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女性の労働参加率、北欧並みに上昇の場合、少子化による経済のマイナスを約50%緩和

文=小黒一正/法政大学教授
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女性の労働参加率、北欧並みに上昇の場合、少子化による経済のマイナスを約50%緩和の画像1「Thinkstock」より

(文=小黒一正/法政大学経済学部准教授)

 安倍政権は成長戦略の柱の一つとして「女性の活躍推進」に関する政策を打ち出している。理由は単純で、日本では少子高齢化の進展で潜在成長率が低下し始めているが、女性の労働参加率の上昇はその影響を緩和しつつ、経済成長を促進させる可能性を秘めているからだ。

 そもそも、少子高齢化は、労働人口を減少させ、それ以外の人口である従属人口(例:引退世代)を増加させるから、その比率である従属人口指数(=従属人口÷労働人口×100)を上昇させてしまう。だが、女性の労働参加率が高まれば、この従属人口指数の上昇を緩和できる。

 このため、安倍政権は「待機児童を5年でゼロ」「育児休業3年」「上場企業に女性役員を1人」といった政策を掲げてきたが、先般(3月8日)の朝日新聞デジタルに以下の記事が出ていた。

【2014年3月8日付朝日新聞デジタル記事『配偶者控除の縮小検討 政府、女性の社会進出促す狙い』(以下、抜粋)】

「政府は、夫婦のうち1人が働く世帯の税負担を軽くする『配偶者控除』を見直す検討に入った。『夫が働き、妻は専業主婦』という家庭像を前提にした税制を改め、女性の社会進出を促すねらいだ。年末の2015年度税制改正に向けて議論するが、自民党には慎重論も根強い」

「配偶者控除は、夫が働き、妻が専業主婦の世帯の場合、夫の課税所得を38万円減らし、所得税を安くする制度(妻だけが働く場合は逆)で、減税額は年収によって異なる。妻の年収が103万円以下なら38万円の控除を受けられる。103万円超~141万円未満も控除を受けられるが、年収が増えるにつれて控除額は少なくなる」

「専業主婦の中には、減税の恩恵を満額受けるために103万円を超えないよう仕事の量を調整する人もいる。103万円を境に、夫が企業から受け取る『扶養手当』を打ち切られるケースもあり、女性の社会進出を阻む『103万円の壁』とも指摘されている」

 この配偶者控除の縮小も、「女性の活躍推進」政策の一環に位置づけられるはずだ。では、女性の労働参加率の上昇は、従属人口指数の上昇をどの程度緩和することができるのか。そこで、以下では簡単に、日本女性の労働参加率が北欧並み(例:スウェーデンやデンマーク)に上昇した時の「従属人口指数」の推移を試算してみよう。

●少子化による経済へのマイナス影響を大幅に緩和

 まず、OECD諸国の労働参加率(2011年、男女)をみると、図表1のようになっている。スウェーデンやデンマーク等の北欧では、男性の労働参加率よりも若干5ポイント低いものの、女性の労働参加率は80%前後の値となっている。他方、日本はどうか。男性の労働参加率は北欧に近い85%であるものの、女性の労働参加率は北欧の80%より17ポイントも低い63%である。

女性の労働参加率、北欧並みに上昇の場合、少子化による経済のマイナスを約50%緩和の画像2図表1:OECD諸国の労働参加率(2011年、男女)

小黒一正/法政大学教授

小黒一正/法政大学教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。


京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。


1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。


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