの見方も強い。

 経営者側は賃上げに慎重だ。日本商工会議所の岡村会頭は「中小企業を中心に、成長戦略がいつまで続くかに慎重な見方がある」と述べた。連合の幹部は、首相が賃金に言及したことに「賃金の話は労使でやるべきものだ」と不快感をあらわにした。連合側には政府に主導権を奪われてしまった悔しさがにじむ。

 というのも、連合は首相と古賀会長によるトップ会談の開催を求めていた。しかし、首相は拒否し続け、逆に経営者も加えた政労使会議を開催した。古賀会長は「賃金交渉は労使の専管事項」と抵抗したが、最終的には参加した。

●現実路線にカジを切る連合

 連合が厳しい立場に置かれた背景には、支持してきた民主党が失速したことが大きく影響している。民主党は衆参2回の総選挙で大敗し、再起の見通しすら立っていない。その一方で、安倍政権は連合が反対する解雇規制の緩和や正社員の在り方など雇用のルールの見直しに積極的だ。民主党の政権復帰が絶望的である以上、労組が望む政策を実現させるためには、安倍政権との距離を縮める現実路線にカジを切らざるを得なかった。

 首相は連合を政労使会議の場に引っ張り出したことで、大きなポイントを稼いだ。分断作戦になるからだ。連合には、自民党を目の敵にしている日教組や自治労という公務員労組が一大勢力を占めている。公務員制度改革は連合傘下の有力労組である自治労にとっては死活問題だが、経営者が入る会議のテーマにはなり得ない。政府は民間労組の賃上げの後押しをする一方、公務員労組が求めている公務員制度改革をテーマから外すことで、連合内を分断することに成功した。

 連合は、10年春闘から4年続けて統一ベアを見送ってきた。遠慮がちに賃上げを要求をする連合に代わり、政府が経済界に対して声高に賃上げを要請する奇妙なかたちになった。

 今年の春闘の立役者は安倍首相だった。春闘のヤマ場である3月13日の集中回答日にトヨタ自動車やホンダなどで一時金(ボーナス)の満額回答が続き、経営不振の電機でも定昇は維持された。同日午後に会見した連合の古賀会長に笑顔はなかった。デフレ脱却を目指す安倍首相が経営側に直接働きかけたことで、大幅な賃上げ回答が相次いだからだ。連合が経営側と交渉を重ねて回答を引き出したわけではなく、連合の影は薄かった。

 首相官邸のフェイスブックには、賃上げを決めた企業に「安倍総理が電話で御礼を述べた」リストが掲載されていた。今年の最低賃金の改定目安は、全国平均で14円。昨年の2倍になった。この引き上げも政府の要請によるところが大きかった。こうした事態がさらに加速すれば、ますます連合の存在意義が問われることになりかねない。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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