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闘うジャーナリスト・佐々木奎一がゆく! ワーキングクラスの被抑圧者たち 第13回

リコー、社員“島流し”訴訟で敗訴、退職強要の実態露呈~大企業の追い出し部屋に一石

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●キャリアに見合わない異動の無効性

 その後、午後2時から厚労省の記者クラブで原告団が会見を開いた。

 会見で特に印象的だったのは、原告のA氏だった。技術開発者であるA氏は、これまでリコーで100件以上の登録特許を取得した者に与えられるパテントマスター賞を受賞、また、皇族からお言葉を受け、内閣総理大臣、文部科学大臣、経済産業大臣などが出席する中で、公益社団法人発明協会より全国発明表彰を受賞する栄誉に浴したこともある。

 さらに社内には、優秀な社員としてその名を永遠にたたえるための金色のプレートに、A氏の名前が刻まれている。そのA氏が、ある日突然、物流倉庫に飛ばされ、人材派遣会社の日雇いの若者たちに交じって、量販店へ送る製品を段ボールに梱包したり、真冬の寒い中、重い商品を持ち運ぶ、といった畑違いの肉体労働に従事するようになってしまった。

 そんなA氏は、今回の勝訴判決を受けて、こう語った。「創業精神である『三愛精神』(人を愛し、国を愛し、勤めを愛す)をモットーとする、人間を尊重する会社だったので、今回の判決の結果を真摯に受け止めて、控訴しないで我々を元の技術者としてのキャリアを生かせる職場に戻していただきたい、と切に願っています」

 ほかに会見では、原告の所属する東京管理職ユニオンの鈴木剛書記長が、「いま、他の大手企業の40~50代の会社員からも、似たような追い出し部屋に飛ばされたという相談がたくさんきている。特に(08年の)リーマンショック以降は、賃金を下げないで、『あなたのための出向、配転』といって追い出すかたちが目立って増えた。団体交渉ではリコー側は『一円も給料下げていないじゃないですか。解雇されるよりマシでしょ。働けるんですから』と言っていた。パナソニックなど名だたる企業が、給料は下げていないが、『あなたの仕事は、あなたの就職先を探すことだ』などと、判で押したように同じスキームで退職を強要している」と指摘した。

 また、今回の判決は出向の無効だったが、配転についても同じ枠組みであると鈴木氏は指摘し、「多くの人事担当者は、会社側が自由に社員を配転させることができると思っている。だが、そうではない。今回の判決により、キャリアに見合っていない追い出し部屋への異動は許されない、と司法は断じている」と語った。

 鈴木氏の言うように、今回の判決が横行する追い出し部屋の歯止めになることを期待して、今後の動向に注目したい。
(文=佐々木奎一/ジャーナリスト)

●佐々木奎一(ささき・けいいち)
「My News Japan」を中心に、「別冊宝島」や「SAPIO」「週刊ポスト」などで執筆するジャーナリスト。企業のパワハラや不当解雇などの労働問題を中心に、政治家の利権や原発問題に絡むメディアの問題なども取材をする。これまでに、「キユーピー」のパワハラ問題の追及や大企業の障害者雇用に関する問題提起、バンダイナムコの社員うつ病問題などを追及して話題となっている。

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