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ソニー、深まる視界不明瞭と、赤字10年目迎えるテレビ事業の呪縛~株価低迷の背景とは

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 平井CEOの発言を受けて1月9日の東京株式市場でソニーの株価は69円高と急伸した。しかし、10日は59円安。投資家はソニーのエレクトロニクス部門の収益改善に、まだ懐疑的なのだ。

 具体的には、中国の携帯電話首位の中国移動通信集団(チャイナ・モバイル)に昨年来から専用端末を供給。米携帯電話4位のTモバイルUSに、新型スマホの出荷を始めた。TモバイルUSは、ソフトバンクが2兆円超で今年春にも買収する方針を固めている。ソフトバンクの考え方次第で、スマホの戦略は大きく変わるだろう。

 中国市場でのスマホの価格競争は、中国メーカーの値下げ合戦で過熱の一途をたどっている。しかも、中国、米国の両市場への参入は始まったばかりだ。世界のスマホ市場では韓国サムスン電子と米アップルが2強。サムスンの世界シェアは31.4%、アップルは13.1%だ。3位は中国の華為技術(ファーウェイ)だが、3位以下は大きく引き離されており、ファーウェイ4.8%、同じく中国のレノボ・グループ4.7%、韓国のLG電子4.6%(いずれも2013年7~9月期の実績、IDC調べ)と団子状態。混戦の中でソニーは現在7位で3.5%に過ぎず苦戦中だ。ソニーの上にはもう1社、中国の企業がいるし、3%台にはソニー含め3社がひしめき合っている。平井CEOが掲げる「世界第3位」の実現は、そう簡単ではない。

●相次ぐ人員整理でも出口見えないテレビ事業

 ソニーのテレビ部門は依然赤字だ。テレビや不採算のパソコンについては、愛知県などに5つの工場を持つソニーの全額出資会社で製造子会社、ソニーイーエムシーエス(EMCS)が、早期退職優遇制度を使い、あらためて1月から人員整理を始めた。40歳以上で勤続10年以上の中堅社員や管理職を対象に、1月6日から3月末まで希望退職を募集する。同社の社員数は約5000人だが、削減目標値は公表していない。

 人員削減を行う5工場は幸田(愛知県幸田町)、長野(長野県安曇野市)、稲沢(愛知県稲沢市)、湖西(静岡県湖西市)、木更津(千葉県木更津市)。ソニー幹部は「エレクトロニクス事業には今の人員規模を支えられるだけの需要がないため、適切な事業規模にする必要がある」と打ち明ける。毎年、エレクトロニクス部門は販売計画の下方修正が続いており、ソニー自身も適切な事業規模を把握しかねているのが実情だ。

 ソニーは12年度、エレクトロニクス事業の人員について、早期退職制度を活用して国内で1万人削減した。13年度も同事業の収益の回復が予想より遅れているため、追加削減に踏み切ったわけだ。平井CEOは13年度のエレクトロニクス事業の黒字転換を必達目標に掲げてきたが、テレビ、デジタルカメラ、パソコンなど主力製品の販売が予想以上に苦戦している。ソニーの人員削減は、05年にハワード・ストリンガー氏がCEOに就任以降、累計で3万人を超えたとみられる。

●テレビ事業撤退という選択肢

 一時はパナソニックと世界首位の座を争い、稼ぎ頭だったソニーのテレビ事業は、サムスン電子をはじめとする韓国勢の台頭で、13年3月期まで9期連続で営業赤字を続けている。14年同期も赤字から抜け出せないとの見方が強まっている。

 平井CEOは13年初頭に「(テレビ事業に)14年から攻めに入る」とテレビ事業の黒字化を宣言したが、13年は年間販売台数の目標を2度下方修正し、14年3月期の黒字化に赤信号がともっている。切り札として期待している4Kテレビも、中国・韓国勢の相次ぐ参入で価格競争の様相を見せ始めているが、テレビのリストラは人員削減を中心に相当進んでおり、かつてのような巨額の赤字は出なくなった。相対的に有利な条件で、テレビ事業の統合・再編に手をつけられる状況になってきたといえる。また、パナソニックがプラズマテレビからの撤退を決断したように、ソニーもテレビ事業からの撤退を決断すべきとの声も強い。そうすれば、利益体質への転換期待が高まることで、株価が上昇する可能性も出てくる。

 ソニーは今年、文字通りの正念場を迎えている。
(文=編集部)

【続報】

●リストラ奏功、最終黒字

 パナソニックは2014年2月4日、13年4~12月期連結決算を発表したが、3年ぶりに最終黒字に転換した。また、半導体事業の分社化を発表した。4~12月期の最終損益(米国会計基準)は2430億円の黒字(前年同期は6238億円の赤字)で、4~12月期の最終利益としては過去最高となった。カーナビなど車載機器が自動車メーカーの生産拡大で伸びた。住宅設備など国内でも伸長した。円安で円ベースの売り上げがカサ上げされた効果もあり、売上高は4%増の5兆6798億円になった。ヘルスケアの子会社売却で一時的な利益も計上された。

 14年1~3月期にリストラ関連の費用が発生するため、14年3月期の最終損益は1000億円の黒字(前期は7542億円の赤字)の従来予想を据え置いた。4~12月期の段階で通期の利益予想を1400億円以上上回っているため、利益の上振れを予想するアナリストもいる。

 構造改革の手を休めず、今後も“強いパナソニック”への転換を進める。2月4日には決算発表と同時に、東南アジアの半導体3工場を6月にシンガポールの半導体メーカー、UTACホールディングスに116億円で売却すると正式に発表した。パナソニック本体の半導体事業も分社して6月に関連子会社と統合する。パナソニックは自動車と住宅関連を両輪にする。19年3月期までに2つの事業の売り上げを、それぞれ2兆円を目指す。4~12月期決算で既に両事業の営業利益が全体の半分を超えた。

BusinessJournal編集部

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