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「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第54回

巨額の“不当利得”、高給を食み、堕落の一途をたどった巨大新聞社が、今は経営難に…

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「そういう戦略ですか。つまり、国民新聞としては特殊指定と再販という規制を取っ払い、安値で全国津々浦々に新聞を売りまくり、他社のパイを奪い、自分だけ生き延びようと…」

 吉須が笑いながら揶揄(やゆ)したが、太郎丸はあまり激昂せず答えた。

「安値は間違いじゃ。適正な価格で売りまくるんじゃ。わしのところは紙面には絶対の自信があるけんのう。君らのところのように堕落しよった紙面は作っちょらん。じゃがな、一社独占みたいにするわけにはいかんのじゃ。民主主義には多様な意見の表明が必要じゃ。じゃけん、新聞社という器は残し、再生させよる。それに異論があるといいよるんかい?」

「理想はそうでしょうが、再生なんて無理ですよ。それでも、やるというなら順番が逆です。器を残す前に人を替えることでしょう。僕は日本にはジャーナリズムなんて根付かないじゃないかと思っているんです。国民新聞はましかもしれないが、それだって会長がこの世からいなくなったらどうなるか…」

 吉須は皮肉っぽくこういうと、ため息をついた。

「順番の話は待っちょれ。ここでうまい飯を食いよったら、場所を替えて話しよるつもりじゃ。今日はもう一軒、付きおうてもらうけん。ええな」

 太郎丸は徳利を持って、二人に酒を勧めた。今度は深井も盃を差し出した。

「これから『ご飯』、『果物』、『菓子・茶』が出てきよる。その間に順番の話以外に聞きよりたいことがあれば答えちゃるぞ」
(文=大塚将司/作家・経済評論家)

【ご参考:第1部のあらすじ】業界第1位の大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に合併を持ちかけ、基本合意した。二人は両社の取締役編集局長、北川常夫(大都)、小山成雄(日亜)に詳細を詰めさせ、発表する段取りを決めた。1年後には断トツの部数トップの巨大新聞社が誕生するのは間違いないところになったわけだが、唯一の気がかり材料は“業界のドン”、太郎丸嘉一が君臨する業界第2位の国民新聞社の反撃だった。合併を目論む大都、日亜両社はジャーナリズムとは無縁な、堕落しきった連中が経営も編集も牛耳っており、御多分に洩れず、松野、村尾、北川、小山の4人ともスキャンダルを抱え、脛に傷持つ身だった。その秘密に一抹の不安があった。

※本文はフィクションです。実在する人物名、社名とは一切関係ありません。

※次回は、来週12月6日(金)掲載予定です。

BusinessJournal編集部

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