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稲盛和夫「アメーバ経営」非難と称賛だけでは見落とす本質とは~合理性と非合理性の調和

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 紀伊國屋書店の高井昌史社長は「売れたと言ってもすぐに消えていく本が多い中で、企画から7年待ち続け完成したこの本が、数少ないロングセラーの一つになっているのは、16年連続で前年実績を割っている出版業界にとっては大変喜ばしいこと。これからは日本だけでなく、海外市場でもさらに部数を増やし、クールジャパンを体現してほしい」とエールを送る。

 今年9月に発売された『燃える闘魂』(毎日新聞社)も10万部を超す勢いだが、今のところ『生き方』が稲盛本の中では突出した存在感を示す。中小企業経営者を対象に「稲盛哲学」を教授する「盛和塾」でも、この本が事実上のバイブルとして読まれている。サンマーク出版の編集者は「稲盛哲学をトータルにまとめた本が意外にもなかった。その隙を突いた格好です」と勝因を説明する。

 盛和塾に参加している経営者によると「私たちにとって稲盛さんは神です。外の方には温厚な表情で接しておられますが、経営を指導するときは別人かと思われるほど厳しい」という。

 その厳しさは、10年から2年かけて企業再生支援機構の支援のもとに断行されたJALの再建でも如何なく発揮された。これまで基本的に人員削減を行ってこなかった稲盛氏も、JALの再建では血税がつぎ込まれたこともあり、いわゆるリストラを断行した。早期退職した人たちの感情は悲喜こもごも。その中には、「元JALキャビンアテンダント」と略歴に書き活躍している人も少なくない。同じく一度破綻したダイエーの元社員があまり過去を語りたがらないのとは対照的だ。JALを退職した人からは次のセリフを耳にする。

「辞めてわかりましたが、恵まれた良い会社でしたよ」

 破綻寸前でも、社員が「恵まれた良い会社」と思っていたJALは、企業文化が異なる京セラを経営してきた稲盛氏にとって「異国」だった。JAL社員から見ても、稲盛氏は黒船から上陸してきたペリー提督のように見えたのではないだろうか。しかし、異国で永住しても稲盛氏はまったく変わらず、「稲盛哲学」の軸はぶれなかった。

●非合理性を重要視する経営

 では、稲盛哲学に裏付けられた経営とはどういうものなのか。ここであらためてレビューしておこう。

「稲盛本」のラインアップを見ると、「経営」だけでなく、いわゆる「稲盛哲学」について書かれたものが少なくない。時を経るに従い、後者の比率が高まる。つまり稲盛和夫という「人」に世の中の関心が寄せられている。「経営は人なり」と主張する経営者や評論家、雑誌は少なくない。「人」という場合、性格などの属人的特性を指している。

 実際に稲盛氏にお会いしていると、多くの成り上がりに見られる傲慢さが感じられない。稲盛氏は読書からだけでなく、得度し悟った「人の弱さ」を心に据えているからだろう。稲盛氏の精神的支柱である仏教だけでなく、キリスト教も人は弱い存在であると教えている。文化圏を形成してきた伝統的宗教には、人を暴走させないための教えが多い。稲盛氏は80歳を超えた今も、自身の煩悩と戦い続けているように見える。

 稲盛氏を思想家的経営者として見ている人が多いが、思想の人である以前に、実利の人なのである。経営学のテキスト的にいえば、経営者は両方とも備えておかなくてはならない。だが、稲盛氏どころか、彼が敬愛した松下幸之助氏でさえ、起業当初から高邁な経営哲学を築いていたわけではない。経営が軌道に乗るまでは実利的、合理的に考えていたのである。ところが、その過程で泥水を飲みながら、人が織りなす「経営は合理的ではない」という側面にも高い関心を示すようになった。結果から洞察すれば、先に合理性があったからこそ、非合理性の重要性に気づき相乗効果を発揮できた、と考えられる。

●アメーバ経営と集団経営方式

 その集大成が「アメーバ経営」と呼ばれる独特の経営管理手法である。「アメーバ経営」「京セラアメーバ経営」は、京セラの登録商標になっており、他社に対してコンサルティングビジネスも展開、現在では300社以上の企業が採用している。

BusinessJournal編集部

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