朝日新聞内の「冷戦」

 編集局幹部人事をめぐっては今年1月、編集局の人事権を任されていた吉田氏と、経営トップの木村氏との間で「冷戦」も勃発した。朝日新聞は福島総局を「原発取材センター」と位置づけ、取材体制をさらに強化する計画で、福島総局長に東京社会部長を起用した。原発取材強化のための人事と一応社内的には説明されているものの、「降格人事」と映ってしまいかねない。また、精神的にも肉体的にも負担がかかる役職でもあり、割の合わない仕事と見られている。

 もともと吉田氏は福島総局長に「木村派」の編集局幹部を起用しようと画策、人事を内々定させた。その幹部は常に吉田氏の指示に背いてきた人物であり、編集局内では吉田氏との不仲を知らない者はいない。吉田氏は自分が人事権を持つうちに「左遷人事」を狙ったわけである。しかし、その幹部が、吉田氏の画策に気づいて木村氏に直訴。それを受けて木村氏は、福島総局長人事案を発表寸前にひっくり返してしまった。編集担当が内々定した人事がこのような理由で覆されるのは異例中の異例だった。

 朝日新聞社内の関係者も「木村派の幹部が福島行きを断ったことによるドタキャンで、とばっちりを受けたのが社会部長。社内で発表する約1時間前に、社会部長へ木村社長が直接内示を下した異例の人事だった。そもそも木村派の幹部は経済部出身であり、金融や通商などのマクロ政策を得意としており、福島総局長には向かないタイプだった。吉田氏による嫌がらせ人事だった可能性が高い」と解説する。

 適材適所を行う編集担当が、好き嫌いで人事をしていたら、組織は崩壊しかねない。吉田氏については朝日新聞の大阪社会部関係者が「これまでも自分の親族を記者職でコネ入社で採用させるなど、公私を混同する振る舞いを数多く行ってきた」と指摘する。

 吉田氏の「老害」ぶりが目立ってきたので、体よく追い出すためにも木村氏は一応、吉田氏の顔を立てるかたちで、テレビ朝日の社長という椅子を用意したのであろう。経歴はご立派ながらも、マネジメント能力に疑問符が付くこうした人物が全国テレビ局の舵取りの一翼を担うことができるのか、見ものである。

 ただ、剛腕経営者として知られるテレビ朝日の早河氏は、吉田氏の人間性をすでに見抜いているといわれ、それを承知でテレビ朝日に迎え入れた模様。テレビ朝日の視聴率や業績は今がピークで、今後2~3年は一時的に後退する可能性が高いとの見方もある中、したたかな早河氏はその責任を吉田氏に押し付ける考えだとしたら、因果応報である。
(文=編集部)

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