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「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第64回

巨大新聞社社長の不倫暴露作戦、いよいよ始動~新聞業界のドン、2カ月の沈黙を破る

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 太郎丸はそういうと、湯呑みを一気に飲み干した。そして、二人に急須のお茶を注ぎ足すよう促した。深井が急須を取り上げ、太郎丸の茶碗に残った茶を入れた。

「今日、お主らを呼びよったのはほかでもないわな。大地震でとん挫しちょったが、例の計画を実行に移しよることにしたからじゃ。松野(弥介)と村尾(倫郎)の不倫スキャンダルを暴き、退陣に追い込むんじゃ。予定通り、お主らに協力して欲しいんじゃ」

 太郎丸は二人を交々見つめた。二人は少し戸惑い、顔を見合わせたが、深井が答えた。

「それはわかっています。だから、今日、会長の指定した時間に来ているんじゃないですか。要するに、我々は週刊誌の取材に応じればいいんですよね。それはそのつもりです」
「ふむ。『次の連中』はじゃな、週刊誌の記者たちじゃ。多分、午後7時過ぎにやってきよる。若女将には1階の洋間に案内せい、言っちょる。ちゃんと、合図があるけん、そしたら、お主らがその部屋に行きよる手はずじゃわ。わしは帰りよるがな。その前に3人で食事をしよるんじゃ。某料亭に幕の内弁当を頼んじょる。午後6時半頃に届くはずじゃ」

 黙って太郎丸の説明を聞いていた吉須が苛立ちを隠さずに噛みついた。

「会長、それじゃ、何のことだか、わかりませんよ。順を追って説明するんじゃないんですか。二人のスキャンダルはいつ、どこに載るんですか。それも確実に載るんですか」
(文=大塚将司/作家・経済評論家)

【ご参考:第1部のあらすじ】業界第1位の大都新聞社は、ネット化を推進したことがあだとなり、紙媒体の発行部数が激減し、部数トップの座から滑り落ちかねない状況に陥った。そこで同社社長の松野弥介は、日頃から何かと世話をしている業界第3位の日亜新聞社社長・村尾倫郎に合併を持ちかけ、基本合意した。二人は両社の取締役編集局長、北川常夫(大都)、小山成雄(日亜)に詳細を詰めさせ、発表する段取りを決めた。1年後には断トツの部数トップの巨大新聞社が誕生するのは間違いないところになったわけだが、唯一の気がかり材料は“業界のドン”、太郎丸嘉一が君臨する業界第2位の国民新聞社の反撃だった。合併を目論む大都、日亜両社はジャーナリズムとは無縁な、堕落しきった連中が経営も編集も牛耳っており、御多分に洩れず、松野、村尾、北川、小山の4人ともスキャンダルを抱え、脛に傷持つ身だった。その秘密に一抹の不安があった。

※本文はフィクションです。実在する人物名、社名とは一切関係ありません。

※次回は、来週2月28日(金)掲載予定です。

BusinessJournal編集部

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