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変調来す日産の内幕、なぜ一人負け?「ゴーン・ショック」でくすぶるルノーとの提携解消

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●日産、脱ルノーに向けた動きも

 13年11月18日夕、横浜市の日産自動車本社1階の「グローバル本社ギャラリー」で、日産創立80周年を祝うパーティーが開かれた。11月1日にCOO職を解かれ副会長に就任したばかりの志賀俊之氏を、元日産社長の塙義一氏ら有力OBが呼び止めて、「おまえ、会社が変にならないように最後まで責任を持てよ」と異口同音に語った。日産でもCOOはなくなり、ゴーンのワントップ体制になった。同社内からは、この体制に危機感を抱いた若手幹部社員らが、ルノーが保有する日産株式を買い戻す動きを見せ始めているという情報も聞こえてくる。

 加えて、日産OB幹部らの間で検討中だとといわれているのが、ルノーの出資比率を引き下げる工作だ。ルノーは日産の発行済み株式の43.4%を保有するが、この持ち株比率を拒否権の及ばない33.4%未満に圧縮し、ゴーン氏以外の経営トップの下で日産として経営の独自性を取り戻すというシナリオだ。ルノーCEOのゴーン氏にとっても、保有株の売却収入を原資にしてルノーの経営立て直しに専念できるという大義名分も立つ。

 ルノーが保有している日産株は19億6203万株。出資比率を33.4%未満に下げるには4億5400万株を市場で売却させるか、相対で日産が自己株として取得すればいい。現在、同社株価は900円前後であるため、単純計算でルノーには4100億円のキャッシュが転がり込む計算だ。

 ルノーの日産への投下資本は、第三者割当増資とワラント債の引き受けで、合わせて66億ユーロ。現在、持っている日産株式の時価総額は200億ユーロ。差し引き134億ユーロのキャピタルゲイン(日産の株価上昇による利益)を得た。日産からのインカムゲイン(配当金)は30億ユーロほどだ。円安が進んでおり、現在の対ユーロ相場の1ユーロ=140円で計算してみると、9240億円を投資して2兆2960億円の利益を得た勘定になる。ルノー側から見て、投資は大成功だったということになる。

 ルノーの業績が良かったのは、日産を買収した当初の、ほんの一時期だけ。その後は、ずっと低迷が続いている。今のルノーは、日産の配当金でなんとか生き永らえている状態だ。13年3月期にルノーが吸い上げた資金は、配当金だけで454億円。14年同期は545億円に達する見通しであり、日産からの配当金と持ち分利益がなければ赤字だ。

 日産株を売れば経営権を失うものの、売却による特別利益でルノーの経営再建のための原資を得ることができる。ルノーの大株主であるフランス政府も、国内経済に大きな影響を与えるルノーが立ち直ってもらわなければ困る。だが、周囲に危機感が高まっている一方、ゴーン氏もルノーも、“打ち出の小槌”である日産の経営権を手放す気はないとみられている。

 日産は13年9月中間決算の発表時点で、14年3月期決算(通期)の業績について、日本の大手自動車メーカーの中では唯一、下方修正になることを明らかにし、市場関係者やメディアからは「ゴーン・ショック」といわれた。かつての「ゴーン・ショック」は構造改革断行による業績のV字回復に対する称賛だったが、今回は円安の追い風が吹く中での失速に株式市場が驚いたわけだ。この決算発表会見では志賀氏のCOO解任も同時に発表されたが、記者からゴーン氏には「晩節を汚すという日本語を知っていますか」という厳しい質問も飛んだ。

 変調を来し始めた日産の動向に、注目が集まっている。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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