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鈴木貴博「経済を読む“目玉”」第18回

日本企業から最高のサービスが失われていくメカニズム~クレーム対応向上の代償

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 どのような不満体験かというと、例えばある場所で宴会の幹事をしたのだが、あらかじめインターネットサイトで調べて申し込んでおいた割引サービスが受けられなかった。「なぜ割引が受けられないのか?」と訊ねたところ、どうやらサイトの記述を間違えていたのである。間違いなのだが、お店の現場では割り引くことができないので、申し訳ないが了解してほしいということを、店長が何度も頭を下げて私に謝ってくるのだ。

 あるメーカーの商品を購入した際には、ホームページ上で確認した追加特典が実際にはついていないことが購入した後にわかった。カスタマーセンターとメールのやりとりをしたが、結局、この追加特典は提供することができないという。これ以上どうしようもないという話で、どちらも筆者は泣き寝入りをすることにした。どちらも1万円以内の損害なので、それ以上のコストはかけたくなかったという事情もある。

 その上で、冒頭のノードストロームやナショナルレンタカーの例とは逆に、顧客としての筆者は、二度とこれらの企業は使わないと決めてこの話は終わりにしている。

●現場から奪われる権限

 さて、以上の事例から、日米では何が違うのかを考えてみると、一言でいえば「現場に権限があるのかどうか」である。

 世界で最高のサービスを提供することで知られているホテルのリッツ・カールトンでは、現場の従業員一人ひとりに1000ドル(約10万円)の決済権限があるという。ノードストロームやナショナルレンタカーがどういう規則になっているのかは詳しくは知らないが、どちらの例でも従業員が一人、お客様のために数時間も現場をあけて奉仕する判断が即断でできるようになっているわけだから、最低でも1万円相当のコストをお客様に対して判断できる権限を持っているということだろう。現場に一定の権限があるからこそ、感激を生むサービスが提供できる。

 ひるがえって日本企業を見ると、現場判断の権限をはく奪する傾向がある。これはサービスを設計する側を知っている筆者は理解できるのだが、現場がうかつにサービスを提供してしまうと、それがインターネット上で話題になって、他の消費者が別の店舗で同じようなサービスを強要するようなことが起きるリスクがある。

 ゲーム会社に対してクレームをすればポイントがもらえるという情報や、商品をレシートなしで返品してもらえるという情報などが瞬時に日本中に知れ渡る状況にある。だから事業責任者は、「そのような判断は現場ではせずに、本社に判断を仰ぐように」
と指示をするのである。結果としてモンスタークレーマーへの対応も上手になり、タダ乗りユーザーへの出費は減っている。

 だが、同時に、会社の手違いで損を被った普通の顧客の不満は増えている。増えているだけでなく、そのことで離れていった顧客が何人いるのか、その数字は会社には見えてはいない。
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)

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●鈴木貴博(すずき・たかひろ)
事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に、企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年にわたり活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、03年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。主な著書に『NARUTOはなぜ中忍になれないのか』『「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱』(ともに朝日新聞出版)、『戦略思考トレーニング』(日本経済新聞出版社)、『カーライル 世界最大級プライベート・エクイティ投資会社の日本戦略』(ダイヤモンド社)などがある。

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