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セコム、「もう一人の」創業者・生前インタビューから透ける、「共同起業」成功の秘密

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 部屋に入るなり、にこやかな表情で迎えてくれた。なんてさわやかな感じの人だろう。当然、社内では厳しい一面を見せることもあるだろうが、筆者も含めて社外の人を迎えた時の印象は、飯田氏と同様に溢れんばかりのホスピタリティを感じる。偉そうにしている感じはまったくない、かといって、へりくだっているわけでもない。だが、人を包み込むような何かがある。筆者も多くの経営者に会って来たが、最近、こういうタイプの経営者がいるようでいない。そうした共通するパフォーマンス力を持ちながら二人はそれぞれ違った印象がある。飯田氏の言葉を借りれば「俺は雑駁だけれど、戸田さんはきっちりしていて記憶力が良かった」とのこと。

 たしかに、戸田氏は飯田氏と付き合い始めた頃のことをよく覚えていた。

「飯田家は男兄弟ばかりで、長男が不幸にして生まれてからすぐに亡くなられました。その方は名前が私と同じ壽一だったんです。彼の家に遊びに行くようになると、お父さん、お母さんが親近感を持っていただいてね。面白いことに、彼は5人兄弟の末弟です。私は姉が3人いる末っ子なんです。まったくその家庭環境も違っていた。性格的にも私の持っていない面があったものですから大変魅力を感じていました」

 飯田氏の母も「『お前みたいないい加減なやつにはちょうどぴったり』と言っていた」(飯田氏)そうだ。例えば、パチンコをしに行った時のことだ。

「彼はパチンコがうまいんですよ。ここぞという時に勝負をかけて玉を出す。一度聞いたんですよ。『なんでお前、そんなつまらないものに大切な自分の運を使うんだよ』と。すると『ばか、お前、運なんか使って減るもんじゃないよ』と言われました。そういうふうに彼は面白いことを言うんですね」

 大学卒業後も親交を深めた。

「性格的に似たようなところはなかったのだが、唯一の共通点は、お互い酒が好きで強かったということです。酒も飲みたかったし、彼に会いたかった。それで、ちょくちょく遊びに行きました。その頃、彼は酒問屋を営む実家(岡永商店)に勤めていたので、夜は倉庫番をしていました。そこには酒がたくさんありましたからね。まあ、よく飲んだものです」

 酒問屋で生まれ育ったということもあろうが、飯田氏の話には酒にまつわるシーンがよく出てくる。人との交流、起業、アイデアの創出、新事業の立ち上げ、など飯田氏の人生とともに酒がある。まさに、テーマがジャズのスタンダードナンバーにもなったアメリカ映画ではないが『酒とバラの日々』(1962年)である。もっともこの映画の主人公は酒に溺れていくのだが、飯田氏は酒を嗜好品として楽しむだけでなく、その優れたコミュニケーション効果をうまく活用しているように見える。だからか、飯田氏の酒にまつわる話には蘊蓄があり、暗くならない。明るくなる。幼少の頃から、夕食時はいつも、父が5人兄弟全員を前にして、「商人道」と「酒道」を教え込んだせいだろうか。

●日本初の警備会社の誕生

 飯田氏は今に至っても戸田氏との関係を「飲み友達だから」と、あっさりと表現する。だが、二人の関係性を物語るこの一言には歴史的意味が含まれている。「飲み友達だから」二人は出会い意気投合し、酒の量とともに会話の量も増え、ブレーンストーミングを行った。既成概念にとらわれることを嫌った二人の脳を刺激し合う。そして、お互いの考えが透けて見えるようになった。

「何かやるんだったら、もう彼とだなというふうに思っていましたね」

 戸田氏の心を動かした。飯田氏の心も動いた。二人の間に心のときめきがなかったら、日本初の警備会社、社会システム産業は生まれていなかったかもしれない。戸田氏は「最近は年ですから、そんなに飲みませんけどね」というが、二人が知り合ってから現在に至るまでの酒量は計り知れない。その量に比例して、二人は経営者としてお互いに成長しセコムも成長した。トップに君臨した飯田氏の変化には、戸田氏も目を見張るものがあった。

「もちろん、若い頃から潜在的に(リーダーになるべく)いろいろな素質があったと思います。私が感心しているのは、会社を始めて長になり、経験を積み重ねてどんどん成長され、器が大きくなっている」

 たしかに、今見る飯田氏は、強いリーダーシップを発揮する親分肌。それに対して、戸田氏は対話に長けたジェントルマンだった。共通している点は、頭脳明晰で、言語だけでなく非言語も含めた表現力が優れていることだ。このようなタイプだと飯田氏と同様、表舞台に多く登場してもおかしくなさそうなのだが、戸田氏はまったくといっていいほど外に顔を見せなかった。会社を始めるにあたって、どちらがトップを務めるか話し合っている。戸田氏は創業の頃を振り返り証言する。

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