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『リーガルハイ』は嘘だらけ?違法行為満載、ありえない登場人物、新証拠探す弁護士…

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●絶対にいない加賀蘭丸

 そして加賀である。彼がやっていることは犯罪と紙一重か、もしくは明確に犯罪となる行為だ。さすがに視聴者も弁護士事務所が実際にこんなスタッフを抱えていることはない、ということには気づいているだろうが、法律家である弁護士がクライアントのためとはいえ、法を犯すような行為をすることはあり得ない。

 第2期の第1話では、殺人事件の容疑者である被告人・安藤貴和(小雪)の部屋と同じマンションの別の部屋に蘭丸が侵入し、小瓶を置いてくるシーンが登場する。実際、劇中にも「今度ばかりは住居不法侵入と言われかねなかった」と蘭丸本人が言うシーンがある。

 第1期の第3話では、結婚式の真っ最中に、教会から花嫁・村瀬美由紀(原田夏希)をかっさらった工場労働者・榎戸信也(永山絢斗)の国選弁護を黛が引き受けるのだが、黛が蘭丸に、美由紀の家から出たゴミの中から、信也が美由紀に贈った絵を探し出させるシーンがある。ゴミを漁るシーンは映画『マルサの女』(87年)にも登場するが、強制調査権や捜査権を持たない民間人が、ゴミ置き場からゴミを持ち去れば、自治体によっては条例違反になる可能性がある。資源ゴミの持ち去り禁止はすでに多くの自治体が条例化しているが、家庭ゴミについても一部の自治体で条例化が始まっている。裁判においては、違法に入手したものは証拠として採用されない。

 ちなみに、第1期の第3話で、プロ野球団東京ゲッツのファン・望月ミドリ(阿知波悟美)が球団を訴えた訴訟で、担当の田中滋裁判長(小川あつし)の私生活を蘭丸に調べさせるシーンが出てくる。望月ミドリは選手や球団のファンにとって「昭和の肝っ玉母さん」である、という主張を古美門が展開。田中裁判長に自分の亡くなった母親を思い起こさせ、田中裁判長の心証を自分のほうへ傾けさせようとする作戦である。

 当然、現実には裁判官の私生活までは調べられないし、調べても裁判官が情に流されることはない。ただし、その裁判官が過去に出した判決や訴訟指揮の傾向を調べることは、弁護士として絶対にやっておかなければならない準備の一つではある。その裁判官と司法修習で同期の弁護士とうまく知り合えれば、人物像や評価を聞くなど、可能な限りのことをやっている弁護士はいる。

 逆に言えば、担当裁判官が過去に出した判決や、訴訟指揮の傾向すら調べないような手抜き弁護士には、事件の依頼はしないほうがいいだろう。

●黛真知子がつくり出す罪作りな幻想

 そして、世間が最も誤解しているのが、黛のような弁護士に対する幻想だ。黛に限らず、ドラマに出てくる弁護士は皆、自分の足で新証拠を捜し出してくれる。

 黛は第1期の第3話で、ストーカー規制法違反で起訴された榎戸信也のために、わざわざバスに乗って同時間帯の乗客を捜したりしているほか、第2期の第1話では、自らメッキ工場を回って、安藤貴和に青酸化合物を売ったという、元工員の土屋秀典(中尾明慶)を捜し出している。第1期の公害裁判では古美門自ら、土壌の汚染状態の調査のために工場周辺の土地を購入したりしている。

だが、現実には依頼人が持っている以上の証拠を弁護士が捜し出してくれるなどということは絶対にない。類似した事件や担当裁判官が過去に出した判決を捜すのは弁護士の役割だが、証拠そのものを捜し出すなどということは絶対にしない。

 刑事のえん罪事件ですら、新証拠を捜し出しているのは家族や支援者だ。

 むしろ、現実には依頼人の話をひたすら根気強く聞き取り、問題解決のために必要な法に当てはめ、依頼人にとって有利な証拠が何で、それを依頼人が持っていないかを聞き出すことが、弁護士にとって最も重要な仕事といえる。

 筆者も問題を抱えた人から弁護士の紹介を頼まれることがあるのだが、弁護士に頼みさえすれば、マジックのごとく決定的な証拠を捜し出してくれて、すべてうまくコトを運んでくれると思っている人は少なくない。だが、現実には証拠は依頼人が自ら捜し出すものであって、弁護士に捜してもらうものではない。武器になるものを弁護士に提供するのは依頼人の役割だ。

●圭子・シュナイダーは法廷に立てない

 第1期の第6話に登場した古美門の元妻、圭子・シュナイダー(鈴木京香)も、法廷に立てないはずなのに、離婚裁判ではしっかり妻側の弁護人として法廷に立っている。

 日本の法廷に立てるのは、日本の司法試験に合格し、日本の司法修習を終了し、なおかつ日本で日本法の弁護士として弁護士会に弁護士登録をしている人に限られる。海外の法曹資格だけしかない弁護士は、外国法事務弁護士という資格で日弁連に弁護士登録をすると、法曹資格を持つ国の法律業務を日本にいても手掛けることが許される。だが、それでも日本の法廷に代理人として立つことは許されない。

 ドラマの設定では、圭子・シュナイダーはもともと三木事務所にいたことになっているので、日本の司法試験に合格し、日本で司法修習を終えていることは間違いない。ゆえに日本で弁護士登録さえすれば、日本の法廷に立つことは可能なはずだ。だが、バケーションのついでに、たまたま三木先生に呼ばれて帰国しただけで、三木に向かって「あなたはもう私の上司ではない」と言い放っている。ゆえに日本での弁護士登録を維持しているとは考えにくい。

ちなみに、近年、5大事務所が相次いで海外に事務所を出している。主に東南アジアへの進出が増えているのだが、現地に派遣されている弁護士は、ほぼ全員日本での弁護士登録を維持している。そもそも大事務所の海外進出は、クライアントである日本企業の海外進出に伴って発生する法律業務をカバーすることを主な目的にしている。 日本と現地の行き来も頻繁だろうし、現地の問題を国内の法廷で解決するという展開もあり得るので、日本での資格を維持する必要があり、事務所側も弁護士会費の負担は必要経費と考えているのだろう。

BusinessJournal編集部

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