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産業医は社員の敵か?企業向け社員のヘルスリスク管理サービスで過労死を防ぐ

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山田洋太氏(以下、山田) そもそも「産業医」は誰のためにあるか知っていますか?

–社員のためであってほしいです。

山田 いいえ。違います。産業医は企業のためにあるのです。産業医は、社員のヘルスリスクを軽減するために企業が導入しているからです。

–でもそれならば、相談する我々のような従業員からしたら、人事部の内通者でしかないですよね。産業医に相談したら、ボーナスの額が減ったり、左遷されてしまったり……と嫌なことばかりが頭をよぎりますが?

山田 そうですね。世間一般の皆さんには、あまりよいイメージはないのかもしれません。でも産業医は、本当は「お買い得な医者」なはずなのです。企業側にしても、ヘルスリスクにさらされている社員を見つけるのに必死なのですから、正直に診察を受けてみれば、お互い幸せになれるのです。

●ビッグデータとクラウドで、ヘルスリスクに向き合う

 なるほど。企業側も、よい産業医の見分け方がわからないし、そもそも見分ける時間もなく、近くの適当な医師を産業医として迎え入れ、きちんとした管理ができていないのが実情のようだ。しかし、iCAREがチャレンジしようとしているのは、よい産業医を派遣することではない。

 企業側にしても、高い成果を出しているにもかかわらず、仕事を休みがちな社員や、忙しいプロジェクトにばかりアサインされる社員を放っておけるハズはないのだ。山田氏は、現状の産業医について、こう指摘している。

山田 実際の産業医は、医師会に紹介してもらったり、企業近くの医院の医師と契約することが多いので、例えば、皮膚科の専門医が、産業医として社員の内科の診察をすることもあります。また本来、社員の情報は企業の持ち物ですから、産業医が私物のPCにカルテを保存したり、紙カルテを持ち帰ることは、個人情報の流出に当たるのです。

–言われてみれば、企業が契約した産業医なのだから、情報が企業の持ち物なのは明白ですし、個人情報の保護の観点からしてもカルテの持ち出しは良くないですね。

山田 そこで、私は、共同最高経営責任者の飯盛と共に、「Catchball」のサービスを立ち上げようと思いました。現在私自身も「Catchball」を使って企業の産業医として活動しています。

飯盛崇氏(以下、飯盛) どんな企業でも、社員のヘルスリスクの管理はしなければならない。大企業であれば、自社内に管理システムがすでに構築されているかもしれないが、イニシャルコストで数千万、運用費で毎月数百万のコストがかかっているのです。しかも、他業界や他業種とのヘルスリスクの比較もできない現状では、自社の社員のヘルスリスクを相対的に評価できないのです。そこで、「Catchball」を使って、産業医が普段診療に使うチェックリストなどを標準化し、クラウドにサービスを展開することで、個人情報を医師が持ち歩かず、かつ人事がいつでも参照できるようにしました。

産業医は社員の敵か?企業向け社員のヘルスリスク管理サービスで過労死を防ぐの画像4
産業医は社員の敵か?企業向け社員のヘルスリスク管理サービスで過労死を防ぐの画像5「Catchball」の業務画面。見た目は、企業が使っている業務アプリケーションとほとんど変わらないが、社員ごとのカルテを一覧表示したり、個別に詳細なカルテを入力する機能で、産業医をサポート

–「チェックリスト」とは、どういうものですか?

山田 相談者をサポートするための定量的な指標をまとめた情報です。例えば、睡眠時間や残業時間を記録するなど、一般的に病院の初診時に記入するような問診票の情報を数値化します。

飯盛 定量化された数値があれば、いわゆる「ビッグデータ」として、過労死してしまった社員の傾向を分析したり、同様の傾向にある社員をピックアップして、重点的にサポートできるようになります。

山田 今はまだ「Catchball」を導入してくれている企業は5社だけなので、分析できるデータの蓄積が課題ですね。

–産業医を紹介したり、バックアップするようなサービスは行わないのですか?

山田 産業医の紹介サービスも、自社で行えるように検討しているところです。しかし今は「Catchball」を企業や産業医の先生方に知ってもらい、使ってもらうことを主な目標にしています。労働者の皆さんにも、企業の人事部に「Catchball」の存在を認知してもらえるように働きかけていただけたらうれしいです。

ありがとうございました。

「医師」のサービスということで、労働者の診察結果を企業に通達していくだけのサービスを想像していた。しかし、実際は標準化されたデータを使って、企業にも労働者にもメリットがあるようなサービスを提供していた。企業に勤める一般の社員が直接使うサービスではないから、いまいちピンと来ないかもしれないが、1社でも多くの企業に導入され、過労死者を1人でも少なくしてくれることに期待したい。
(文=久我吉史)

BusinessJournal編集部

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