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「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第59回

腐敗の元凶、巨大新聞2社の社長を引きずり下ろす~新聞業界のドン、勝負は株主総会

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「つかぬことを聞きますが、会長は僕ら二人に手紙を出しませんでしたか」
「なんのことじゃ?」

 太郎丸は怪訝(けげん)な顔つきをして左脇の深井に目を向けた。

「そうだ。あの“差出人不明の手紙”、会長が出したんだ。そう考えると、辻褄(つじつま)があう」

 吉須が同調したが、太郎丸は動じなかった。

「なんのことじゃ。“差出人不明の手紙”とか言われちょっても、わしにはわからん」
「それじゃ、どんな手紙か話しますよ」

 自分宛てと吉須宛ての両方の手紙を読んでいる深井が説明を始めた。手紙の入っていた封筒は日本報道協会の社用封筒だったこと、内容は二人にジャーナリズム再生へもう一働きしてほしいと要請していること、などを話した。

「そうですよ。あまりにタイミングがよすぎるじゃないですか。僕らのところに“差出人不明の手紙”が届いたのが先々週の火曜日ですよ。そしたら、今度は3日後の金曜日には会長が会いたいと言ってきたわけです。それが今日じゃないですか。何の用事かと思っていたら、ジャーナリズム救済のために協力しろ、でしょ」

 深井の説明を待って、吉須が太郎丸を疑う根拠をまくし立てた。太郎丸は少し不愉快そうな表情を浮かべただけで、変わらぬ調子で答えた。

「そりゃ偶然じゃろう。お主らの推測が成り立たんとは言わんが、わしは“差出人不明の手紙”とやらは全く知らんぞ」

 しかし、吉須は引き下がらなかった。

「手紙に1枚の付属資料があって、僕のには日亜の不祥事やスキャンダルを列挙、概要がありました。深井君のには大都のが要領よくまとめられているんだよな。そうだろ?」
「ええ、僕は自分宛てだけじゃなくて、吉須さん宛てのも借りて読んでいます。僕らのことをよく調べていて、手紙もそれをちゃんと書き分けているんです。手が込んでいるのは付属資料だけじゃないです」
「そうだよな。僕らのこと、よく調べているんです。それも、会長くらいしか、知らないんじゃないか、と思われることも書かれているんですよ。たとえば、今の僕らの待遇とかね。それでもしらばっくれるんですか」
「とにかく、知りよらんものは知りよらんのじゃ」

 優秀な新聞記者ほど執拗(しつよう)なのは当たり前だが、今度は吉須に代わって深井が問い質した。

「会長は僕らに大都と日亜の不祥事スキャンダルについて『深層キャッチ』と『週刊真相』の取材を受けろ、というわけですよね。それには手紙についていた付属資料は好都合です。資料のコピーを渡せば事足りる内容です。今日も僕は自分宛てのだけじゃなくて、吉須さん宛ての手紙も返そうと思っていて持っているんですよ。会長、手紙を見ますか」

 深井は笑いながら背広の胸ポケットに手を入れると、太郎丸が両手を上げた。

「そんなこと、せんでええわ。“手紙”を誰が出しよろうと、どうでもええじゃろ押し問答しちょっても始まらん。好都合の資料がありよるなら、渡しゃええじゃろ。わしの頼みを聞きよってくれよるなら、いずれ、すべて話す時がきよるじゃろうから、どうじゃ」

 太郎丸はお湯割りのグラスを一気に飲み干し、そうまくしたてると、炬燵台を握り拳で叩いた。苦笑いを浮かべた吉須は腕時計に目を落とし、脇の深井と顔を見合わせた。

「もう10時ですね。わかりました。取材には応じましょう。それでいいな。深井君」

 深井は胸ポケットに入れた手を出し、自分のグラスを取った。そして、ビールを注いだ。

「深井君もそういうことですから、安心してください。でも、取材はいつ頃ですか」
「ふむ。来週くらいには取材の申し込みがありよるはずじゃ。わしの紹介じゃといいよるはずじゃから、『聞いています』と言って受けてくれや。頼むぞ。よし、じゃあ、お開きにしよるか」

 太郎丸が手を叩いて、若女将を呼ぼうとした。

「ちょっと待ってください。今日の会長の話、すべて引き受けたわけじゃないですよ」

 太郎丸が手を止めたのをみて、吉須が続けた。

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