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ワタミ過労死事件、遺族が渡邉元会長らを提訴~会社側「会社に責任ないが、金は払う」と主張

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【申立人の主張】

「故人の死亡については、神奈川労働者災害補償保険審査官により、業務起因性が肯定されている。しかしながら、業務起因性の有無と使用者の安全配慮義務違反の存否は直結しない」

「本件では、一定程度の長時間労働は存在したものの、休憩の設定や定期的な面接等により十分な対応・措置を採っていたものであり、申立人に安全配慮義務違反は存しない」

「とはいえ、申立人は、故人が申立人における業務に起因して死亡したと認定されたことを極めて重く受け止めており、相手方らに対し、一定程度妥当な金額を支払う意向である。そこで、相当な示談額を確定するべく協議を行いたい」

 このような会社側の姿勢について豪さんは、「因縁をつけられたから、会社に責任はないが示談金を払いますという態度ではないか」と憤る。

●事実説明を求める質問に「ご意見として承る」

 民事調停は、示談額を確定したい会社の狙いに反して、森夫妻が質問し会社側が回答するという形式で、美菜さんの労働実態を把握することが当初の目標となった。

 これは、「(美菜さんが)なぜ死んだのかわからないままでは、金銭の話し合いには応じられない」という夫妻の意向に、調停委員が賛同したからだ。真摯な回答による実態解明なしに業務改善はできないという思いもあったという。ワタミ側も、調停を申し立てたことを伝える12年12月5日付の文書で、「貴殿らからの質問事項に関しては、同調停内において真摯に対応させていただきます」と述べていた。

「貴殿らからの質問」というのは、森夫妻が同年11月1日付の申入書でワタミ側に提出した、「美菜さんの労働実態が入社前の説明とまったく違うのはなぜか」などの11項目の質問を指す。しかし、ワタミは1回目の調停に回答を持参せず、調停委員の説得によって13年1月29日付でようやく最初の回答文書を出した。

 回答文書は「ワタミフードサービス株式会社代表取締役社長桑原豊」の名前で出ており、代表者印が押されている正式なものだ。しかし、各質問に対する回答文面は数行から10行程度と短く、実態解明につながるような十分な説明にはなっていなかった。

 到底納得できない森夫妻は、再質問、再々質問と重ね、最終的な質問数は83個にも上った。会社側が「質問には調停内で真摯に対応する」と約束し、遺族として初めてまともな説明を受けるチャンスなのだから、質問を重ねるのは当然のことだ。

 ところが、調停開始から半年近く過ぎた13年4月下旬になると、労働実態や会社方針の説明を求める森さんの質問に対して、「貴重なご意見として承らせていただきます」と回答し始めた。

●配慮義務違反はなかった、とするワタミ

 質問に対する回答文は次の通り。

【質問】
「娘は亡くなる前日の早朝、研修に参加させられました。充分な睡眠もとれずに、参加しています。これで、健康や安全への配慮があったと言えますか。社員が十分に休憩をとれるように健康に配慮して行うべきものです」

【回答】
「夜間勤務が中心となる外食産業の社員については、研修時間を勤務時間と隣接しない日中の時間帯にした場合のほうがマイナスの影響があり、勤務時間帯に近い早朝に行っております。しかしながら、いただいたご意見は、貴重なご意見として承らせていただきたいと思います」

【質問】
「娘は閉店後も電車の始発まで店舗で待たなければならなかった。横になって休むこともできず、ただ時間を過ごす苦痛に耐えなければならなかった。(電車で通わなければならない場所にある)社宅のために、いかに娘の健康が損なわれたか考えてみてください。それを、健康や安全への配慮義務違反はなかったと言うのですか」

【回答】
「社宅に関するご指摘は貴重なご意見として承らせていただきますとともに、(略)この点については改善を図っておりますので、ご理解をいただきますようにお願いいたします」

【質問】
「長時間の深夜勤務の連続で疲れた上に、休む間もなくレポートを書かせることには、社員の健康への配慮がないのは明らかです。真面目な娘は、レポートにも取り組み、ひどく体力を消耗し、健康を損ないました。このレポート書きにも、健康と安全の配慮の姿勢は見られないように思いますが、どのようにお考えか、説明をお願いします」

【回答】
「レポートは任意提出ですので、その作成時間は勤務時間外として扱っております。また、レポートの内容に関しましては、弊社は社員を単なる労働契約だけの関係ではなく、家族だと考えていることから、その成長を願い、自己研鑽のための機会を提供し、フィードバックするために、そのような内容としています。ご指摘のような、社員を管理するために、考えなくさせるためのものではございません。なお、いただいた数々のご指摘につきまして、貴重なご意見として承らせていただきます」

BusinessJournal編集部

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