価格の安さを売りにした飲食チェーン店やスーパーなどではなく、今回の騒動がいずれも高級志向を押し出していたホテルや百貨店から噴出したため、このように激しい論調が主流となっているのだろう。
一方、「メディアや世間は批判し過ぎ」の12.7%と、「批判の仕方や内容に疑問を感じる」の12.6%の合計は25.3%となっているため、約4人に1人はマスコミや世間の糾弾方法を快く思っていないようだ。とはいえ「批判すること自体に反対」と回答した人はわずか0.5%にとどまっているため、大半の人々は今回の食品偽装問題に少なからず憤っているといえよう。
●批判の不公正さ、社会の風潮に疑問の声も
では次に、自由回答形式で寄せられた回答者のコメントから、人々の具体的な意見をを見てみよう。
「もともと安い店なら仕方ないが、高いお金を払って行くような店ばかりなので批判されてしかるべき」(30代男性)というように、やはり高級を売りにしたホテルや百貨店で発覚したことを問題視する意見は多数だったが、「意図的と認めていない点が最悪」(30代男性)、「知識不足などと言っているが、知識のない料理人の料理なんて怖くて食べられない」(20代女性)など、会見での企業側の言い逃れとも受け取られかねない不誠実な対応に、不快感を抱いている意見も多かった。
一方、
「偽装の頻度や度合いが無視されていると思う」(20代男性)
「最初だけ批判されすぎ。芋づる式に今なら批判されにくいと思って出てきた店も、最初と同じ、またはそれ以上に批判されるべき」(50代女性)
「自主的に調査して公表した阪急阪神ホテルズは酷く扱われ、そのあと公になった店舗などではそれほど大事にはならなかった。このギャップに疑問がある」(40代男性)
といった意見に代表されるように、同程度の誤表示や偽装を行っていたとしても、報道されたタイミング、公表したタイミングによって、批判にさらされる度合いに大きな違いがあったのは事実。
阪急阪神ホテルズは、出崎弘前社長が10月24日の記者会見で「偽装ではなく、あくまで誤表示でございます」と主張したことに批判が集中したが、確かに真っ先に自主調査した同社ばかりが矢面に立たされていた感は否めない。
また、「社名や店名を挙げるよりも食材のブランド信仰の風潮を批判するほうがいいと思う」(20代女性)といった、そもそもブランド志向が強すぎる日本人の食文化に警鐘を鳴らす声や、「よくない事ではあるが、従業員の事を考えるとリストラにつながらないか心配」(40代女性)というように、批判にさらされた結果、経営が傾き、偽装に関与していない末端の社員やアルバイトスタッフなどの雇用問題に発展してしまうことを懸念する声も見られた。
今回の調査ではさまざまな意見が入り乱れる格好となったが、食品偽装という問題がそれほど複雑かつ根深い問題であるがゆえなのかもしれない。
(文=昌谷大介/A4studio、調査協力=マクロミル)