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揺れるミクシィ、「再生完了」は本当か?1年で社長交代、株価乱降下、リストラ…

文=編集部
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揺れるミクシィ、「再生完了」は本当か?1年で社長交代、株価乱降下、リストラ…の画像1ミクシィ本社が所在する住友不動産渋谷ファーストタワー(「Wikipedia」より/Harani0403)
 異様な社長交代の風景だった。交流サイト大手のミクシィは、朝倉祐介社長(31)が6月24日付で代表取締役社長を退き、顧問になる。後任には森田仁基執行役員(37)が昇格する。

 朝倉氏は2月13日、記者会見で今回の社長交代について「ミクシィは事業再生フェーズを完了し、成長フェーズに移行する。ノーアウト満塁でマウンドを任された投手として、やるべき仕事はやれた。再生には3年かかると想定していたが、1年前倒しで達成できた。再成長に向けてサービス寄りの人間をトップに置く」と説明した。

 ミクシィは2014年3月期通期の業績予想を上方修正した。スマートフォン(スマホ)向けゲーム「モンスターストライク」(モンスト)が好調で、売上高は前回予想(昨年10月発表)から35億円増額し115億円に、16億円の赤字としていた営業利益を2億円の黒字に修正した。最終損益の赤字幅は22億円改善し、3億円の赤字にとどまる。営業段階で黒字化する見込みが立ったことで社長を交代するというのが、会社側の公式見解である。

 だが、13年3月期決算と比較すると、売上高、営業利益は減っており、最終損益は赤字というかたちに変わりはない。業績が回復したとは言い難い状態だ。いかにもとってつけたような社長交代の理由で説得力がない、との見方が広まっている。

緊急登板した新社長

 ミクシィは13年4~6月期に2億円の最終赤字に転落するなど業績不振に陥り、創業社長の笠原健治氏(38、現会長)から再生を託されて同年6月に社長に就いたのが朝倉氏だった。30歳という若さ、競馬騎手の養成学校を経て東京大学法学部卒、コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーという異色の経歴がメディアを賑わせた。朝倉氏がミクシィに入社したのは11年10月。自身が立ち上げた携帯アプリの開発支援会社ネイキッドテクノロジーがミクシィに買収されたからだ。12年4月に社長室室長に就き、ミクシィの経営再建に携わってきた。

「起業家精神に満ち、1を10に育てる適任者」と、前社長の笠原氏から評された朝倉氏はマッキンゼー仕込みの経営手腕を買われて、ピンチに緊急登板したわけだ。「ギラついたミクシィを取り戻す」。社長昇格の会見でこう宣言した朝倉氏は改革を進めた。結婚相手や友達、恋人探しができるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)会社など3社を立て続けに買収。業績回復の立役者となったスマートフォン(スマホ)向けゲームの「モンスト」も社内の打ち合わせルームから生まれた新規事業の1つだ。

 だが、事業のリストラクチャリングが思わぬ波紋を呼んだ。昨年11月、約30人の正社員が突然、研修部屋という名のリストラ部屋に移されたという報道が流れ、騒動となった。荒々しい手法でリストラに取り組む朝倉氏は、ミクシィの社風には合わなかったため、社内では疎まれていたという声も聞こえる。朝倉氏の後ろ盾は、発行済み株式の53.8%を保有する会長の笠原氏だったが、「人員削減をめぐって笠原氏との関係がギクシャクした」とも取り沙汰された。「ミクシィを再生させたという経歴を高く売るなら、今が潮時と考えたのではないのか」と指摘するインターネット業界関係者もいる。

投機対象となったミクシィ株

 この間にミクシィ株は仕手株化した。仕手株とは投機的な短期売買の対象となる銘柄だが、株価の急騰・急落が繰り返される。ミクシィの株価は昨年12月に入って暴騰し、10日の終値は9060円と年初来高値を更新。年初来の高値更新は10日連続となった。10月8日の年初来安値の1064円から、わずか2カ月で8.5倍に暴騰したのである。

 ここで興味深いのは、業績が悪化する中で株価が急騰したことだ。ミクシィは昨年10月に、14年3月期の業績見通しを下方修正した。昨年5月に発表した見通しでは売上高は127億円、営業利益は15億円の黒字を予想していた。ところが、同10月になるとこれらの見通しをそれぞれ80億円、16億円の赤字転落に下方修正した。SNSの広告収入が減少したためだが、ネット関連企業の中でミクシィの業績低迷が際立っていた。

 にもかかわらず株価が暴騰したのは、短期的な株売買で利益を稼ごうとする仕手筋が大量に買いを入れたためで、その買い材料になったのは10月にミクシィが発表したスマホ向けゲーム「モンスト」だ。

 当時、ガンホー・オンライン・エンターテイメントがスマホ向けゲーム「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)を大ヒットさせ、業績を大きく伸ばし、株価が高騰していたが、「モンスト」は「パズドラ」の二匹目のドジョウになると買いが殺到した。それにしても2カ月で8.5倍の暴騰は異常といえ、高値で売り抜け、大きな儲けを上げた仕手筋がいたことは想像に難くない。

 そんなミクシィは今年2月28日、公募増資などで63億円を調達すると発表したが、これにより株式数が増えるため、株価が急落する可能性もある。ところが東証マザーズ上場のミクシィ株はこの発表を受け急騰し、前日比1000円(16%)高の7280円と値幅制限の上限、ストップ高水準まで買われた。

 増資で得た資金は「モンスト」の広告宣伝費に充当するとしているため、「モンスト」利用者が急増するとの思惑から短期筋の買いが入り、28日の売買代金は前日の6倍以上になった。昨年12月に株価は高値を付けて以降下落していたこともあって、短期筋の思惑買いが入ったとみられている。

 株価の乱降下、そして異例のトップ人事で揺れるミクシィ、本格的な業績回復に向けては依然として視界不明瞭な状況が続く。
(文=編集部)

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