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ブラック企業アナリスト・新田龍「あの企業の裏側」第15回

銭湯、客数減でもなぜ潰れない?多額補助金、水道料金実質無料、税金免除…

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 もちろん、これら補助金は各都道府県や市区町村が税金から支出しているものだ。制度としては終戦間際の、公衆衛生が喫緊の課題であった頃のものであり、当時の時代背景であれば理解できるが、内風呂の普及率がほぼ100%となった現在、そこまで手厚く補助する正当性には疑問が残る。

 ちなみに、筆者在住の東京都世田谷区では、銭湯を対象にした予算として13年度で約1億9,800万円が支出されている。区内銭湯1軒当たり年間で約566万円にも上る計算になる。同区では待機児童問題などいろいろと優先度が高い課題があるにもかかわらず、銭湯に慣習的に多額の支出が継続されているのだ。

 しかも、あくまでこの対象は「一般公衆浴場」である銭湯に対してのみであり、「その他」に分類されるスーパー銭湯や健康ランドには適用されない。実際に今、新規開業を届け出たとしても、補助金・助成金対象となる「銭湯」としては認可されない(もちろん、その代わりに料金設定を自由にできるというメリットはある)。

 つまり、既得利権化しているのである。都道府県から助成金が出て、市区町村が振り分ける。450円(東京都の場合)という価格統制を受け入れさせる代わりに、助成金を渡すという慣行が残った。お金を渡す側は当然ながら利権を渡したくないし、事業者側も助成金はありがたい。お互い持ちつ持たれつなのだ。そして浴場組合の理事会には、地元議員も訪れる。こうして銭湯業界は、さまざまな思惑が交錯する場と化している。

 前出の銭湯経営者は、補助金について次のように語る。

「補助金がなくなった瞬間、数多くの銭湯が潰れるだろう。組合はどこも羽振りがよく、銭湯を会場にしたイベントなんかには、すぐにお金を出す。むしろ、補助金や助成金は使い切らないと翌年減らされるので、なんとしてでも使おうとする」

 公衆浴場でもスーパー銭湯などは各社知恵を絞り、助成金や補助金を受け取らずとも営業している。各自治体が明確な指針も検証もないままで補助金を垂れ流してしまうのは、当の銭湯の営業努力へのモチベーションを奪い、結果的に業界自体を衰退させてしまうことにもなりかねない。行政は、事業者が補助金に頼らずとも自立できる環境を整備すべきである。直接的な補助金でなくとも、利用者にバウチャー(利用券)配布するなど、方法はさまざまあるだろう。

 今回は業界構造に関する概要を中心にお伝えしたが、次回は、具体的な利益構造や助成金の仕組みに迫り、銭湯の「客がいなくても儲かる」カラクリを解き明かしつつ、浴場組合の実態について詳説していく。
(文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト)

新田 龍(にった・りょう):株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト。
早稲田大学卒業後、「ブラック企業ランキング」ワースト企業2社で事業企画、人事戦略、採用コンサルティング、キャリア支援に従事。現在はブラック企業や労働問題に関するコメンテーター、講演、執筆を展開。首都圏各大学でもキャリア正課講座を担当。

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