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来年、燃料電池車元年?実用性向上で浮かぶ普及へのロードマップと、ビジネス的合理性

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来年、燃料電池車元年?実用性向上で浮かぶ普及へのロードマップと、ビジネス的合理性の画像1トヨタのプレスカンファレンスで発表された「TOYOTA FCV CONCEPT」

 1月に米ラスベガスで開催された世界最大級の国際家電見本市「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」のキーノート(基調講演)において、ドイツの大手自動車メーカー・アウディは自動制御と通信に力を入れているとアピールしたが、動力に関しては現行のプラグインハイブリッドから進化はなかった。

 一方、同じくドイツの大手自動車メーカー・BMWは「i3」という電気自動車を出展し、技術説明のブースがあるだけでなく、試乗できるようにしていた。これらに対して、日本メーカーであるトヨタ自動車は、プレスカンファレンス(記者発表会)において、先進的な燃料電池自動車のコンセプトカー「TOYOTA FCV CONCEPT」をお披露目した。

●燃料電池とは?

 燃料電池はかなり以前から自動車の動力として注目されており、すでに1990年代には多くのメーカーによって開発が始められていた。当時は2000年までには実用化すると期待されていたが完成には至らず、最近になって、ようやく一般販売が可能になりそうというところまで来た。

 燃料電池の原理は、水素と酸素の化学反応により電力を発生させてバッテリを充電し、電気モーターを動かして走行する。そのため、動力面では電気自動車と変わらない。燃料電池で発電する充電不要の電気自動車といえる。燃料電池に多くの酸素を取り込むため、普通の自動車よりもエアインテーク(吸気口)が大きいのが特徴だ。実用走行可能距離は500km以上になる。現在の電気自動車が200km走るのも難しいのと比較すれば、飛躍的に実用性が高まったといえる。

 燃料電池の燃料である水素は、高圧に耐える水素タンクに充填される。例えば「TOYOTA FCV CONCEPT」は、3分程度で満タンにすることができるため、長い充電時間を要する電気自動車のような不便さがなく、普通のガソリン自動車のように気軽に運用できるのが大きなメリットだ。同車では、水素タンクは床下に配置されている。

来年、燃料電池車元年?実用性向上で浮かぶ普及へのロードマップと、ビジネス的合理性の画像2多くの酸素を吸入するため、普通の自動車よりもエアインテークが大きい

●進化した燃料電池車

 実は、トヨタはすでに08年に「FCHV-adv」という燃料電池車を限定リース販売し、そのフィードバックで燃料電池車の実用化に向けてのデータを集めている。この「FCHV-adv」と比較すると、「TOYOTA FCV CONCEPT」は燃料電池エンジンの出力密度を2倍以上にするなど、大きく進化している。また、非常時には家庭向けに電力供給も可能で、一般家庭であれば1週間以上の電力を確保できる。

「TOYOTA FCV CONCEPT」は日本国内で15年中には発売され、その後北米でも販売される予定だ。北米向けの車については、カリフォルニア州のゼロエミッション法(自動車排気ガス規制)に対応しなければならないため、トヨタも必死だ。カリフォルニア州では、大手メーカーに対しては一定割合以上のゼロエミッション(排気ガスゼロ)車の販売を義務付けられているからだ。

●来年が燃料電池車元年?

 燃料電池実用化推進協議会は、燃料電池車の普及のためにさまざまな活動をしている。同協議会は、15年を最初のマイルストーンとして、エネルギー会社と協議して水素ステーションの配備を進めている。そして、トヨタをはじめとする燃料電池車に取り組んでいる各自動車メーカーも、15年までには燃料電池車の販売を開始する予定としている。

 さらにこれから10年間でコストダウンや実用的な進化をさせ、次のマイルストーンである25年には燃料電池車を一般的に普及させる予定だ。予定では水素ステーションのインフラも整い、さらに水素のコストも下がって、燃料電池ステーションのビジネスが成り立ち、燃料電池車の価格も一般家庭でも買いやすいレベルに下がる見込みとしている。

 これが日本での今後10年少々の燃料電池車のロードマップだ。15年以降、当初は燃料電池車は本体も高価でランニングコストも高くなることだろう。そして、燃料電池車がある程度買いやすい価格に下がるまでは、ハイブリッドや電気自動車などが現実的にエコな選択肢となるだろう。

 しかし、25年を迎えても究極のエコカーである燃料電池車の価格は、簡単に現在の普通自動車並みに下がるとは考えにくい。25年以降も当分はガソリン車、ハイブリッド車、電気自動車などが日本の道路に混在していることだろう。
(文=一条真人/フリーライター)

BusinessJournal編集部

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