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えん罪、自白強要、異常な長期身柄拘束…歪んだ刑事司法の元凶は裁判官?元裁判官が告発

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--日本の刑事裁判では、自白の強要や、勾留率(勾留決定が下される率)、有罪率の高さ、代用監獄制度など多くの問題を抱えています。まず、容疑者が警察に逮捕され、逮捕から48時間たってもなお勾留する場合には、裁判所に勾留請求をし、それが認められなければなりません。勾留する場合には「罪証隠滅のおそれ」や「逃亡のおそれ」があるかどうかで判断されることになっているわけですが、勾留率は99%以上となっており、驚くほどの数字です。

 勾留率が高いのは、裁判所がきちんと審理していないからです。というのも、私が東京地方裁判所八王子支部で裁判官を務めていた頃は、1日おきに勾留尋問を行い、平均で15名を午前中のみで審理することになっていました。それを午前10時半から12時の間に終わらせないといけないのですが、そうなると1人当たりの審理の時間は3分ほどです。きちんと審理できるわけがありません。

 また、勾留は検察官が請求するのですが、検察官も多忙を極めているので、勾留してきちんと時間通りに取り調べをしないと終わらないのです。

 最も問題なのは、勾留率の高さは、裁判官の治安維持的性格を端的に表していることです。刑事訴訟法では、勾留に関し、裁判官が捜査機関にチェック機能をかけることを求めています。しかし、実態はその精神に反し、治安維持の方向へ裁判官自身が流れています。

--裁判官自らが、容疑者の身柄を拘束することが当然だと考えている節があるということですね。裁判官が治安維持の方向へ流れてしまうのは、どうしてでしょうか?

 日本の裁判官は「司法囚人」ともいうべき奇怪な存在だからです。どういうことかといえば、裁判官が裁判所・検察・警察という司法メカニズム全体に拘束されていて、そうした一種の囚人的な地位にある裁判官が権力を行使しているのです。従って、日本の裁判所は有罪か無罪かの判断を下すのではなく、「有罪を認める」ための単なる裁判機械にすぎないのです。

●検察と裁判所の不適切な関係

--司法メカニズムに囚われの身となった裁判官は、自然と治安維持の方向へ流れてしまうということですね。一方、日本の検察官や警察はよっぽど優秀なのか、刑事裁判の有罪率が99%を超え、起訴されればほぼ有罪という状況です。

 日本の刑事裁判の有罪率は、裁判員制度が始まる前は、1980年以来、常に99.8%を超えています。99.9%を超えている年も多くあります。これは検察の優秀さや信用、さらに裁判官が捜査機関である警察や検察官の言いなりになっているというだけでは説明がつきません。裁判官自身が、治安維持に明らかに比重をかけ、有罪判決を出しているのです。一般の人が思っているような、裁判官は決して無色透明で中立な存在などではなく、治安維持の影を帯びた歪んだ存在であるとさえいえます。

--裁判官と検察官は一体にも見えますが、実際に裁判官と検察官の交流はあるのでしょうか?

 私が刑事裁判を担当していたのはかなり前のことですが、当時、検察官は裁判官室に、ごく普通に入ってきていました。実質上は、気やすい関係でもあります。

--例えば、検察官が裁判官に対し「この事件は、よろしく頼むよ」といったような会話もあるということでしょうか?

 もっと具体的で、裁判の打ち合わせをしていました。そんなことは本来ならば弁護人も同席で行わないといけないのですが、気やすい関係で、打ち合わせと雑談の区別がつかなくなっている部分がありました。

--検察批判は盛んに行われていますが、裁判官批判はあまり聞こえてきません。しかし、これまで取材した中で、真の問題は「検察より裁判官だ」という声も聞きました。

 99%以上が有罪の状況ですから、99%の刑事司法は検察が行っているとさえいえますし、改善するためには検察が変わらないと難しいとも思います。しかし、勾留の可否や有罪か無罪かの最終判断は常に裁判官が行い、その責任は裁判官にあるはずなのに、これまで批判の対象からすり抜けていました。

●自白を強要しやすい代用監獄制度

--また、日本でごく普通に生活し、事件のニュースなどを見ていると、容疑者が警察署の中に勾留されるのが当たり前と思ってしまいますが、これは諸外国と比べると異常な事態であるといいます。

 警察に嫌疑をかけられた場合、警察の留置場に身柄を拘束されるのが世間一般では当たり前だと思われるかもしれませんが、本来は、逮捕してから警察が身柄を拘束できるのは48時間と定められています。それ以上勾留するためには、裁判所に勾留請求をして、認められなければなりません。また、勾留請求が認められたとしても、警察からの独立施設である拘置所に勾留されなければいけないのです。しかし、日本では代用監獄制度という名称をつくり出し、警察の留置場でずっと身柄を拘束しています。これは先進国ではあり得ないことです。

--捜査機関にとっての代用監獄制度の利点、つまり警察の施設内に勾留する利点はなんでしょうか?

 端的にいえば、自白が取りやすいからです。警察から独立した法務省管轄の拘置所へ通って取り調べするのと、四六時中警察の支配下にある代用監獄では、捜査機関の便宜的にも、容疑者の精神的な面でも違います。ですから、代用監獄制度は、自白強要の温床として国際的にも国内的にも、これまで問題点を指摘されているわけです。

--自白の強要は、これまでのえん罪事件などを見ても大きな問題です。

 ただ、代用監獄制度を検察や警察の問題であるかのように誤解されているきらいがあります。代用監獄に勾留することは、裁判官が勾留場所を代用監獄に指定することで初めて成り立つわけです。ですから、裁判所の問題であり、裁判官の責任であるといえます。

『司法権力の内幕』


日本の裁判所はなぜ理不尽か。人質司法、不当判決、形式的な死刑基準……など、その背後に潜むゆがみや瑕疵を整理、解説。第三権力の核心をえぐる。

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