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建設業、供給制約解消のために「工事単価値上げ」はまやかし?年収格差拡大で建設投資増?

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 男性の場合、大卒と高卒の賃金は1カ月あたり10万円以上の開きがある。単純計算しても年収で120万円以上の差であり、賃金構造基本統計調査に含まれないボーナスも加算するとその差はさらに拡大する。先ほど述べたように、建設業全体に占める高卒、中卒の割合は全産業平均より5%多い約60%だが、それを生産労働者に限ってみれば、経験上その割合はもっと多くなることは容易に想像できる。仮にそれが建設業の平均より2~3割増しだったとすると、中卒・高卒の比率は7~8割に達するだろう。この数字は全産業に占める高卒、中卒の割合約55%に比べるとかなり高めの数字だ。

●建設業の年収は全産業平均より高い?

 では、ここでもう一つの調査を紹介しよう。国税庁が実施している民間給与実態統計調査である。この調査は「民間企業における年間の給与の実態を、給与階級別、事業所規模別、企業規模別等に明らかにし、併せて、租税収入の見積り、租税負担の検討及び税務行政運営等の基本資料とすることを目的として」1949年(昭和24年)から継続している。

 この調査では建設業における生産労働者とそれ以外の区別がないので単純比較となるが、1989年(平成元年)以降建設業の年収が全産業平均を下回ったことは一度もない。建設業は全産業に比べて高卒、中卒比率が最低でも5%以上高いにも関わらず、全体としては平均以上の年収をもらっているのだ。

 さらにもう一つ重要な情報がある。国土交通省の資料「建設施工を巡る現状」によれば、建設業における生産労働者の賃金は、1987年のバブル前からずっと全産業平均を大幅に下回っていたというのだ。本資料から言えることは、次のような衝撃的事実である。

・87年から97年にかけての年収格差は拡大し、97年から11年にかけては縮小した(87年122万円→97年139万円→11年125万円)。
・87年から97年にかけての建設投資、就業者数は拡大し、97年から11年にかけては縮小した(就業者数:87年533万人→97年685万人→497万人)。

建設業、供給制約解消のために「工事単価値上げ」はまやかし?年収格差拡大で建設投資増?の画像2

 このデータを虚心坦懐に眺めれば、「年収格差が拡大するほど建設投資、就業者数が増え、年収格差が縮小すると建設投資、就業者数が減る」という事実が導きだせる。ならば、このデータをベースに議論する場合、建設業の供給制約問題の解決策として「工事単価を下げろ」というべきだ。しかし、このデータを持ち出す人の多くは「工事単価を上げろ」と主張している。データとは矛盾する主張だとの誹りは免れない。

 そもそも厚生労働省の賃金基本構造統計調査をベースとして賃金格差を語ること自体に意味があるのだろうか? 誤ったデータに基づいて議論しても誤った結論が出るだけだ。筆者は国土強靭化には賛成だが、データを軽視した無茶な議論はこの政策を失敗に導くだろう。建設業の供給制約の壁が意外と低かったことが判明した今だからこそ、謝った主張をする人々には猛省を促したい。

BusinessJournal編集部

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