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年金支給減に相続トラブル増、どう対応?人気高まる遺言代用信託、家族の継続的収入源に

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「ずっと安心信託」は、前述した人々が終活を行う動機にこの利便性が加わって現在ヒットしているが、その勢いは今後ますます強まる見通しだ。なぜなら、税制改正が目前に控えているからだ。

●増加が予想される相続トラブル

 今年4月に消費税が8%に引き上げられるのに続いて、来年10月には10%にまで引き上げられる見通しだ。その一方で、公的年金の支給額は今年10月から段階的に引き下げられ、来年4月までに現行から2.5%減額されるが、“増税減額”はこれにとどまらない。

 さらに強烈なインパクトを国民生活に与えるのが、来年1月に改正される相続税制度だ。「富裕層でなければ相続税の処理に悩まされることはない」と考えるのは早計だ。

「司法統計年報」(最高裁判所)によると、相続トラブル件数は財産が5000万円超では横ばいだが、5000万円以下では毎年増加傾向にある。5000万円以下は現行の相続税制度では課税対象にならないが、それでも増えているのだ。

 ここで相続税制度が改正されると、何が変わるのだろうか。

 大きな点としては、基礎控除が大幅に減額され、これまでに相続税が発生しなかった被相続人も課税対象になる点が挙げられる。相続税の基礎控除額は現行では「5000万円+1000万円×法定相続人の数」で算出されるが、改正後の算出方法は「3000万円+600万円×法定相続人の数」と課税対象額が引き下げられる。

 課税対象の相続額が引き下げられれば、相続税をめぐるトラブルが一段と増えることは十分に予想がつく。日本弁護士連合会の高齢社会対策本部委員で、NPO法人遺言・相続リーガルネットワーク事務局長の長家広明弁護士(インテグラル法律事務所)は、次のように警鐘を鳴らす。

「相続紛争の平均係争月数は16.3カ月だが、相続税は原則として10カ月以内に現金納付しなければならないので、相続争いの最中に支払いを求められたら誰が支払うのかという問題になる」

 しかも支払う者が決まっても、今度はどのような手段で相続税を支払うのかという新たな問題に直面する。長家弁護士は続ける。

「相続税制度改正によって、固定資産のみの相続でも相続税がかかる可能性が増えてくる。しかし、固定資産のみの相続で、現金資産が少ない場合にどのようにして相続税を支払うのかが問題である。この改正をきっかけに、若い方も相続準備をしっかりと考えてほしい」

 このように、相続トラブルの増加が見込まれる背景がありながらも、多くの人が本格的な準備までは行えていない現実がある。

遺言書作成への低い意識

 昨年12月、三菱UFJ信託銀行が行った相続意識調査(回答者:30~70代以上の男女1000人)では、相続への関心は50代で一気に高まることが明らかになった。その背景は「健康への不安」(66%)や「相続トラブルの経験」(24.6%)だが、50代で「遺言書を作成したうえで、資産承継について考えるべき」と回答した人の割合は14%にすぎず、全年代でもっとも低い回答比率だった。

 50代は相続への関心を持ち始めながらも、具体的なアクションを起こそうとしていないことがうかがえるが、これは憂慮すべき現実といえよう。なぜなら、50代の多くが「健康への不安」を実感しているように、50代は健康リスクだけなく、実は生命リスクにも直面している。

 50代で若年性認知症が多く発症することは広く知られているが、厚生労働省の調査によると、不慮の事故や自殺などによる急死の可能性が50~60代で11.7%、これが50~54歳に限ると20.8%にも膨らむのだ。

 50代での遺言書の作成は多くの人にとって重い気分になるだろうが、エンディングノートや少額短期保険などと同様に遺言代用信託ならハードルが低い。相続税対策に加えて、このハードルの低さもまた遺言代用信託の契約件数が急増している理由だろう。
(文=編集部)

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