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セコム、「もう一人の」創業者・生前インタビューから透ける、「共同起業」成功の秘密

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「飯田代表が『誰が社長になるんだ』と聞くので、『あなたに決まっているじゃない』というと、驚いたように『俺が』と返してきました。『やってもいいけれど、こんなに若いのに“社長”ではな』と躊躇するので、『社員代表という意味で“代表”というのはどうだ』と提案したところ、『それがいい』ということになりました。以来、今も社内では“飯田代表”と呼ばれています」

 飯田氏は創業期、社長ではなく「社員代表」という肩書を使っていた。「飯田氏が代表者」という社内的合意は定着しており、対外的には「取締役最高顧問」だが、社内では「代表」と呼ばれている。インタビュー中も、戸田氏をはじめとするセコム役員、グループ企業の社長や社員たちは皆、「代表」と呼んでいた。

●No.2に徹する

 このほかにも、創業期に二人の間でさまざまな約束をしている。その一つが、トップは飯田氏で戸田氏はNo.2の立場に徹することだった。

「同じセコムグループだったら、誰か一人わかる人がいて、説明できるようにしておかなくてはいかんということで、飯田代表にトップを務めてもらうことになりました。総力を結集するという意味なんです」

 実は戸田氏は、飯田氏の学習院大学の1年先輩に当たる。飯田氏がアメリカンフットボール、戸田氏は野球部に所属していた、お互いスポーツマンである。上下関係にうるさいのかと思いきや、先輩面はまったくしない。それは飯田氏との関係においても徹底している。

「もちろん代えがたい友達だと思っていましたが、会社をやることになって、言葉づかいから態度まですべて、飯田代表には会社の長として対応いたしました。私は不器用ですから、うまく切り替えできません。そのほうが簡単なんです。職務をはずれた時、いきなり、『おい、お前』なんて、友達付き合いに急に切り替えるほうがよほど難しいです」

 その姿勢はプライベートで飲みに行っても崩さなかった、という。なかなかできないことである。二人は既成概念にとらわれず自由を追求した。だが、その自由の中には崩してはならない、崩さないものが必ず存在した。常に新しいビジネスに挑戦しながら、経営(企業)理念を死守するセコムの企業行動は、創業者の姿勢に通じるところがある。

 真意は「誰がトップかわからなくては、社員がどのように接したらいいのか迷ってしまう。飯田派、戸田派など派閥ができては困りますから」とのこと。実際、セコムには今も、派閥が存在しない。

 戸田氏に飯田氏の印象を聞くと、「会社が大きくなるとともに飯田代表も大きくなっていかれました」と創業以来、一番近くで飯田氏を見続けてきた人の飯田評である。たしかに、現在の飯田氏にはなんともいえぬ威厳と、それを過剰な重圧に感じさせぬしなやかさが感じられる。威厳と重圧は違う。組織論の先行研究では、組織には重しが重要であり、はやりの「フラットな組織」がベストではないとされている。ここでいう「重し」とは重圧ではなく威厳という表現が、ほぼ当てはまるのではないだろうか。

 自由闊達がセコムの社風であり、飯田氏もその企業文化をさらに促そうとしている。しかし、一方ではセコムにとって最も重要な倫理観を死守しようとする。そのためには厳しさが求められる。自由には常に責任が伴う。飯田氏が学んだ「(旧制)湘南中学は戦前においても校則がなかった」(飯田氏)という。同中学で入学試験を受けた時、面接で「将来、何になりたい」と聞かれたので、「軍人になります」と答えたところ、一人の先生が「最近、嫌になるよな。みな軍人、軍人で。一人ぐらい実業家になる奴っていないのか」と言ったのを飯田氏は鮮明に記憶している。このような風土から飯田氏の規律ある自由の概念、現状を打破する実業家への志が育まれたのかもしれない。

●パラダイムの転換

 そして、この世代に共通した経験が「パラダイムの転換」である。

「鬼畜米英と教えられてきたのに、アメリカの民主主義が喧伝されました。飯田代表も私も、既存の価値観というものに疑問を抱くようになりました。真実とはなんだという思いが、二人とも非常に強いんです。生意気盛りということもあり、既存の企業や社会の在り方に対して反発がありましたね」

 これまでにないビジネスをやろうと二人が意気投合した価値の源泉はここにあったと考えられる。それは時代の空気であったかもしれないが、その空気をかたちあるものにして成功に導いた人はそれほど多くない。新しい時代の流れに乗り成功すると、「あの人はうまいことやった」という人がいる。だが、その「うまいこと」が難しいのである。ましてや、まったく新しいビジネスシステムを生み出し、短期間に成長させることは至難の業である。

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