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資格ビジネスのカモになる人々~多額料金と時間を取られて、仕事を得られず

文=尾藤克之/経営コンサルタント
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資格ビジネスのカモになる人々~多額料金と時間を取られて、仕事を得られずの画像1「Thinkstock」より
「簡単に取得できて、重宝されて、稼げる資格はないか?」

 そんなことを考えた経験がある人も少なくないことでしょう。

 自身でも50個の資格を取得し、『資格を死格にしない資格活用法』(合同フォレスト)の著者である高橋ゆり氏に、昨今の資格事情について話を聞きました。

–「簡単に取得できて稼げる資格」なんてあるのですか?

高橋ゆり氏(以下、高橋) 冷静に考えて、「簡単に取得できる資格」が「重宝されて」「稼げる」と思いますか? 資格は、ある一定以上の知識や技術、能力があることの証明です。それが「簡単に取得できるもの」であるのなら、誰もが持つ「標準」となり、価値を見いだすことができないものになってしまいます。また「重宝される」「稼げる」には、相手にとって必要なもの、貴重なものでなければなりません。それが簡単であるわけがないのです。

 このような甘い考えを持っていると、「資格団体や資格スクールにとって都合のいい資格」を取得することになってしまいます。資格に群がる“カモ”になってしまうわけです。

医療事務に資格は不要

–例えば、どのような資格が「資格団体や資格スクールにとって都合のいい資格」なのでしょうか?

高橋 女性週刊誌を見れば、ほとんどの雑誌に「医療事務」の資格が紹介されています。「週1回の勤務でOK」「月に5万円は簡単に稼げます」「仕事は引く手あまたです」「一度資格を取得すれば、いつでも仕事ができます」と、子育て中の主婦など、働きにくい環境の人には魅力的な文言が並びます。たった数カ月勉強して、ほんの少し働けば月に数万円のお金が手に入るなんて好都合です。

–そうですね。実は、私も気になってはいました。

高橋 そんなに魅力的な仕事なら、子育て中の主婦の方の多くが医療事務の資格を取って、お金を得ることになります。知り合いに、そのような方はいらっしゃいますか? 少なくとも私の周りには一人もいません。逆にこんな好都合な話に惹かれて、多額の資金を資格取得につぎ込んで、仕事にもならないで終わっている人がいます。

–取得する資格の実態を知らないといけないわけですね。

高橋 実は、医療事務の仕事に資格は必須ではありません。それなのに医療事務の資格は、さまざまな団体が認定しています。つまり、資格がなくてもできる仕事を「資格を取得すれば仕事がたくさん待っている」と錯覚させるような案内をしているのです。

費用はかかり、仕事は得られず

–知識は仕事をする上で必要ですが、資格は必須ではないのですね。

高橋 そのようなまやかしに乗ってしまうと、入会金受講料を支払って入会し、試験対策や重点講座などが随時開かれ、その都度追加受講料が必要になります。そのほか、受験費用や、合格後には登録料もかかります。登録すれば、数社の求人案内は届きますが、倍率は数十倍、またはとても勤務することができないほど遠方だったりすることも珍しくありません。

–そうなれば、資格は生かせませんね。

高橋 しばらくすると「資格を取得してからブランクがあるあなたへ」と、ブラッシュアップを促す講座の案内が届きます。「業界では人手が足りなくなっています」などの情報も同封され、「今がチャンス」と勘違いさせられます。せっかく時間とお金をかけて取得した資格なので、それを生かすために申し込んでしまうのです。

–資格取得後に月日がたってしまうと、仕事に使えるかどうか不安になるので、ブラッシュアップ講座は利用したくなりますね。

高橋 すべての団体を否定するものではありませんが、私の周囲には、このような状況からしばらく抜け出すことができず、一度も資格を生かすことができていない人がいます。周囲から見れば資格スクールの“カモ”となっているのですが、渦中にいる人はまったく気づきません。

–気がついていないという状況は危ないですね。

高橋 未経験の分野であれば、勉強をしてから仕事を探すのは悪いことではありません。業界用語を知っていたり、業務の流れを知っていたりすることで採用に有利になることもあります。

簡単に取得できる資格には裏がある

–資格を取得すれば、さも稼げるように紹介している団体には問題がありますね。騙されないためには、どうしたらいいのでしょうか?

高橋 このような資格は、資格を認定する「資格団体」と、教育機関である「資格スクール」が一体となっていることが多いです。商売の色が濃いのが特徴です。受講生にも利益があれば良い商売といえますが、今のところそうではなさそうです。

–資格を取得するには、時間もお金もかかります。せっかく資格を取得しようとしているのであれば、事前に調べてからのほうがよさそうですね。

高橋 明確な目標もなく、なんとなく「資格を取ったほうがいいのではないか」くらいに考えていると、「資格団体や資格スクールにとって都合のいい資格」を取得することになってしまう危険性があると思います。

–資格取得の難易度も個人差がありそうですね。

高橋 どんな資格であろうと、それなりの勉強や努力を要します。簡単だったかどうかは人それぞれ違います。過去に経験や知識がある人が「簡単」と思うだけです。簡単に取得できて、重宝されて、稼げる資格、そんな資格はないのです。
(構成=尾藤克之/経営コンサルタント)

尾藤克之/経営コンサルタント

尾藤克之/経営コンサルタント

東京都出身。経営コンサルタント。代議士秘書、大手コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。人間の内面にフォーカスしたEQメソッド導入に定評。リスクマネジメント協会「正会員認定資格HCRM」、ツヴァイ「結婚EQ診断」監修等の実績。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ新書)、『キーパーソンを味方につける技術』(ダイヤモンド社)など多数。

Twitter:@k_bito

『資格を死格にしない資格活用法』 高校中退、元ヤンキー、シングルマザーだった著者がいまや、予約殺倒の人気ファイナンシャルプランナーに amazon_associate_logo.jpg

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