さて、そもそもどうしてこのような内容の番組を、日本を代表する企業が提供してしまったのだろうか。提供番組の広告セールスを行う時に、広告代理店は企業の宣伝部に対してセールスシートを持って説明する。時には、台本を持って説明することもあるくらいだ。企業は、内容についてはある程度、納得して提供を決定しているはずだ。単に視聴率が良い悪いだけで決めているわけではない。特に今回のケースでは、舞台が児童養護施設というデリケートな設定だ。番組内容に関しては、通常よりもしっかりと確認をした上で決定しているはずなのだ。

 推測するに、広告代理店から提供企業に対して、「第1~2話を含め前半は嫌な内容だが、ラストに向けて明るい内容になっていく」という内容説明がされていたのだろう。ただ前半の内容への世間への批判が、提供企業や広告代理店が想定したものよりもはるかに厳しい状況になってしまったということだ。放送継続を決定している日本テレビと広告枠を売った広告代理店は、提供企業への説明に奔走してるはずだ。

 ただ、一度提供表示をやめた段階では、番組内容がいかに良くなろうと、再表示によって視聴者からの批判から炎上につながる危険性も高い。このまま提供表示なしでいく可能性もある。さて気になるのは、費用はどうなるのかということだ。番組内容に納得して提供している以上、通常は提供企業が払わざるをえない。ただ、提供企業が年間に数十億円、数百億円の広告費を持つ大企業ばかりであるから、日本テレビも広告代理店も難しい対応が迫られる。

●『明日、ママがいない』が放映された背景

 これだけ物議を醸す内容でも、放映が決定され、大企業が提供についたことには2つの理由が考えられる。

(1)過激化するテレビ番組内容
(2)脚本家・野島伸司氏の存在

 まず(1)に関してだが、2000年に公開された映画『バトル・ロワイアル』(東映)や05年に放映された人気連続ドラマ『女王の教室』(日本テレビ系)をはじめ、過激な内容のコンテンツは年々増加している。暴力や不倫など、かつてタブーとされていたものも放映されるようになった。少しくらいタブーであってとも内容にエッジが立っているほうが良いと、テレビ局関係者も感じているだろう。暗い内容ながら『家政婦のミタ』(同/11年)が大ヒットとなる一方、俳優の中でも最も高視聴率が期待できるといわれていた木村拓哉主演の『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~』(TBS系/13年)が予想より低視聴率に終わった。このような時代の流れを踏まえ、より強い刺激を視聴者に届けることで高視聴率を獲得しようという狙いが、テレビ局側にあったのではないだろうか。

 次に(2)に関してだが、脚本家・野島氏の存在は大きい。1990年代の人気脚本家であった野島氏。『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系/1993~97年)、『101回目のプロポーズ』(同/91年)などのような作品の脚本家としても有名だが、それとともに、世の中に物議を醸したドラマ『高校教師』(TBS系/93年)、『人間・失格』(同/94年)、『家なき子』(日本テレビ系/94~95年)の脚本や企画・原案に関わった作家としても有名だ。タブーに触れることで、ギリギリのところで社会的なインパクトを残す実績をおさめてきた野島氏が本作品にも関わるということは、広告主の提供決定に少なからず影響はあったはずだ。

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