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【小説】巨大新聞社幹部の不倫報道も不発に…

巨大新聞2社経営陣追放計画は空振りか!? 不倫暴露記事に対して「名誉毀損」で対抗

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 そして、2週間が過ぎた。15日目の6月14日、火曜日。深井のところに太郎丸から電話が入った。3日後の17日、金曜日午後6時に吉須と二人で「すげの」に来てほしい、という連絡だった。深井はその意図を質す気など毛頭なかったが、その調子は命令以外の何ものでもなかった。

×××

 6月17日、金曜日。朝から雨降りだったが、夕刻には上がった。気温は20度を超え、少し蒸し暑かった。

 6月に入り、新聞紙面は少し潮目が変わった雰囲気になっていた。5月までは大地震の直接的な被害、福島原発の想定外の大事故の帰趨がメインテーマだったが、夏の電力不足に加え、復興策を巡る政治の動きが大きく取り上げられるようになり出した。しかし、マスコミの報道が大地震に集中している状況に変化はなかった。3大新聞のトップでも、世間的には無名の松野や村尾の不倫などに耳目が集まる状況ではなかった。

 吉須と深井の二人が銀座で落ち合ったのはその日の午後6時だった。太郎丸が「すげの」に来るように指定した時間も午後6時だったが、歩きながら、事前の打ち合わせをして10分くらい遅れて行くことにした。深井が吉須に太郎丸の指示を伝えた時、吉須が提案した。吉須はその理由を言わなかったが、その意図は「唯々諾々に時間通りに『すげの』に行ったのでは太郎丸をますます図に乗らせるだけ」との思いがあったのは明らかだった。以心伝心で、深井も吉須の意図を了解、銀座の和光前で落ち合ったのだ。

「今日は資料室には寄ったのか?」

 築地に向かって歩き始めると、背の高い吉須が並んで歩く深井を見下ろした。

「行くわけないでしょう。それより、吉須さんはこの2週間、どうしていたんですか」
「まあ、そんなこと、いいじゃないか。この2日は自宅にいたよ。昨日、うちの株主総会の招集通知が送られてきた。『大山鳴動、ネズミ一匹も出ず』という感じだね」
「うちはラインの管理職じゃないと、株主にはなれませんけど、日亜は若い社員以外はOBも含め全員株主になれるんでしたね」
「そうなんだ。招集通知をみると、今年は村尾ら主要役員が改選期じゃないんだ。新任取締役候補にも監査役の源田(真一)さんの名前はなかったよ。会長が村尾を飛ばした後の社長候補だと言っていたけど、監査役のままなんだ」
「じゃあ、何も変わらないということですか」
「ふむ。君のところは、俺の同期の丹野(顕二・常務執行役員名古屋駐在)が取締役候補になるらしいけど、どうなんだい?」
「会長はそう言っていましたけど、どうなるのかはわかりません。僕は株主じゃありませんから。でも、この2週間、毎日、主要新聞をみていましたけど、他の週刊誌の広告に『深層キャッチ』の後追いのような見出しはありませんし、大都、日亜両紙も5月31日付朝刊で『事実無根で謝罪と訂正を求める』という記事を載せたきりです」
「やっぱりね。それなのに、今日、『すげの』に来い、というのはどういうことかね」

BusinessJournal編集部

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