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Jリーグ参入目前のFC大阪、その異色経営の秘密~入場料無料でも高収益、新営業戦略

文=栗田シメイ
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Jリーグ参入目前のFC大阪、その異色経営の秘密~入場料無料でも高収益、新営業戦略の画像1「Thinkstock」より

 サッカーの地域リーグをご存じだろうか。全国リーグである日本フットボールリーグ(JFL)と都道府県リーグの間に位置するカテゴリの社会人リーグで、今年から発足したJ3(Jリーグ第3部)への参入をめぐり、全国で地域リーグの大会が過去最大級の注目を集めている。

 そんな地域リーグの中で、ひときわ異彩を放つクラブがある。ガンバ大阪、セレッソ大阪に次いで大阪府3番目のJリーグ参入を目指すプロサッカークラブ、FC大阪だ。

 FC大阪の特徴は、ユニークなクラブ経営メソッドにある。ブラジル名門クラブであるグレミオ・フチボウ・ポルト・アレグレンシ(グレミオ)などでプレーしたラファエルのほか、今シーズンはJ1経験者である山瀬幸宏、近藤岳登、紀氏隆秀らの補強を行うなど、地域リーグの枠にとどまらない選手層を誇り、さらに女子クラブ、U-18、シニアチームの運営に加え、ブラジルに育成組織の支部を立ち上げている。

 また、海外展開にも積極的だ。グレミオをはじめ、ポルトガルのマリティモ、トルコのアンタルヤスポルと業務提携を行っており、スペイン2部リーグ・エルクレスCFの杉田祐希也ら、海外の選手のマネジメントも引き受けている。

 運営予算が極めて小さなクラブが多い地域リーグにおいて、FC大阪はJ2の中~下位クラブの予算と比較しても遜色ない規模の予算を持っている。試合観戦が基本的に無料で、入場料収入が見込めない地域リーグの中で、一体どのようにクラブ経営を行っているのだろうか?

 今回は、そんなFC大阪の運営について、同クラブ会長・吉澤正登氏に話を聞いた。

FC大阪の経営方針

–はじめにクラブの経営方針を教えてください。

吉澤正登氏(以下、吉澤) FC大阪は、もともと社員が集まって発足した草サッカーチームでした。運営会社がセールスプロモーション会社ということもあり、FC大阪というクラブを広告コンテンツの一部ととらえ、さまざまなビジネスモデルを構築しております。実際に、サッカークラブを保有していることで、既存の取引先や新規のお客様に対してPRを行うことができ、関係性を構築する上で役立っています。クラブの経営スタイルとしては、海外のクラブチームに近いかもしれません。

–入場料収入がないスポーツクラブが、黒字を出すことは非常に難しいと思います。収入源や利益は、どのように得ているのですか?

吉澤 メインとなる収入源は、スポンサー収入、イベント収入とグッズ販売やスクール運営です。クラブとしては、一般的なビジネスと同じ理論ですが、費用対効果を何より重視しています。例えば、経験豊富で実績のある有名な選手を獲得するとします。年俸が高額であっても、その選手をきっかけにクラブの知名度が上がり、グッズ類など物販の効果に表れます。イベント参加者やスポンサーの反応も違いますし、試合に勝つという、クラブの目標の大きな力にもなってくれます。そのように費用に対する効果=利益=成績という目標と計画を明確にして、細かく管理することで健全な経営が図れます。

Jリーグ参入に向けて

–スポンサーとの関係性について教えてください。

吉澤 単なる広告スポンサー契約ではなく、お客様の注文をつくる「顧客創注型」の営業を心掛けています。あくまでもスポンサー契約はビジネスファミリーの入り口であり、スポンサーにとって魅力的な情報提供や利益を供与することを最大の使命とする考え方です。支援する側、される側という単純な構図をつくるのではなく、FC大阪というクラブを必要としていただけるような、付加価値を提案しているつもりです。

–社員のマネジメントは、どのような点を意識していますか?

吉澤 とにかく責任感を持たせることです。アスリート出身の社員が多く、自己責任の強さには下地があるので、チーム評価で個人の数字をごまかすのではなく、各個人の成績を評価するようにしています。サッカーでも同じですが、いくらチームがまとまっていても、個々のスキルが乏しい集団は弱小となるので。基本的には個人主義のスタイルを維持し、仕事の仕方、範囲まで個々の社員に任せています。会社経営でも、売上額が10億円を超える規模になると、業務を分業制にしたほうが効率は良いですが、それ以下の規模の場合、多様な業務をこなすことで個人のスキルを伸ばせるというのが私の考え方です。当社の場合、良い意味で“オールラウンドプレーヤー”を育成する基盤があると思います。

–JFL、Jリーグ参入に向けて、スタジアム問題など解決しなければいけない課題もあると思いますが、クラブとして目指す方向性を教えてください。

吉澤 課題は一つひとつ地道にクリアしていかなければなりません。そのための一歩として、昨季までセレッソ大阪でチーム統括部長を務めた梶野智氏をクラブコーディネーターとして招聘し、基盤を固めている最中です。

 クラブとしては、地元大阪でのスポーツ産業の発展、競技人口の増大、雇用の創出、街の元気づくりも考慮し、日々精進していきます。そして、新しいサッカービジネスの創造にもチャレンジして、FC大阪の存在意義を一つずつつくっていきたいですね。
(文=栗田シメイ/Sportswriters Cafe)

栗田シメイ

栗田シメイ

 広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。

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