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高齢者が高齢者を支える社会保障(年金・医療・介護)の新しい仕組み~千葉の事例より考察

文=小黒一正/法政大学教授
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社会保障の担い手としての高齢者

 ボランティアで介護保険料や利用料の軽減が受けられる千葉市のような仕組みは、これから介護保険を利用する可能性がある高齢者にとって、介護の実態や問題点を事前に把握し、制度改善に向けた意識を高めることができるメリットもある。

 また、近い将来、高齢者の急増で介護人材が逼迫することは明らかだが、このような仕組みで、元気な高齢者がそうでない高齢者を支えることができれば、介護人材の逼迫の一部は緩和できるはずだ。

 つまり、ボランティアを利用し、「元気な高齢者が、そうでない高齢者を支える仕組み」を社会保障(年金・医療・介護)に組み込む視点が重要である。このような視点で、現在の社会保障(年金・医療・介護)を眺めてみると、いろいろな発想が出てくるはずである。

 例えば、年金とボランティアを結びつける方策だ。現在、社会保障給付費110兆円のうち年金は半分の約50兆円であるが、これに3%の年金課税を行えば1.5兆円も財源が獲得できる。ただ、単に課税をすると有権者の反発を招くから、千葉市のようなボランティアを一定程度行うと、課税は免れるというような仕組みにして、課税を受けるか否かの選択は有権者に委ねるのである。

 あるいは、これから物価が上昇し、年金にマクロ経済スライドが発動されると、実質的に年金の給付額は減少していく。しかし、千葉市のようなボランティアを一定程度行うと、その減少の一部を取り戻せるという仕組みを構築してもよい。

 いずれにせよ、超高齢化社会における「新しい国のかたち」を構築するため、千葉市のような試みを、介護の保険料や利用料のみでなく、年金の給付や保険料、医療の保険料や自己負担率にまで拡充し、新たな社会保障の担い手として元気な高齢者のパワーを利用する検討を、そろそろ真剣にスタートしてみてはどうか。

小黒一正/法政大学教授

小黒一正/法政大学教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。


京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。


1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。


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Twitter:@DeficitGamble

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