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TPP、食の安全に重大な脅威の懸念~添加物、残留農薬、検疫の規制緩和の問題点

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 09年の財務省調査によると、日本における一般貨物(海上貨物)の輸入手続き平均所要時間は、62.4時間となっている。これだけでも、48時間にはだいぶ隔たりがあるが、中でも他法令該当貨物すなわち動植物検疫や食品検疫の対象となる貨物についてみると、48時間の倍近い同92.5時間となる。なぜ、このような時間になるかといえば、畜産物では動物検疫の検査対象になり、農産物では植物検疫の対象になり、食品では食品検疫の対象になるため、その届け出や検査に時間がかかるからである。

 では、48時間以内通関にするために、輸入手続きはどうなるのか。

 財務省は、予備審査制と特例輸入申告制度(AEO制度)で時間短縮をするとしている。予備審査制とは、貨物が日本に到着する前に、あらかじめ税関に予備的な申告を行い、税関の審査を受けておくことができる制度である。AEO制度とは、貨物のセキュリティ管理と法令遵守の体制が整備された貿易関連業者を税関が認定し、迅速で簡素な通関手続きを提供する制度である。要は、AEO認定業者が輸入申告した場合は、税関による現物確認検査等はなしで書類審査だけで通関されるというものである。AEO貨物の通関所要時間はわずか0.1時間とされており、現物確認なしで通関するため、時間が短縮されるのは当然である。

 しかし、これはきわめて危険な規制緩和といえる。米国は、輸入されるコンテナ貨物は100%検査をしている。それは、テロの脅威を防ぐためである。日本がテロの脅威の例外となる根拠はない。さらに、麻薬等の薬物の密輸も横行している中で、このような規制緩和は、日本のリスクを高めるものといえる。

 さらに問題なのは、税関の手続き時間を短縮しても、他法令該当貨物、すなわち動植物検疫や食品検疫の時間がどうしてもかかるため、その短縮がなければ48時間をクリアできないことである。

 ここで出てくるのが、動植物検疫や食品検疫の規制緩和である。

 09年7月6日、日本政府は、「日米間の『規制改革および競争政策イニシアティブ』に関する日米両首脳への第8回報告書」で米国政府に対して「厚生労働省は、関係業界の意見も踏まえ、検疫所における輸入手続きがより効率的に行えるよう引き続きつとめる」ことを約束している。現に、厚生労働省は米国政府に対して、残留農薬検査で残留農薬基準違反があっても、米国の残留農薬基準が日本と同等の基準の場合は、業界全体の輸入を差し止めないと約束をしている。

 以上みてきたように、TPP加入は、日本の農林水産業と食の安全を大きく脅かす可能性をはらんでいるといえよう。
(文=小倉正行/国会議員政策秘書、ライター)

BusinessJournal編集部

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